第6話
オーストリアは首都ウィーン。公に出る任務の為に魔術を補助的用途に留める命令が出た。
つまりは銃火器をメインに使用し他にはナイフ程度以外は使用するなという物だ。
ベルナドッテ隊にはステアー社のAUGとグロック17が配備されオーストリア連邦軍の身分が与えられた。
俺率いる銀の星部隊は傭兵団シルバー・シュルテンとしてドイツ・イタリア・オーストリアから委託を受けたという形になっている。
自動拳銃としてグロック17が配布されたのは同じだがメインアームが違う。14.5mmの徹甲弾を使用する装弾数7発のセミオートライフルを装備する。
ヴァチカンとローマ防衛の為に招集された第九回防衛十字軍及びスイス重装甲傭兵連隊等重装甲・高火力を持つ敵が多いと予想されている。銃火器と魔術の併用に慣れた彼らならば小口径のライフルでも充分だろうが、俺たちは違う。不慣れな武器だ。最初から威力を高くし一撃必殺を狙う方が複数発当てるより簡単な筈だ。
「章斗・ベルンバッハ=クロイツェンだ。」
「イタリア陸軍大尉ニコラス・ジョルジェディだ。」
俺とジョルジェディ大尉は握手を交わす。
「同じく少尉候補生ダニエレ・リーヴスです。」
成程、一体どちらなのやら。候補生如き学生を使わなきゃならんのか信頼出来る人間が居ないのか。
「オーストリア連邦軍大尉ジャン・ベルナドッテだぜ。よろしくな。」
ジョルジェディ大尉は顔色を変えないが少尉候補生は明らかに将校らしくないベルナドッテに明らかに訝しげな視線と不信の色を示す。
「リーヴスが率いる1個小隊を付ける。あとは貴殿らに一任する。指揮権もだ。それでは失礼する。」
イタリア王党派のサヴォイア公爵ウンベルト・ディ・サヴォイア=アオスタの庶子がニコラスであり、彼は欧州各国の王党派や王制支持派とも強いパイプを持つ。勿論、何度かハプスブルク家の人間の護衛として王党派の会議に出た事もある俺の顔を彼は知っている。
「指揮系統は?順当に行けばベルナドッテ大尉だと思うが。」
「…私はそれで構いません。次席は?」
「章斗に任せるぜ。俺が信頼できんのは旦那だけだからな。」
不満気な表情。後者か。付き従う兵員も質は良くない。処分依頼か?
「…何故ですか?」
「経験が違う。旦那は50人どころか数百規模の人間を動かせる人材だぜ?少尉候補生如きより信頼出来る。」
俯いたままだが反論はしない。渋々認めたといったところだろう。
「OK、ならさっさと片付けるか。」
†
何故、私が奴の下なのだ。有り得ん。私はイタリア王国時代に伯爵位を持つ貴族の家系だぞ!
「副長、こちらに接近する誘導体察知。恐らく誘導迫撃砲弾。」
従うべき部下たちも私ではなく奴の章斗・ベルンバッハ=クロイツェンの命令を聞こうとする。
有り得ない。
「任せろ。」
奴はバカでかいセミオートライフルを誘導砲弾に向けると2発撃ち込んだ。上手い具合に何故か吹き飛び被害は無い。
「流石ですね。」
部下の中で最も美しいネフィル・ルキウスも奴に迎合する。許さん。
「章斗・ベルンバッハ=クロイツェン!」
叫び、拳銃を後頭部に突きつける。
同時に奴の部下は一斉にライフルをこちらに向けて構える。
ベルナドッテ大尉とその部下もAUGを構えこちらに向ける。
「何がしたい。」
「私は偉いんだ。貴様の様な信義なき端金で命を売る傭兵如きとは違う。私は貴族だ。伯爵家だ。」
「高々血統だ。血統書ではケツしか拭けん。」
そこで呆れるようにベルナドッテが言う。
「おいおい、旦那。あんたも確か公爵様じゃあないのかい?」
「一応は公爵で伯爵だがな。所詮、自称でしかないさ。」
馬鹿な…それでは私と同格か上位となるではないか!
「嘘だ!お前が貴族だと!」
「たかが血統だ。俺自身は貴族じゃない。俺はただ忠実な僕だよ。」
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