第18話 作家のタイプ・日本の恥文化

作家は主に、3つのタイプに分けられます。(これは独自論です。)

また、複数のタイプが混在する人もいます。

自分が好きに小説を書くだけなら気にする必要はありませんが、人気を得たい、独自性のある小説が書きたいと考えるならば、自分のタイプや売りは何なのか?を考え、自らの武器として腕を磨いた方が良いです。


・私小説家

珍しい経歴や思想の持ち主で、自身の過去や思想を小説として切り売りする小説家。


・極度の空想家

自身の妄想や趣味が、世間の欲しがる内容とマッチしたラッキーな小説家。


・理論的小説家

世間の作品や需要を分析して理論的にウケの良い作品を書く小説家。


若年や執筆初心者で有名になる場合は、私小説家が多いです。ストーリーは本人が作っているのではなく、体験しただけを書き連ねているので、希少体験内容が尽きると人気が終わる確率が高いです。私小説家で、長期人気を得る作家の一部は、希少体験内容が尽きないように新たな希少体験を自ら体験に行く、ルポライターのような取材形式を行う人がいます。

自身が凡人で普通の思想の持ち主だった場合、このタイプとして活躍するのは「現状」では難しいですが、自ら「大勢が興味のある希少体験」に飛び込めば、それをルポして小説化するだけで人気作が書ける可能性はあります。こういったネタ目的で「暴力男と付き合ってみた」などの体当たり生活をしてみる作家もいます。また、漫画家志望の人がネタとして、わざと猫を飼って「猫漫画を描く」パターンもよくあります。猫が勝手にネタを作ってくれるのを待つ方が、自分でネタを考えるより楽な人には向いています。

夏目漱石の「我輩は猫である」は、典型的な私小説です。「英語教師でイギリス留学経験のある先生が日常を語ってみた・猫を飼ってみた」みたいな作品で、普段の生活自体がネタの宝庫なので、執筆1作目にして大ヒットしています。

誰もした事のない希少体験をと考えた場合、最先端技術や新商品を体験すると良いです。推理作家は、新作のために新電気機器をチェックしたりします。ポケベルが発売されたら、ポケベルを使ったトリックを書く、スマホにGPSが付いたら、それでトリックを書くなどすれば、新技術で新トリックが生み出せます。


極度の空想家は、純粋に自身の妄想で作品を書きます。SFや歴史小説、ファンタジーなど。実際に現実味が必要かと言えば、そうでもなく、例えばモテモテハーレムを描くなら、リアルな女性経験が豊富より、女性経験のない人にとっての理想を追求した方がウケます。厨二病だからこそ厨二病の人にウケる話が書けるなど、若年者には若年者なりの利点もあります。ただ、自分の書きたい話が、世間一般の求める話ではないケースの方が大多数なので、自身の好きな小説だけで人気を出すのは、かなり難しいです。


理論的小説家は、自分の書きたい話ではなく、世間が求める話を分析して、それをうまく表現する事で人気を得ます。民俗学を研究している作家に多いです。J・R・R・トールキンは民俗学を使って「指輪物語」を書き、ジョージ・ルーカスは様々な民族習慣を取り入れ「スター・ウォーズ」を描きます。世間で人気を集めた話を集めてきて、うまく再構築できれば人気は出やすいです。著作権切れコンテンツをアイデアとしてネタに取り込みます。民俗学って言うと分かり難いですが、昔話や民話、神話や迷信、妖怪など、民俗学の材料は身近に大量に転がっています。

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日本の文芸の特徴


日本では「恥」の文化が色濃いです。名誉のために切腹したり、自殺や心中が美徳とされる傾向があります。落語や人形浄瑠璃などでも、悲恋や心中の内容は多いです。近代文学も、太宰治や芥川龍之介、三島由紀夫など、心中や自殺する・死を美徳とする作家が多いです。その傾向は今も続き、厨二病やウジウジと悩む主人公の作品は多いです。文学によって現実逃避する人の逃げ先が「死」であったのに対して、今は自殺を賞賛したりはできないため「異世界に転生したい・ゲームの世界へ行きたい」と願う若年層が増えてきています。

昔から、平家物語や忠臣蔵、新撰組など、日本人は、破れる側の勢力を応援する、儚さを楽しむような作品が人気です。西洋やアメリカの強くて頭も良くて優しいヒーローが、悩みもなく敵を粉砕するような作風はあまり好まれません。


ストーリーは、好景気であれば現実的な作品が人気となり、不景気となれば非現実的な作品が人気となります。好景気であればドラマ「海猿(海上保安官)」や「HERO(検察官)」のような実際の職業のストーリーが人気となり、不景気の場合は、「ハリー・ポッター」などのフィクション作が人気となります。


以上。

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