同行者
フュームは【
そして、変身する力について大悟に会って教えてもらう必要が出た為、王都に急ぎ向かう必要が出て来た。
フュームが王都へ向かう為に街の出入口付近で言い争いをしてる者達を発見する。
「王都に向かうったって嬢ちゃん⋯⋯リスクが大きい事は前話したばかりじゃねえか」
「それは分かってるつもりだよ。でも、僕はどうしても会うべきだと思うんだ」
「だから、それが罠だという可能性だってだな」
それはエレインと名乗った男性と屈強なナイスミドルなオジサンことガレスだった。
「僕だってそれくらい承知の上だ。でも、危険だからって避けていては、重大な事が分からないかも知れない」
「だから、もう少し情報が集まってからだな。それにあそこは激戦地だ。行ったら帰って来られないかも知れないんだぞ!!」
ガレスはエレインを必死に呼び止めている。
『⋯⋯関わらない方が良さそうね』
フュームがその場から離れようとした時だった。
「ねぇ、そこの君」
フュームはエレインに呼び止められるが、面倒事に巻き込まれそうなので無視しようとする。
「そこの君少し話を⋯⋯」
『やれやれ、面倒事だけは勘弁してほしいわね』
フュームはとりあえず話しだけでも聞くことにした。
「⋯⋯エレイン、その嬢ちゃんがどうかしたか?」
「彼女は王国騎士だ。そして、勇者を追っている男の事を教えてくれたんだ。えっと⋯⋯確か⋯⋯」
「フューム・ライナーよ。エレイン⋯⋯だったかしら?」
「ほぅ、その嬢ちゃんがか若いのに大変だな」
ガレスはフュームに労いの言葉をかける。
「それで、私に話があるみたいだけど⋯⋯」
「この前、教えてくれた子連れの男の事を追う為に街を出たいんだけど、この分からずやが、なかなか行かせてくれないんだ!!」
「分からずやとは言ってくれるな。嬢ちゃんこそ、勇気と蛮勇は違うと何度言えば分かってくれるんだ!!まずは十分に情報を集めてだな!!」
「だから、これ以上はないってくらい情報を集めたじゃないか!!これ以上、待っても仕方ないよ!!」
エレインは早く王都に向かいたかったのである。
「へぇ⋯⋯愛されてるのね」
「えっ!?」
そのフュームの言葉にエレインは何やら慌てている。
「娘のいた親としては子供はいくつになっても心配なものなんだよ」
「子供じゃない!!」
「ハハッ、そうかい」
子供扱いされてエレインはムキになっているがフュームにとっては微笑ましい光景だった。
「僕はガレスさんの子供って訳じゃないんだけどね」
「そうか?俺にとっては嬢ちゃんもアッシュも子供みたいなもんだけどな」
ガレスにとってはエレインもアッシュも危なっかしい子供と大差ないのである。
「だから、行かせるわけにはいかない」
「この分からずや!!頑固オヤジ!!」
「フッ、なんとでも言うがいい。それで嬢ちゃんの気が済むのならな」
「ハゲ!!」
「まだ、ハゲてないわ!!」
ガレスはハゲという言葉に過敏に反応する。
「⋯⋯仲がいいわね。私は急いでるの。用がないならこのまま失礼するけど⋯⋯」
「ある⋯⋯あるから、待ってよ」
「それならサッサと言いなさい」
フュームは呆れながらエレインの目的を尋ねる。
「短刀直入に言う。僕を王都まで連れて行ってはくれないか?騎士の同行なら文句はないだろう?」
「その理屈はおかしいと言いたいが本気なのだな」
「ああ、本気だとも」
「⋯⋯」
ガレスはエレインの目を見ると止めるのは無理だと諦める。
「分かった、分かった。だが、絶対に死ぬんじゃないぞ。騎士の嬢ちゃんもそのおてんばには苦労すると思うがよろしく頼む」
ガレスはそう言うと深々とフュームに頭を下げる。
「あ、頭を上げなさい!!分かったわ。あなたの自慢の息子は私が預かるわ。だから、安心しなさい」
フュームにとっては目的が同じなので頭を下げられる程の頼みごとではなかった為、ガレスにすぐ頭を上げるように言う。
「⋯⋯感謝する。それと訂正すると息子じゃなく娘だ」
エレインは歴とした女性であり、その事をガレスがエレインに代わり否定する。
「えっ?ええ!!」
当然、フュームは驚きを隠せなかった。
何処からどう見ても美男子だからである。
「その反応をされると少し女性としての自信を失うよ」
「気にするな。今更だ」
ガレスはそれに関しては一切フォローをしない。
「酷くない!!少しくらいフォローしてよ!!」
「我儘娘の頼み事をきくんだ少しの悪態は我慢しろ⋯⋯」
「まったく、ガレスさんは⋯⋯それじゃあ行ってくるよ」
「おう、行ってこい。あまり無理するなよ」
そうして、フュームはエレインとの王都までの旅が始まった。
「⋯⋯心配ならやっぱり帰る?」
エレインは何度も名残惜しそうに後ろを振り返るエレインの姿を見て尋ねる。
「そういうわけにはいかない。僕はあの人達に死んで欲しくない。だから、前に進むんだ」
「⋯⋯死んで欲しくない⋯⋯ね。確かに死ぬのには惜しい人だと思うわ」
フュームはガレスとエレインのやり取りを見てガレスの人となりを理解し、かなりのお人好しだという印象と親バカという印象を受けた。
「それに、今から会いに行く男もさっきのオッサンに負けず劣らずの親バカなのよ。本人は否定してるけどね」
「そもそも、子連れで王都までってかなり危険だと思うけど?」
「⋯⋯そうね。普通は誰もがそう思うわ。でも、そのフレイという子供が私には劣るけど結構強いのよ」
フュームは劣るという部分を強調しながら言う。
その頃、フレイはくしゃみをしていた。
「くしゅん」
「どうした?風邪なら少し休むか?」
「違うの。とても不愉快な事を言われた気がしたの」
フレイはフュームだとは気付いてはいないが不愉快なものだという認識があった。
「⋯⋯これは飛んで行った方が速いわね」
フュームは光の翼を出すとエレインは驚く。
「て、天族の方だったんだね」
「別に驚くほどの事ではないと思うけど⋯⋯光栄に思いなさい。私が空路で運んであげるんだから」
そう言うとフュームはエレインを抱えると翼を羽ばたかせ宙に浮く。
「ちょっ!!まだ心の準備が!!」
エレインはいきなりな事に戸惑うが既に足が地面から離れていたのでどうしようもなかった。
「うるさいわね。こっちの方が最短ルートだし、速いのよ」
フュームは一気に高度を取り王都に向け一気に加速する。
「うわああああ!!」
エレインはフュームの加速に叫び声を上げる事しか出来なかった。
「⋯⋯ん?」
「どうしたフレイ?」
大悟達は既に王都の近くまで来ていた。
「とても不愉快な気配が近付いて来るのを感じるの」
「⋯⋯フュームか?お前どうしてアイツとそんなに仲が悪いんだよ」
「だって、私を混血とか言ってきたし、大悟の事も馬鹿にしたの」
フレイにとってはフュームは天敵なのである。
「それは、お互いさまじゃないか⋯⋯次、会った時は少しは仲良くしてくれ」
「⋯⋯大悟がそう言うなら、努力はするの」
「そういえば、やっと王都が見えて来たな。長かった。本当に長かった」
しかし、大悟達は王都に入る直前に騎士に止められる。
「すいません。ここは許可証か身分を証明するものがない者は入れる訳にはいけません」
どうやら、王都の出入口では検問をしており部外者を王都に入れないようにしているようだった。
「ないな。どうやって発行するんだ?」
「まぁ、この御時世ですからね。手続きの紙はここにありますから許可証の発行に白金貨一枚かかりますがよろしいですか?」
「えっと⋯⋯それもないな」
大悟は白金貨など持っていないし、今まで
「白金貨が無ければ許可証を発行することができませんが⋯⋯」
「それはいくら何でも高すぎなの。ぼったくりなの」
フレイはこの世界のお金の価値を理解しているため金貨一枚がどれだけ高額なのか理解している。
「お嬢さん、これは仕方ない事なんですよ。その白金貨一枚すら払えない者を我々は信用することはできないのですよ。白金貨一枚で我々の信用を買えるなら安いものだと思いますが?」
「⋯⋯分かった」
大悟は騎士の話を聞き王都に入れない事を理解し、その場を離れる。
「どうするの?」
「入れないもんは仕方ない。ここで野営するしかないだろ。とりあえず、ここでの金策も考えないとな」
大悟は今回の事で
その為、ここでの通貨の稼ぎ方を考える必要が出てきたのである。
「そもそも白金貨一枚なんてふざけてるの」
「そ、そんなに高いのか?」
「大悟の国はどうか知らないけど、金貨一枚で銀貨百枚の価値があって、銀貨一枚で銅貨百枚の価値があるの。ここまで言うと分かると思うけど白金貨は⋯⋯」
「金貨百枚の価値があるということか」
大悟はフレイの話を踏まえて予想するがフレイは首を横に振る。
「千枚なの⋯⋯貴族でもない限りそんなの持ってる訳ないの」
「貴族以外は生きる価値なしってかふざけやがって⋯⋯」
大悟はこの国のやり方に憤りを感じていた。
「何とかして入る方法を考えないとな」
「『セイヴァー』なら、壁を登るくらい容易いの」
「確かに容易いが、見つかったら後々面倒だ。検問をしている以上、不法な方法での侵入は捕らえられる可能性の方が大きい」
大悟は当然『セイヴァー』にさえ変身してしまえば、王都を囲う壁を軽々と突破できるが後々の事を考えると正攻法が一番いいのだ。
「それに、入れないのは俺達だけでは無さそうだからな」
王都の近くに馬車で野宿する者や簡素な布で作られたテントで野営する者が多く集まっていたのである。
「⋯⋯どう見てもガラの悪い連中しかいないの」
フレイは辺りを見渡すが薄汚れた鎧やら武器やらを持った者達がおり、そのうちの数名がこちらを睨んでいる事に気付いたのである。
「まぁ、フレイの格好は目立つわな」
フレイの着ているフレアワンピースはこの世界基準でいうと貴族くらいしか着れないものなのである。
「そういう、大悟もそのダサい格好は目立つの」
フレイはジャージをカッコいいとは思っていない。
「別にダサくてもいいだろ。動きやすいからな」
「だとしても、一緒に歩く身としては恥ずかしいの」
「うぐっ」
そのフレイの言葉に大悟はダメージを受ける。
「⋯⋯まったく、言うようになったじゃないか」
大悟はフレイの頭を力強く撫でる。
「縮んじゃう!!縮んじゃうからやめて欲しいの!!」
「大丈夫だ。これから伸びる」
「むぅ⋯⋯」
フレイは身長に触れられる事と子供扱いされる事を極度に嫌う為、大悟の言葉にむくれてしまう。
その様子を見ている者は、フレイの身なりからそれなりの金持ちと察していた。
「⋯⋯おい、アレを見ろよ」
「あの子供がどう⋯⋯!!」
「あのドレス⋯⋯どう見ても金の臭いがしねえか?」
男の一人がフレイが金持ちのお嬢さんに見えている。
「グフフ⋯⋯それにあの年齢であの胸の膨らみ⋯⋯挟んだらさぞ⋯⋯ごくっ」
中にはフレイに劣情を抱く変態がいた。
「⋯⋯お前、気持ち悪いぞ。だが、確かに子供であの谷間は凶悪だ。悪の元は絶たんとならん」
所詮、変態の友は変態なのであった。
フレイのフレアドレスは谷間が僅かに強調されており、フレイは大悟に子供扱いされない為にこのような大胆な服装をしている。
しかし、それでも子供扱いされる為、フレイは不満なのである。
当然、大悟はフレイの胸には一切興味がない事をフレイは知らない為、フレイの行為は空回りしているのだ。
「このロリコン共め⋯⋯ボス、どうします」
「ウホッ⋯⋯いい漢!!」
男達のリーダーの眼中の先には大悟がいたのであった。
「変態しかいねえ!!」
男は叫ばずにはいられなかった。
「グフフ⋯⋯いくぞ!!アレが桃源郷だ!!」
「悪の根源は勃たねばならん!!」
「おい!!馬鹿!!」
男二人は止めに入った男を振り切りフレイに襲いかかろうとする。
「⋯⋯嫌らしい視線に気付かないと思ったの?」
「うっ、がああああああ!!」
「ひぎいいいいいいいい!!」
フレイは男二人の股間を思い切り蹴飛ばした。
男二人は股間を抑えながら蹲り身動き一つ取れなくなっている。
「⋯⋯」
フレイは冷たい視線を男達に向けている。
「⋯⋯桃源郷⋯⋯ここに⋯⋯あり⋯⋯」
「我が生涯に一片の悔いなし⋯⋯」
そう言うと二人は気を失う。
「あの馬鹿共⋯⋯」
男は頭を抑えながら二人を蹴飛ばしたフレイのところへ向かう。
「おいおい、よくも俺の仲間をやってくれたな。この落とし前⋯⋯あ゛あああああ!!」
フレイは男の話しなど聞かず、股間を蹴飛ばす。
「⋯⋯」
『な、なんだ、このゴミを見るような視線⋯⋯いいぞ!!凄く⋯⋯いい!!』
「あ゛あああああああ!!」
フレイは容赦なく男の股間を蹴りトドメを刺す。
「ふ、フレイさん⋯⋯何もそこまで⋯⋯」
流石の大悟もあまりのフレイの容赦のなさに男達がかわいそうになって来た。
「今、とても不愉快な視線を感じたの」
フレイは変態に容赦することはしなかった。
そこでフレイは新たなスキル【急所狙い】、【威圧】を取得した。
【急所狙い】はフレイの攻撃が【急所】に狙いやすくなるスキルであり、【威圧】は格下相手の戦意を削ぐスキルである。
その威圧の効果により、男達のボスは既に失禁して戦意を喪失している。
『アレは【威圧】というより、蔑視だよな』
大悟からしたら、その男達が可愛そうになっているが、そのボスに大悟が狙われていた事は当然、大悟は知らないでいた。
「⋯⋯まだ不愉快な気配を感じるの」
フレイが言う不愉快な気配というのはフュームの事を指しているのである。
「さっきも言ってたが、本当に近付いて来てるのか?」
「⋯⋯私の射程圏内に既に入っているの」
フレイの射程圏内とは【狙撃】のスキルを使いフレイの魔法を狙える範囲でフレイを中心に半径二キロの範囲がある。
「また撃ち落としてやるの!!」
「待て待て!!落ち着け!!」
フレイは今にも【ファイアバレル】を放とうとしているところを大悟が止める。
「アイツが抱えてる奴まで巻き込む気か!!」
大悟は【千里眼】でフュームが誰かを抱えてることを確認している。
「⋯⋯確かに誰か抱えてるの」
フレイは大悟の言葉を聞き、放とうとする腕を下ろす。
「⋯⋯いい事を思いついた」
大悟はフュームが近付いている目的は分からないが、彼女達が王都に向かっている可能性が大きい為、フュームに頼み王都に入れてもらおうと考えたのである。
「いい事?」
フレイは当然、そんな大悟の考えなど知る由もなく、フュームの手を借りるという考え自体ないのであった。
「アイツ、一応隊長だろ。頼めば入れてもらえる可能性があるからその可能性に賭けてみようと思ってな」
「⋯⋯あまりあの天族のドヤ顔は腹が立つから見たくないの」
フレイはフュームに頼むのは願い下げだが、大悟の言う通り、それしか手がない為それに賭ける事にした。
フュームとエレインの視界には王都が見えており、眼下には王都に入れない者で溢れていた。
「あの⋯⋯さっき一瞬殺気を感じたんだけど⋯⋯」
エレインはフレイがフュームに向けて放った殺気を感じ取っていた。
「まったく、とんでもない射程範囲ね。あの距離を視認できるなんて⋯⋯」
「もしかして、例の男かい?」
「⋯⋯違うわ。子供の方よ」
フュームはフレイが自分を嫌ってる事を理解している為、ごまかそうとはしなかった。
「⋯⋯御冗談を⋯⋯」
「冗談なんかじゃないわ。アレを子供だと侮ると大火傷じゃ済まされないわよ」
フュームからしてみれば大火傷で済めばまだいい方であった。
「う、うん、分かったよ」
フュームの勢いに飲まれエレインはつい返事をしてしまった。
「さて、降りるわよ」
「本当にあっという間だけど⋯⋯気分は最悪だよ⋯⋯」
エレインは地面に着地するとその場に倒れながら呼吸を整える。
「私もここまでスピードが出るとは思ってなかったわ」
フュームは、【推進力++】のスキルにより速度が上がっていたのであった。
「⋯⋯だらしないわねえ」
フュームは後ろを振り返ると大悟とフレイが立っている。
「今度は何しに来たの!!」
大悟が話す前にフレイがフュームを睨み付けながら叫ぶ。
「⋯⋯相変わらず敵意丸出しね。そんなんでヒーローになれるのかしら?」
フュームはフレイを挑発している。
「防ぐ事しかできない奴には言われたくないの!!」
「相変わらず口の減らない奴ね」
「それはお互いさまなの!!やっぱり撃ち落としておくべきだったの」
フュームは先程の殺気はやはりフレイのものだと確信した。
「まったく、とんでもない射程範囲といい近接職のスキルを持ってる事といい。オールレンジの魔法使いって聞いたことないわよ。でも、あなたの魔法は防げばどうとでもなるわ」
「どうすればフュームの防御を貫けるか早急に考える必要が出てきたの」
フレイは本気でフューム対策を考え始めていた。
「落ち着け、フレイ⋯⋯俺のところに来たということはまさか例の事か?」
大悟はフュームが『シャイニー』に変身した事を知っている為、その事に関する話しだと察した。
「⋯⋯話しが早くて助かるわ。一体あの力はどのようなものか説明してくれるのよね?」
フュームは真剣な眼差しで大悟に『シャイニー』についての話しをするのだった。
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