第7話
「くっ!」
「男のなんぞ見ても何の楽しみもない。早く離せ。」
「煩い!」
瞬間、空間に黄金の魔方陣が浮かぶ。虚空に雷撃の槍が生み出されリーヴスの頭蓋を貫く。光線が通過すると底には首から上を失った死体がひとつあった。
直ぐにシルバー・シュルテンとオーストリア軍の兵士はその場から飛び退る。
全員が瞬時に武器をかまえあたりをけいかいする。
そこに現れたのは今の時代にそぐわないフルメイルに身を包んだ兵士数百名と騎兵数百。更には大剣を構えたファンタジーの将軍の様な男がだった。
「我らが聖域にてうろちょろしている鼠共は貴様らと言う事か。」
「…チェーザレ・ボルジアか?」
「ヴァチカン第一教皇兵団将軍チェーザレ・ボルジア。」
私たちイタリア兵は身もすくみ動けない。
「結社が魔術師。位階、
名乗るが早いか黒い影のような槍を飛ばす。それを撃墜するように帯電した大剣を振り抜き雷撃の槍を飛ばす。
「魔術師…?」
「
懐から出した赤い宝石を砕いくと空を埋め尽くすような巨大な赤色の魔法陣が浮かんだ。
「
天空が降り注ぐような空を埋めつくした業火は飛来する。1名、シルバー・シュルテンの兵士が来て何事か唱えて目の前に壁を作る。
「異端の分際で神の奇跡を模した術式とは不信心者が!主よ、我に力を与えたまえ。我が眼前の神敵を討滅する権能を与えたまえ!」
存在感が増す。チェーザレ・ボルジアを名乗る大男が明らかにその力を増加させた事を理解させられる。何が起きて、私はどうなるのだろうか。
†
「四象は円環せよ。唯一不二の理よ回帰せよ。我が右腕に集え。集積せよ。我放散せん。」
詠唱破棄で展開した殲滅業火程度で殺れない事はわかり切っている。チェーザレ・ボルジアを名乗る奴はヴァチカンの英雄再現計画に基づいた最も親和率の高い人間を改造して作られた物だ。現在チェーザレ・ボルジアの他に征服王アレクサンドロス三世やハンニバル・バルカなどが居る事が判明している。
「
黒一色の光線を放ち、チェーザレ・ボルジアの居る地点に叩き込む。それと同時に炎の槍を数百叩き込む。
「疾ッ!」
大剣を振り振り払うが、貫通しある程度のダメージを与える。地面を隆起させ棘として後方の兵士達を刺し貫く。大したことは無い。所詮は少し魔術が使える程度の一般の神職でしかない。
「起きろ。」
剣を目覚めさせる。黒一色の波動を放つ長剣を手の中に召喚する。
地を蹴りチェーザレ・ボルジアと打ち合う。
「その貧弱な肉体でその力か。更には技術も備わっている。惜しいな。」
「一応は俺もキリスト教徒だがな。ハプスブルク家臣下だから名目だけだが。」
「ふん。そのような物は無神論者と変わらん。故に惜しい。私も制約が無ければ貴様を私の部下に加えたいのだからな。」
「俺からすればお前ら英雄再臨計画の方が異端的だけどな。キリスト以外をバカスカ復活させていいのやら。」
「あぁ、実に惜しい。私も同感でな。我々には失敗も多い。ハンニバルはローマの命令なんぞ聞けるかと逐電した。征服王もアレは命令を受けて動く性格ではあるまい。」
「残念ながら俺はそう言う趣味は無くてな。男色家では無いのだよ。」
「私もそうでは無い。3番目故にある程度の成功で行動に干渉をヴァチカンは入れられるがその程度だ。反抗は出来ん。」
喰えるか?と剣に問う。語り合いながらも剣戟を交し魔術を交わす。剣からの答えは
『Ita』
「制御術式完全解放。喰らい尽くせ!」
俺の構える長剣が纏っていた黒一色の波動は力をまし、チェーザレ・ボルジアを呑み込む。同時にチェーザレ・ボルジアに掛けられた制御術式を魔力化し喰らう。
いきなり膨大な魔力が俺の身体に流れ込み意識がブラックアウト仕掛けるが何とか持ち直す。
食い切ると同時に膝をつき肩で息をする俺と制約の消失を認識し大剣を収めたチェーザレ・ボルジアの姿があった。
「ふむ、屈服させ私の下に置いてみたいものだが恩義に報いないのは男ではあるまい。また何処かで貴様とは必ず邂逅するだろう。その時に貴様の要望を叶えてやろう。さらばだ。」
元配下の兵を行きがけの駄賃代わりに鏖殺し悠然とあゆみ去った。
「…不味かった。あのままでは負けていた。」
だが、俺も得るものは得た。最大魔力量と魔術回路の処理速度の向上。中々の収穫だ。
今はこれで満足しなければならない。奴が指揮下を離れた事も大規模な術式を複数回使用した事もバレた。つまり。
「プランBだ。」
「ってことはだな?」
「あぁ、勿論。」
勿論、強行突破。強襲だ。
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