第23話 リアリティについて
リアリティのある小説内で、爆発や毒物を飲んだ時など、あまりにも現実とかけ離れた現象や展開が起こると、読み手側ががっかりします。しかし、ファンタジーを楽しむ小説などでは、逆に「解毒剤を飲めば即座に元気に」みたいなお約束展開も好まれます。特に、超能力や魔法が存在する中での物理現象は、何が可能で、何は不可能な世界なのかの設定は重要です。
例えば、漫画ドラゴンボールの作中では、「ドラゴンボールを集めれば死んだ人も生き返る」ため、キャラクターが死んでも「まあ、生き返せばいいか」的な安易な考えに至り、死にそうなシーンでも緊張感が大幅に減ってしまっています。
しかし、殺人や自殺、爆弾や毒物、詐欺などの詳細や方法は、詳細に書きすぎると真似する人が出る可能性があるため、わざと内容を簡素化したり、手順の一部を伏せたりして、成功しないようにや、容易いと思われないような予防線を張った方が良い場合もあります。なんでもリアリティがあれば良いってものでもないです。
ライトノベルのスレイヤーズでは、大型魔法により山を1個吹き飛ばすようなシーンなども、迫力満点に描かれます。でも、それって、山にいる動物や植物、住人がいたら、一緒に吹き飛んで死滅している、産業や資源が消失しているって事です。そう考えるとせっかくの必殺技シーンも、後味が悪くなってしまいます。「やむなく巻き込む」って設定がないのであれば、そこは生き物がいない氷山ですとか、生き物は極力避難させましたなどの設定を付けておかないと、主人公側の倫理観が疑われます。吹き飛ばした後に「やったあ」で終わってしまうのか、「反省」も含まれるかもキャラクター印象を変えます。
また、現実に近い設定なのに、実際には無理な事が「さもできる」ように表現すると、読み手の現実での認識を歪める場合があり、非常に厄介です。例えばホラーで「遊び半分で廃墟に肝試しに行った」みたいな展開は、安易に真似をすれば、家宅侵入罪であり、ガラスを踏み抜いたり、崩落に巻き込まれたりするような危険を孕みます。でも、そういうお約束が作中で使いたい事もあります。そういう場合は、きちんと注意書きを付けて、間違った認識を植え付けないようにする事が大事です。エロ小説やAVなどの「激しいプレイの方が女性は喜ぶ」的な勘違いも、実際とはそぐわないお約束展開ですが、影響されて実際に勘違いする男性も多いです。
先日、テレビ放映の入った2014年ハリウッド版の「GODZILLA」を観たのですが、原爆や原発、放射能に関する設定がお粗末すぎて最低でした。アメリカは国が映画予算を補助しているため、軍を賛美する内容になっているのは当然なのですが、未だ原爆を「ただの威力の高い大きな爆弾」としてしか捉えない宣伝の仕方は、悪意が激しいです。サンフランシコ沖で原爆を爆発させておいて「わーい、怪獣が去ってハッピーエンド」って頭おかしいんじゃないかと感じます。その後に死の灰や黒い雨が降り、広島のように被爆者が大量に出る、海域の魚が死滅するような状態で何を喜んでいるのか、非常にヤバイです。多分、主人公も近距離で放射線を大量に浴びているので、急性症状で数日で死ぬでしょうし。
そして、映画感想を読んでも、そういった予想のない事に非常に危機感を感じます。確実に全世界の核兵器に関しての認識を軽くしてしまっています。フィクションだから、エンタメだから、お約束だから別に設定はどうでもいいでしょって捉え方をするのが一般的だとは思いますが、広島・長崎であれだけ殺されて、子孫が苦しまされておいては「まあいいか」とは笑えない問題です。
ネタ的に面白いから、オネエなどの性的マイノリティを差別や偏見な書き方をしてしまったり、ちょっとセクシーシーンが欲しいから、キャラの行動がセクハラやパワハラ満載になってしまったりすると、読み手の現実での倫理観に影響したり、偏見や嫌悪感が増してしまったりします。完全にフィクションと割り切れる世界観より、現実に近い内容を書く場合の方が注意が必要です。
以上。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます