三十一文字の恥はかき捨て
みんなの短歌「うたよみん」( https://www.utayom.in/ )のサービス終了に伴い、投稿していた短歌をこちらに再投稿します。
今読み返すと苦笑しか出てこない作品群ですが、当時の自分に敬意を表し、せめてなかったことにしないためにここに公開するものです。
2016/01/17 01:25 恥を知る前に生まれてきたかった三度悔やんで聴くサカナクション
2016/01/17 03:24 ディスカバリーチャンネルが教えてくれた「ためらったならお前は死ぬ」と
2016/01/17 03:40 IKEAで食べるシナモンロール程度の甘さでいい、愛してください
2016/01/17 17:56 「愛しい」という言葉の反対側マフラー巻いてさびしい顔で
2016/01/17 19:43 茹ですぎたパスタのように絡みつくとある言葉にまつわる呪い
2016/01/25 01:06 見逃したテレビみたいにそのうちにきみのことさえ忘れてくんだ
2016/02/11 13:17 短い恋だった素敵な恋だったきっと呪いになるよ、さよなら
2016/02/26 19:33 いつもとりとめのない話聞いてくれてありがとう、非実在のきみ
2016/03/17 23:40 致死量の恋致死量の睡眠薬春まで残り300メートル
2018/08/02 19:53 熱帯魚になりたい広い水槽で雨の匂いのエビアンのなか
2018/08/02 22:19 恋の歌恋の歌恋の歌恋の歌恋の歌腹が減った
2018/08/04 05:35 早い夜明けに一人でいること誰にも気づかれず歌を詠むこと
2018/08/04 06:01 命日の空を見上げて火を点ける煙草の箱に溶け残る青
2018/08/04 06:23 「他者の内面などはない」と言い切る哲学者深く帽子をかぶり
2018/08/04 10:18 野蛮さは最高のソース桃の皮むいてはかじりむいてはかじる
2018/08/04 17:02 本当は雨を待ってるとは言えず静かに浴衣のしつけ糸解く
2018/08/04 17:11 誰ひとり私の話聞かずともそれは黙るべき理由(わけ)にならない
2018/08/04 18:28 許す愛す憎む殺す決められぬわれ卑怯者月見て帰る
2018/08/04 18:31 考える人が見下ろす熱帯夜此処こそ地獄ようこそ地獄
2018/08/05 00:46 幼き日許されなかったあれやそれたとえば深夜に茹でる素麺
2018/08/05 12:14 炎天下冷や汗の如く溶けていくアイスキャンディー開戦前夜
2018/08/06 00:43 水の雫降るなら上げよ火の飛沫きらきら交わせ夏の言葉を
2018/08/06 00:53 桃かじり粗雑に濯ぐ唇の快さこそ夏の醍醐味
2018/08/06 04:44 夜明け前空を震わす神鳴りは遠くで龍の人呼ばう声
2018/08/06 21:05 来たときと同じく夏は知らぬ間に去るものと言うカット西瓜よ
2018/08/07 10:24 立秋の寒さに負けて潜り込む毛布のぬくみに夏は遠のき
2018/08/08 23:31 乱暴な海風が声吹き散らす「別れよう」とか「さようなら」とか
2018/08/09 04:59 まだ/既に我を心配する者のなければ夜明けに胡瓜を刻む
2018/08/10 02:42 台風や家人の嫌う納豆を留守の土砂降り眺めつつ喰う
2018/08/11 02:31 好きだった漫画の最終回を読む二度とない今日という日の夜に
2018/08/11 05:18 雨雲の引き出し開けて三日月を取り出すまあるいケーキ切るため
2018/08/13 08:11 夢のなかですら間違いため息がシーツのうえを転がっていく
2018/08/15 10:04 熱い息吐いて冷たい茶を淹れる夏の寝床に日は降り止まず
2018/08/16 00:06 手のなかのソフトクリーム溶けていく打ち上げ花火は鳴り響くのに
2018/08/16 00:12 またね夏きっと必ずまた会おうあの桟橋でくらげと待つから
2018/08/21 21:10 失恋をすれば佳い歌詠めるからねえ付き合ってよ三時間だけ
2018/08/21 21:11 勝算は未だに見えず鍋のなか困り果ててるコンソメスープ
2018/08/21 21:34 完熟の冷やしトマトのためならばこんな星など五度でも滅べ
2018/08/21 21:36 インスタに裸を載せるよりきっと短歌を詠むとは赤裸々なこと
2018/08/28 01:06 窓越しに降る雨冷えてもうすぐか冷感シーツの仕事納めは
2018/08/28 01:07 困ったらすぐにスープを煮込むくせじゃがいもの皮にまた叱られる
2018/08/28 01:11 納豆にキムチすりごま刻み海苔たらりごま油垂らしてどうぞ
2018/09/04 02:08 玉ねぎがまな板のうえ泣いている刻むわたしはもらい泣きする
2018/09/04 02:14 ふるさとの川を離れて冷凍庫鮭の切り身の赤は冴えざえ
2018/09/06 02:26 イヤホンを半分こして深夜ラジオ青春と切った爪とを捨てる
2018/09/17 06:02 今回は私が悪いし聴いてやる煙草一本分の説教
2018/09/19 10:25 「無関心」を「多様性の尊重」と言い換え笑顔で拭う冷や汗
2018/09/19 22:23 何もかも思い通りにならぬけどざらつく世間をすいすい歩く
2018/09/26 18:10 頑張ろう/心ひとつに/絆/未来/あとなんだっけ思い出せない
2018/09/30 06:31 この庭の天気はいつも変わらない雨のち光ときどき言葉
2018/09/30 06:36 神さまの庭にブリキの如雨露あり取っ手にかえる佇んでおり
2018/09/30 06:39 庭で焼く肉の煙に身を隠すガラスの瞳天帝の鳥
2018/09/30 06:43 この街を庭と呼ぶならいつの日か殺したきみを埋めてあげよう
2018/10/01 14:35 冷笑せし庭に佇む賢者ども長き裾に火が点くとも知らず
2018/10/01 14:38 胸の内深く沈めた箱庭で明かさぬ想いは花となるかな
2018/10/03 08:35 朝焼けの光と煙に目を細める寡黙なきみの雄弁な影
2018/10/11 14:37 終わらない現実よりはきみと見る一瞬だけの夢がよかった
2018/10/11 14:41 万人の夢を集めて月の釜煮込む薬は不眠に覿面
2018/10/11 14:42 道端の屋台のおでん鍋のなかいつかの夢にだしは染み込み
2018/10/11 14:44 人の悪を暴き続ける世界では夢の強度は落ちゆくばかり
2019/01/06 05:24 暗闇の赤い光は星じゃなく佇む君のマールボロの火
2019/01/15 17:00 放浪は天分 今夜もひとりきり散歩をしよう 宛てもないまま
2019/01/16 17:05 困ったらわんと鳴けよと教えたる友の未だに外れぬ首輪
2019/01/16 17:37 冬深しラムネひと粒舌先に乗せて無害な抗鬱剤とす
2019/01/16 23:43 祭礼の名残としてのりんご飴上滑りする人工の赤
2019/01/24 19:20 封切りのクライマックスより頬に涙伝わすきみに見惚れて
2019/01/26 02:51 楽しくも苦しくもない何もない額縁みたいなそんな生活
2019/01/27 02:08 さきさきと刻む茗荷の匂い立つ厨に清き夏の来るなり
2019/01/27 06:10 地獄への道は悪意で舗装され君の家まで続くサルビア
2019/02/05 22:26 星も雨もきみに焦がれて降り注ぐ自由落下のあまい破滅よ
2019/02/06 11:21 からだのつかいかたことばのつかいかたおしえてどうかどうかわたしに
2019/02/06 12:11 「レターパックで夜を送れ」はすべて詐欺です 梟へ相談を
2019/02/07 21:27 まえがみをかいそうれっしゃにあおられてきょうという日をゆるされている
2019/02/11 18:41 なにもかももやしてしまえぶんこぼんに栞がわりにはさんだ指も
2019/02/13 08:54 舌打ちとともに置き去りただ笑ういろんなものに嫌われている
2019/02/13 08:55 握り締めるついに結べぬ赤い紐いろんなものに嫌われている
2019/02/13 13:51 夢で詠んだ歌を持ち帰ってはならぬ正気のふちに留まりたくば
2019/07/20 12:49 私だって上手く生きたい線路脇轢かれぬままの夏草のように
2019/07/21 22:00 離陸する飛行機たちよ前線を越えて翼に夏載せ戻れ
2019/07/21 22:02 狂乱のSNSに囚われた言葉らをそっと逃がしたい夜
2019/07/25 21:20 ひぐらしの夜明けに鳴くを聴いてから七年越しの寝床へもぐる
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