時子さん 第11話


■ 時子さんの都市伝説についての考察




 時子さんの都市伝説は、約一年前、つまり、2008年から語られ始めた。


 時子さんの携帯電話を手に入れたのならば、七日間以内にその呪いを解かなければならない。


 そうしなければ『死ぬ』と言われている、よくある都市伝説の類いであると思われていた。


 その呪いがどういった類いのものであるのか。


 呪いはどう解くのか。


 そういった情報は一切判明していない。


 時子さんの携帯電話の情報が出始めたのは、ネットであった。


 都市伝説を研究していた男・沖沼志津馬おきぬま しずまが、時子さんの携帯電話と思しき携帯電話が写っている写真を公開した直後、その男が死亡した事で一気に広まった。


 沖沼志津馬は、管理人である私こと春日部保奈美の知り合いであり、オフ会などで面識があり、本当に亡くなった事も確認済みである。


 沖沼志津馬がどういう経緯か不明ながらも、時子さんの携帯電話を手に入れて、時子さんの携帯電話について説明していた。


 時子さんの携帯電話には、バッテリーが入っていない。


 それなのにも関わらず電話が鳴り出すのだという。


 最初の電話ではそう言われる。


『私を捜して』


 その次の日から特定の時間になると、その携帯電話が鳴り出し、その電話に出ると、こう告げられるのだという。


『後七日』


『後六日』


『後五日』


『後四日』


『後三日』


『後二日』


『後一日』


 それはまるで死のカウントダウンである、と。


 時間切れとなった時、携帯電話が鳴るのか、何を告げられるのかは分からない。


 当の本人が亡くなっているのだから。


 沖沼志津馬の死後、時子さんの携帯電話が何人もの人に渡ったのが確認できている。


 そして、入手した人は漏れなく亡くなっている事もまた確認済みである。


 つまり、誰も時子さんの携帯電話の呪いを解いていないものと推測される。


 最後に、言実町にある喫茶店『蝉時雨』で何人もの人間が猟奇的な殺され方をされていたらしいのだが、それは時子さんのしわざとの事である。


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