第19話 魔法の設定(理論)
小説内で魔法が使いたいなと考えた時、その魔法がどういった理論で成立しているかを考えておかないと、作品が進むにつれ、設定や展開に矛盾が生じる可能性が出てきてしまいます。自身でイチから理論を組むというより、書きたいテイストの有名作を選んで分析し、「それと同様」や「ここだけ違う」みたいな形で理論を組むと良いです。
魔法のエネルギー源を設定する。
超常現象を発生させる場合、そのエネルギー源は、4つのパターンに分かれます。
・内気(体の内側にあるエネルギー)
・自然由来の外気(自然エネルギー)
・意識体由来の外気(神や霊などのエネルギー)
・エネルギー源は不明
また、魔法は2方向に展開可能です。
・物理法則に従うエネルギー
・物理法則に従わないエネルギー
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内気とは
現実科学においては証明されていませんが、肉体の中に宿る生命エネルギーや精神エネルギーを指します。チャクラや気功が、現実の用語では一番近いと感じます。
一般的なRPGゲームにおいてのMP(マジックポイント・マジックポイント)は、この内気の量を示し、魔法を発動するには、そのエネルギーを消費し、MPがなくなると魔法が使えなくなります。使用すると精神的に疲れる、精神的なショックにより能力が低下する、一定時間休むと回復するなどの設定が多いです。
生まれつきに魔導資質がある、エネルギー量が多いなどの個人差のあり、格差が努力では覆らない設定が多いです。
また、同じだけのMPを使って、同じ魔法を放った場合に、人によって魔法の量や範囲、効果が異なる場合があります。その場合、エネルギー効率や精度(エネルギーを変換する力・変換したエネルギーを使いこなす力)に差があるために起こります。
内気の特性は、信仰や外の状態に影響されずに、自分の内側の力を使って魔法が展開する所です。また、魔法の発動条件や呪文さえ覚えてMPがある状態であれば、誰でも発動できます。作品によっては、特定の属性資質がなければ、その魔法が使えない設定はあります。
漫画のNARUTOの忍術で考えると理解しやすいです。チャクラ量と、チャクラコントロール、印や術具を使う事で術が発動します。
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自然由来の外気とは
内気が体の内側の力に対して、自然由来の外気は自然界や、自然界に生きる生物の生命エネルギーや精神エネルギーを指します。ざっくばらんに言えば、漫画のドラゴンボールの孫悟空の元気玉のようなもので、周囲のエネルギーを集めて魔法として使います。
エネルギーを集める力やコントロールする力は、自身の内気を使う場合が多いです。
自身の外にあるエネルギーを使う事で、莫大な量のエネルギーを使う事が可能です。ただ、コントロールしきれない、仕方を間違えれば、暴走したり、肉体に重い負荷がかかります。
また、周囲にエネルギー源がない状態であれば、魔法を使えなくなります。属性別で魔法を使う魔法使いが、自身に有利な環境において魔法効果が上昇するような場合は、この設定です。ファンタジーな職業で考えれば風水師です。
※現実の風水師は占い師なので、フィクションとは大きく異なります。
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・意識体由来の外気
神職(クレリックなど)が信仰を元に神の力(加護)を借りる、契約によって悪魔や魔獣・精霊の力を借りて魔法を発動させます。対象意識体と利益や思想が一致する事や、契約などで必要な対価(精神エネルギーや生贄、触媒など)の条件が必要です。信仰心が薄れれば効果が出せなくなる、神の力の及ばない土地では発動しないなどの条件があります。RPGにおいて僧侶が治癒魔法や死者を生き返すなどは、この部類です。
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・エネルギー源は不明
仮想現実のゲーム設定や、ロストテクノロジーの発見などであれば、理論不明で特定の呪文や手順により、魔法が発動する設定はありです。
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物理法則と魔法
魔法の多くが物理法則を無視しているので感じにくいですが、物理法則に対して魔法が設定した世界の中で「どうなるのか?」を設定、必要に応じて提示しないと、ストーリーに矛盾や違和感が出てきます。
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よく話題にされるのがテレポーテーション(転移魔法)です。
「異次元空間を通って、指定の場所に出現する。行った事のない土地には行けない。飛べる距離には限界がある」と設定する場合が多いです。もしくは、指定の魔法陣や門(ゲート)のある場所同士にしか飛べない。
ゲームのウィザードリーでは、座標点を指定すれば未知のダンジョンさえ転移できます。そのため、壁の中に転移すると壁の中に出現して圧死します。
映画「ハエ男」的な概念であれば、自身を分子分解して空中を飛ばし、指定場所で肉体を再構築します。そのため、指定位置にハエがいたため、合体してハエ男となります。
転移を防ぐ場合に、転移不可の空間を「異次元との接続を不可能にする」のか、実際の肉体や、精神体や肉体の分子化した物が空中を高速飛行して目的地にたどり着く場合は、「転移不可の空間の手前に侵入を防ぐ結界や防壁を張れば良い」かなどが変わってきます。
安易に転移ができる世界であれば、お店の倉庫や金庫は侵入し放題、遠方の国に転移し、爆弾を置いて即座に転移するテロ、戦闘時に背後や本陣に出現する戦略が可能となります。
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水中でのライティング魔法の理論
洞窟内であれば、炎の魔法や光の魔法により、周囲を照らすのが常套手段です。しかし、それが酸素のない状態や水中で発動した場合、どういう結果をもたらすかは、設定や展開に応じて考えた方が良いです。
・魔法が発動しない、すぐに消えてしまう。
・物理法則を無視して、不思議パワーで成立する。
・炎や光の周囲にだけ空気空間を展開する所から魔法を発動させる。
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復活や治癒の魔法の理論
神に祈る事で安易に死者が復活して生き返る場合、世界から滅多に死者が出ない状態となります。高齢者が亡くなったら復活魔法で復活するのか?病気や不治の病も簡単に治せるのか?ちぎれた足とか再生できるのか?など、一般常識を打ち破る事が可能になります。
それを防ぐために、「死者の復活は術者自身の寿命と引き換え」であったり、「神が生き返らせるかは可能性が五分五分」であったり、「寿命が尽きると復活魔法は効かない」とか、「生き返らせるとか肉体再生には、直後に行った場合のみ可能で時間制限あり」とか、「怪我は治せても病気は治せない」、「特定の人(パーティ)しか生き返らない」などの条件付けを行う必要があります。
ゲームのウィザードリーでは、「呪われた迷宮内でのみ死者が高確率で蘇る」(たまに蘇生失敗して灰になり、蘇生不可能となります)という「場所限定で蘇る」などの設定もありです。
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絶大な魔法は、作品バランスを崩しやすい
ファンタジー世界において、剣術や武術と比べて魔法は異常に効果や威力が強く、使い勝手が良い場合が多いです。それを防ぐために、ピンチしか使えないとか、1度使うと何年も使えないとか、詠唱に非常に時間がかかるとか、高額な触媒が必要、呪われる、性格に難がある、などの条件を付ける場合が多いです。
特に国同士の争いや、悪の組織との対決において、魔法使い1人の戦力が数万の大隊の戦力を超えてしまい、チートと化す場合も多いです。1人のチート戦力によりピンチを覆すと考えるとドラマティックですが、「先天的に力を持った者が善なのか、悪なのか」によって勝ち負けが決定する、非常に凡人が報われない世界です。熟練の戦闘経験者が虫ケラ扱いで死に、若年のチート勇者と、チートライバルが、怪獣大乱闘的な環境破壊バトルを繰り広げるのが王道ですが、シュミュレーションゲーム的に魔法使いだけマップ兵器並みに強いと、ゲームバランスを損ねるように、小説内において、魔法使いだけが強くなりすぎないように注意が必要です。
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魔法と宗教
小説内で魔法を使う場合、既存の宗教、土着習慣、民話などを参考にしたり、用語を使用したり、モンスター名を使用するのは、よくある事です。特に日本では、宗教観念が非常におおらかで緩いのと、フィクションはフィクションでしかないとの認識が強く、本気で怒らない場合が多いです。そのため、ゲームの女神転生シリーズのような多種多様の神が入り乱れたり、神や悪魔が美少女になって大活躍とかしても、特に問題とされない、非常に太っ腹な社会です。
ただ、特定の宗教を使用やモチーフにした場合、教義や作法に間違いがあればマニアックな読み手からしたら「作品のレベル低い」「適当じゃん」と評価の下がる原因となります。特に気になるのは、多神教で上位の神と下位の神の立ち位置や力関係が逆だったり、違う宗教の神が何の設定もなく不自然に紛れ込んでいる、水の加護の神様が火の加護だったりするなど。
明らかに西洋テイストの悪魔が、和風に清め塩で除霊できるとか、キリスト教的聖水で妖怪が倒せるなど、理論や概念、思想などが不自然にちゃんぽんなのも気になります。
また、宗教自体を必要以上に愚弄したり、悪者扱いする場合は、差別と捉えられる場合もあります。そして、安易に呪術をかっこよく描いたり、実際の姿と異なる描写を行えば、読み手の思考や言動に影響を与える場合があります。「こっくりさん」をやってみて集団パニックになるような事件や、ゾンビ映画の影響で実際のブードゥー教のゾンビとかけ離れた現状や、ドラキュラ伯爵が吸血鬼扱いされてしまう偏見など、フィクションであっても現実に影響を与えます。
日本では、魔女と言えば「魔女っ娘大好き」と言うイメージですが、海外では魔女はキリスト教の敵、悪魔崇拝者や異教徒としての迫害対象と言う見方が今でもあります。魔女狩りで狩られる、わし鼻の醜い老女のイメージです。まあ、アメリカ大人気ドラマの「奥様は魔女」みたいな特例もありますけど。神話や民話での敵や魔物は、他宗教の神や信者を象徴する存在である事も多いです。
作品設定が現実に近くなればなるほど、宗教観念への見方は厳しくなっていきます。「西洋ファンタジー世界で、呪いで生贄を捧げる」と「現実社会設定で、呪いで生贄を捧げる」では、格段に現実設定が問題視されます。それは、真似がしやすい、現実と混同しやすいからです。
以上。
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