第12話 著作権(アイデアには権利がない)

盗作疑惑が持ち上がった時によく語られるのは「アイデアに著作権はない」と言う話です。物語のざっくりとしたおおよその展開が同じでも、作品に個性があれば別作品ですと言う考え方です。

そうであれば、物語(ストーリー)に権利は存在しないかと言えば、それはゼロではないです。


推理小説では、同じトリックを使った似たような話は大量に存在します。

漫画ジャングル大帝をこれでもかとパクったライオンキングがオリジナルとして許される社会。

現在の日本法律については、物語(ストーリー)自体に著作権は認められていないと捉えます。

星新一の「生活維持省」の内容を盗用したと言われる「イキガミ」に対して、星新一公式サイト見解が発表されましたが、「イキガミ」側は否定あるのみでした。星新一遺族側が訴訟に至らなかったため「イキガミ」は放任のままとなりました。


しかし、映画「カメラを止めるな!」に対して、着想の元となった舞台「GHOST IN THE BOX!」の劇団主催者が原作を主張した件は、弁護士を入れた話し合いの上で、互いに尊重したクレジット表記(共同原作、企画開発協力、Inspired byの3つ)へと変化して和解しました。

また、2005年に同人誌でドラえもんの最終回(漫画)を原作そっくりタッチに書いて、大量販売したものが趣味の範囲を逸脱し、また原作だとの誤認識の広まりにより、著作権法違法と通告されました。

作品の公開停止・在庫の破棄・売上の一部の権利者へ支払っています。

このドラえもん最終回の物語(ストーリー)は、二次創作した作者のオリジナルコンテンツとして映画「ジュブナイル」の原案としてエンドクレジットに掲載されました。

法的論争においては物語の権利はないに等しいですが、世間一般常識としては「なんでもあり」ではなく、一定の良識は要求され、権利も認められる傾向にあります。


最近多発しているツイパク(他人のツイッターの内容をパクって、自分が書いたように見せかける)や、まとめサイト(他人の著作のリライトコンテンツ)も問題となっています。

法律的には「文章をほぼコピー(複製)」した場合、明らかに著作権侵害です。

文章内の事実を、別情報と照合して再構成した事実記事の場合は、コピーとは見なされません。

まとめサイトなどの内容がコピーされた場合、元文章の個性的表現や比喩表現までもがコピーされている場合、盗作との認定を受けやすいです。

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曲の歌詞を元に小説の物語を書きたい時


曲の歌詞にインスピレーション(影響)を受けて、曲を題材にオリジナル要素をたくさん入れて作品を書く場合は、オリジナル作品として問題ないです。また、おおよその物語が同じでも人物が違えば、(ボカロ曲とか)著作権上は問題ないです。

曲の歌詞に従う・なぞる形で、オリジナル要素がなく、物語を書き起こすのであれば、盗用・パクリ・二次創作となります。ただし、曲の歌詞の物語が「ありきたりな誰でも思いつきそうなよくある話」の場合は、オリジナル作品として問題ないです。


金銭利益の絡まない(頒布同人誌や有料コンテンツではない)無料公開であれば、有名曲の内容で小説書いてみましたと二次創作である事を公表して書く道はあります。

ただし、それを権利者やファンが不快に思うかはジャンルによる面が大きいです。

日本の漫画やアニメやゲームの多くが二次創作をグレーゾーンとして黙認しています。しかし、歌手業界は基本的に二次創作はアウトです。

ボーカロイドやアニメ主題歌・ゲーム主題歌に関しては、業界の境目辺りですがグレーゾーン寄りです。

実際、ボーカロイドの曲から創作された小説も多数、好意的に評価されたものを見かけます。

書きたいな、公表したいなと思った時は、まずは権利元のHPや発言を確認し、周囲の類似作を見回して、自己判断してください。

有名曲の二次創作の内容で金銭利益を得るのは、内容・ストーリーの丸ごとパクリであり、グレーゾーンには属さず違法と判断される可能性が増します。

二次創作のイラストで言うなら「模写」に近いです。模写を模写と言って無料公開するのはグレーゾーン(※訴えられればアウト)ですが、模写を販売するのはアウトです。

二次創作の漫画は、キャラや設定を利用しても、内容・ストーリーはファンの考えたオリジナルであり、内容はパクリでないが故のグレーゾーンです。

ただし、小説が無料公開であっても、売名目的・アクセス数稼ぎと判断された場合は、悪質・アウトと捉えられる場合はあります。


ボーカロイドの曲は、レーベルに属し商業販売されている曲であれば商業コンテンツとして扱い(漫画の二次創作と同じで作者や出版元に二次創作許可を求めない)ますが、商業展開されていない曲に関しては、個人創作とみなし、小説化するのに作者に許可を求めるのがマナーです。


ちなみに初音ミクなどは、公式イラスト利用に「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」が存在し、非営利無償であれば二次創作の承諾不要です。しかし、同人誌的な少部数配布の場合は、利用申請が必要です。

また「初音ミク」の「キャラクターを使って良い権利」と「歌っている曲を使って良い権利」は別々です。

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書籍からの引用・参考書籍


小説を書く時は、色々な書籍やネット情報などを参考・参照します。

「太陽から地球までの距離は1億4960万km」と小説内に書きたい時に、その情報を引き出した書籍名やネット情報を作品末尾に表記するかと言えば、一般的には否です。

一般常識や、多くの書籍に書かれている権利者のいない情報に関しては、いちいち表記する必要はないです。きりがないです。

どんな場合に表記が必要かと言うと「その書籍やサイト固有や、ほぼ固有に近い情報を使用する場合」と「1つの書籍やサイトから大量の情報を作品内で使用する場合」などです。

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版権切れ作品について


小説の著作権期間は、日本では作者の没後50年です。

海外小説・国際法でTPPが発動すると没後70年になります。

ただし、翻訳文章は、翻訳した人の没後50年(国際70年)ですので要注意です。

※例外として、没後年数が経っていても各国法律により著作権の生きている小説も存在します。特にアメリカは要注意です。

よく見かけるのは、著作権の切れた「不思議の国のアリス」を使った創作小説や漫画です。

原作「不思議の国のアリス」を使って作った二次創作作品にも、新たに著作権が存在します。

ディズニー映画の「不思議の国のアリス」が一番有名ですが、ディズニー映画の映像・ディズニーオリジナルの展開・ディズニーオリジナルのキャラデザなどは、ディズニーの権利となります。

没後70年経っても著作権が切れていないコンテンツもたまに存在します。

ディズニーのように、同作品やキャラクターで定期的にリバイバル映画を作ると、うまくやると権利者が増えてその分の権利期間が伸びます。

共同で権利者が発生してしまうと、最後の権利者が亡くなった時点から指定年数で権利が抹消します。

最近では、江戸川乱歩が版権切れとなりました。

版権切れ作品は、ネットで無料公開されている青空文庫などでも閲覧できます。


版権切れ作品を使って二次創作する場合は、先入観により他の同原作の二次創作作品のオリジナル性の強い要素を使わないよう、注意が必要です。

また、権利が切れているとは言え、やりたい放題ではないので、原作を侮辱するような内容は、クレームの元です。


以上。

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