時子さん 第5話


「実験的に、もう忘れ去れている都市伝説を復活させてみないか?」


 俺は集まったメンバーの顔をざっと見回した後、そう切り出した。


「時子さんの携帯電話という都市伝説が語られていたのは、携帯電話、いや、ガラケーと呼ぶべきか、まあ、ガラケーでいいか、それが全盛期であった頃だ。時子さんから携帯電話に電話がかかってくると、一週間後に死ぬっていう、ありきたりな都市伝説が流行っていたのさ。一部の地域ではあったけどね」


 午後八時になった頃、山手線の西日暮里駅から歩いて十分ほどの場所にある、こじんまりとした居酒屋の個室にいつものメンバー七人がようやく集まっていた。


 リーダーはこの俺・妻越誠つまごえ まことだ。


 俺の提案に他のメンバーは賛同することが多い。


「……で、そのなんとかさんの携帯電話ってのを復活させて何がしたいんだ?」


 桜田伊央さくらだ いおが俺にそう質問を飛ばしてきた。


「特定の都市伝説が流行るかどうかを試すんだよ。ある程度流行るようならば、その仕組みを別の方法として活用する。それはもちろん都市伝説の流布じゃなくて、金儲けだ」


 何かのグッズを売るもよし、相談にのります系の相談料の徴収でもいい。


 やりようはあるはずだと俺は思っていた。


「つまり、俺達が作った都市伝説が流行るかどうかを試す。で、成功したら、集金システムとして利用するって事かな?」


 桜田が得心したかのようにそう言った。


「うん、その通り。どうやってお金を集めるシステムを構築するかは噂の広まり方次第だね」


 最近、お金が稼げる系の情報商材で一稼ぎしようと思っていたのだけど、俺達は上手くはいかなかった。


 ならば、これまでとは違うやり方で集金しようと俺は考えた訳だ。


「やりようによってはありかもしれないわね」


 見た目は秀才ぽいが中身が何もない矢田香やだ かおりが同意の意を示した。


「でしょ? じゃ、説明させてもらうな」


 俺は練りに練った計画を話す事にした。


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