「風間さん、何が言いたいかは分かります。」






「お願い出来ますか?」






風間は右手に巻いた赤い布を田中に見せた。






「これは、娘のリボンだったんですが、貰ってくれませんか?」






「え、貰えませんよ。




大丈夫ですよ、必ず研究所を探し出します。」








「私は、明日には意識がなくなりポメラニアンになります、きっと何も分からなくなり、人を襲うのでしょう。」






残念そうな顔をして田中に話し掛ける。


「悔しいんです、もう何もしてやれないなんて。」








「そうだ、風間さん、




貴方は家族の元に戻って下さい。






意識がなくなれば、家に帰れないじゃないですか。」








「田中さんだって、こんな中、


出掛けているんだから、大事な用があるんじゃないんですか?」






「お恥ずかしい話ですが、


私には何も無くて…


つまり、会社に向かう以外に思い付かなかったですよ。




残念な奴でしょ?」






「そんな、そんな事ないですよ、見も知らない私の頼みを聞いてくれてるじゃないですか。」






「だって、風間さんは言ってくれたじゃないですか。




自分が事故して怪我しているのに、危ない逃げろって、教えてくれたでしょ?




まぁ、逃げ切れずに殴られましたけど。」








二人は、こんな状況の中、笑った。






「あははは、お互い様って思っていいんですかね?」






風間はそう言うと、携帯電話を渡した。






「この中に、ポメラニアンのデーター等が入ってます、後、家の住所も。」








「はい、預かります。」






「お願いします。




私は、意識があるうちは田中さんの側に居ますから。」






「駄目ですよ。」






「いやいや、何も知らなかったじゃないですか、田中さん!?




心配で一人に出来ませんよ。




後、家を出るときに決めた事なので、必ず家族を助けると。」

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