その時、弾まない会話の空気を打ち砕く救世主が現れた。




「おはようございます。」






直木くんだ…


良かったこの重たい空気を彼なら変えてくれるだろう。






「あ、おはようございます。」


咲さんのどんよりした挨拶もへっちゃらさ。






挨拶を終えると咲さんは帰っていた。






私も早く帰ろう、幼稚園のバスが来てしまう。




「じゃあね、直木くん…


お疲れ様ー。」






「はい、お疲れ様です、明美さん。」






何時も思う、主婦になってから名前で呼ばれる事があるのはこの場所ぐらいだ。






もし、苗字が緑子のまんまだったら絶対呼ばれない、


しかもこんなに若い男性から名前を呼ばれるなんて、それだけでドキッとしてしまう、


平凡な主婦と言う日常には無い出来事だ。






平日は入れ替わりだが、日曜祭日は一緒にレジに立つ、


平日なら会話をする機会があるが祭日は忙しくて会話は出来ない、


そう話すなら今なのだ。

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