こんな時に、昔の事を思い出す。






博との歩みを…






何でかな?


こんな簡単に浮気をするなんて思って無かった…まだ引き返せるかも…もう、無理か。






「奈緒美さん、どうしました。」






「うん、何でもないよ…私たちって…キスしかしてないよね?」






「はい、キスだけです。」






「今なら、引き返せるかな?」






「…帰っちゃんですか?」






「…うん。」






「…分かりました…でも、僕は諦めませんよ、奈緒美さんが好きです。」






「…本当に好き?引き返せなくなるよ、いいの?」








「はい、戻る場所なんてありません、僕には帰る場所が奈緒美さん何です。」






「誠也君…」






私たちは抱きあった、きつく、強く、一時の感情で偽りの愛を作り出し、それを間違いと知りながら、揺ったりと浸かった…






肌触りのよい、泥を全身に塗り込み、偽りの愛で出来た底なし沼に沈むのだった。








体が感じるのではない、渇いた心が偽りの湿り気に呑まれていくのだ…




全く性質の異なったエキスを身勝手に塗り、自分勝手に浴びて心を騙し…感情を騙し…愛を騙し…世間を騙し…ただ一人の大切なパートナーを騙し…身体の快楽に、わざと従うのだ。






身体以外の全てが拒絶する、その世界に沈み混む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る