第24話 ホラー小説の設定
ホラー小説とは、いわゆる恐怖を楽しむ「怖い話(怪談・怪奇小説)」の事です。恐怖を主題にすれば、心霊・怪物・殺人犯・超常現象など、その原因は色々です。
ホラー映画やホラーゲームでは、見た目の恐怖、いきなり何かが起こりびっくりする演出が可能ですが、小説内では難しいため自ずとジワジワくる恐怖や精密描写・心理描写などの比率が大きくなりやすいです。小説内では、意図的に外見・風景などを書かずにミスリードしたり、音声がないのを逆手に誰が言っているかわからないセリフなどを配置したり可能です。
視覚と聴覚に依存した描写をしがちですが、触覚・味覚・嗅覚も効果的に使うと良いです。
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恐怖とは何か?
「恐怖とは、怖いと思う気持ち」です。それは生存本能として危険から「逃げるため」「避けるため」に存在します。
恐怖には2種類あり、「自分の経験から学んだ恐怖(トラウマ的なもの)」と「遺伝により刷り込まれている本能的(生理的)な恐怖」があります。人類が進化していく過程で「危険が怖い人類」と「危険が怖くない人類」がランダム発生したうち、「危険が怖い人類」の方が多く生き残る事で、人類の危険が怖い率は上昇していっています。
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なぜ、避けるべきホラー(恐怖)は人は好むのか?
恐怖のドキドキは、楽しい興奮時のドキドキと勘違いしやすいからと考えます。いわゆる「吊り橋現象」です。
食欲・性欲のドキドキは中毒性が高く、その事により健康や延命・子孫繁栄が達成されています。食欲・性欲は、古来からフルパワーで挑むべき問題で、心拍数を上げる事で肉体の機能が上昇します。危険に遭遇した場合も、フルパワーで逃げたり倒したりする事態のため、心拍数が上昇してドキドキします。
自分は安全な所にいて楽しめるからこそのホラーですが、死ぬかもしれない山に登る登山家や、綱渡り芸をする人などは、実際に死の危険がつきまとっても、楽しくなってしまっています。
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人が何が怖いのか?
命が脅かされる肉体的恐怖と、精神的に追い詰められる恐怖が、だいたいミックスされています。理由の明白な恐怖と、理由の不鮮明な生理的恐怖(人形が怖いなど)と、意味不明な事が恐怖であったりします。
恐怖例
・殺される。襲われる。追いかけられる。
・怪我や事故に遭う。病気。具合が悪くなる。目が見えなくなる。皮膚が爛れる。
・血が出る。吐く。髪が抜ける。白髪になる。一気に老ける。
・高所。閉所。見渡す限り何もない。暗闇。同じ景色が続く。
・奇声を発する。嫌な言葉を吐く。意味不明な事を言う。
・暴れる。泣き叫ぶ。変に笑う。無表情。くねくねするなど奇怪な動き。
・老人・子供・赤ちゃん・化け物・猫・カラス
・魚類・爬虫類・ヌメヌメする生き物(カタツムリなど)
・人形・人物画・鏡・オルゴール・ラジオ・テレビの砂嵐画面・電話音
・刃物・武器・釘やガラス片などの危険物・薬品・注射器
・トイレ・病院・墓所・廃墟・踏切
・腐敗・汚れ
※望まぬ出産ネタと、望まぬ性行為ネタは恐怖が強いですが、嫌悪感が激しく楽しめない人が多いです。ライトなホラーなのか、ディープなホラーなのか、公開対象年齢制限は大丈夫かなど気をつけてください。
※刺激が強いものを書く場合は、読ませる前の注意表記をしっかりするのと、不特定多数の目に入る可能性のあるタイトルやあらすじ・表紙などは、嫌悪感を抱かれないよう配慮が必要です。
※安易に死やグロ、死体などを使うと恐怖感は出やすいですが、多用や必要性もなく使うと、話全体がチープになります。
ホラーにおける最上級の恐怖とは
これは個人の主張でしかないですが、恐怖によって暴露された「裏切りや自己保身」だと思います。仲間を見捨てて逃げる、仲間を身代わりに自分だけ助かろうとする、恐怖を利用してライバルや敵を消そうとする。小説(映画)の「リング」の貞子が「ビデオを見た人を殺しにくる」恐怖よりも、メイン人物が自己保身のために「誰かを呪うビデオをコピーしてばらまく」方が怖いです。
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恐怖の原因
・現実の殺人鬼(犯人)や動物(サメやトラ)や疫病など。
・空想の生き物(UMAやゾンビ)や怪物・妖怪など(主に物理)
・心霊・神や悪魔・超能力・呪いなど(主にスピリティアル)
・原因不明(異次元や過去に飛ばされるなど)
※現実メインなパニックホラー以外は、複数の要素が混じる場合も多いですが、どこかに重点を置かないと、物語がなんでもありになってしまい、リアリティが薄れます。
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恐怖を増すためには
結末が同じ(例えば死ぬ)であっても「いきなり死ぬ」よりは「十分に恐怖を味わってから死ぬ」方が怖いです。また、恐怖が順々に増して行くよりは「恐怖したと思ったら助かった」や「幸せ」や「安堵」が挟まってから、また恐怖に陥る方がメリハリがあって怖いです。
恐怖のどん底に落とされた所から、想像していなかった2段落ち、3段落ちなど、さらに恐怖に落ちていくのが効果的です。
そして死により、恐怖が終わる事は、むしろ救いでもあります。安易に終わる恐怖より、「死ぬ事もできずに恐怖から逃れる事も出来ない」方が怖いです。また、自分が死んでしまうより、自分の大切な人(家族や恋人など)が死ぬ方が恐怖です。
昔話は、恐怖を「規則を守る戒め」に使われている場合が多いです。悪い事をしたら、規則を破ったら、ひどい目に遭うから、やらないようにねっていう情操教育として。規則を破った者が恐怖に襲われるパターンは、「悪い事をしたんだから当然だよね」と罪悪感が薄れ、成敗感が出ます。それと「規則を破らなければ自分は大丈夫」っていう安心感があります。
同時に、法や力で裁けない悪や権力をひどい目に遭わせて、ストレスを発散するという効果もあります。ゴジラは「核兵器や軍隊ムカつく」って気持ちを、怪獣で倒す事でスッキリ感(ざまあみろ感)が味わえます。カップルなどのリア充が最初の被害者な場合は多く、不幸な人を更に不幸にしても後味が悪いために、リア充がひどい目に遭う場合は多いです。
恐怖の根源は、熟成されたものが多いです。殺人鬼でも、10年前の殺人犯が再びとか、心霊でも100年前の封印が解けたなど。四谷怪談のように死人が即座に霊になって、ちゃんと関係者のみに襲いかかるって展開は少ないです。直接の恨みによるものであっても、何年も経って家族ができたり、地位が増してから襲ってくるなど手が込んでいます。恐怖の元凶も、ポッと出で生まれたものより、長い期間をかけて生まれたものや、恐怖実績が多いなどの方が説得力があります。
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ホラーの結末
恐怖の原因が解消・退治されてハッピーエンドで終わる場合と、とりあえず恐怖から逃げ切っただけや、恐怖はまだまだ続く的な展開、意味不明なまま終わる、最悪のバッドエンドなどあります。読み手側を「恐怖する側」と「恐怖させる側」のどちらに感情移入させるのかを考えての結末を作るべきですが、読み手が応援している方が勝てばスッキリでもなく、マニアックな読み手になるほど、不条理なバッドエンドや、メリバ(メリーバッドエンド)を好む傾向を強く感じます。不条理な目に遭う悲劇のヒーローやヒロインも、また、好まれる傾向があります。
以上。
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