その名はシャイニー
プロローグ
子供の頃をふと思い出すと、そこにはヒーローごっこをする親友の姿があった。
「ライダーパンチ!!」
「その程度か『サムライダー』」
大悟は親友の拳を掌で受け止める。
「まだまだぁ!!ライダーパンチ!!」
「無駄無駄ァ!!」
その拳も大悟は止めてしまう。
「えっ!?」
「今度はこっちから行くぜ!!ロックンロール!!」
大悟は親友の両手を止めた状態で頭突きを繰り出す。
「ちょっ!?⋯⋯うぐぅ!!」
当然、親友は両手が塞がってる上に思いっきり掴まれている為、避ける事はでかなかった。
「⋯⋯大悟!!酷いよ!!あんなの話しにはなかっただろ!!」
大悟と大悟の親友はヒーローごっこをしていたが、大悟のやった行動はアニメにはなかったのである。
「俺が敵役だったら、こうしたがな」
「大悟の意見は聞いてないよ!!」
「だって、それじゃつまらないだろ」
ちなみに、大悟がやってる役は『シュライダー』と呼ばれる序盤は、『サムライダー』の同期でありパートナーだが、中盤から敵に寝返る裏切り者であるが、そのアニメでは主人公の『サムライダー』を抑えての人気キャラである。
裏切った理由が、信じていた上官がヒーローを次々と殺す犯人だと知った『シュライダー』が上官の次のターゲットとしている相手が『サムライダー』なのを知り、その上官を殺すがタイミングが悪い事にその現場に『サムライダー』が鉢合わせ、そこで上官がやった事の真実を話し、腐り切ったヒーロー達を粛正する事を告げ敵に寝返るのだ。
ちなみにその上官が『サムライダー』を狙っていた事は話していない。
「俺を止めたいなら、お前が止めてみせろ」
という台詞が有名である。
大悟と大悟の親友は当時、その『シュライダー』が悪に染まったかと思っていたが、今なら分かる。
それが『シュライダー』の正義だったからだ。
ヒーローの数だけ、譲れない正義がある事を当時の大悟達は分からなかった。
「つまらないとかそういう問題じゃないよ。ちゃんとやって!!」
「やだよ。なんで、俺だけ一方的に殴られてやられてあげないといけないんだよ!!」
大悟は例え敵役でもやられるのはごめんだった。
「そんな事言って、『サムライダー』が『シュライダー』の返り討ちにあう所は嬉々として殴りかかって来てたじゃないか!!」
「ああ⋯⋯そういえば、そんなこともあったな。だからと言って大人しく殴られるのはな」
「それにあの時、手加減してって言ったよね!!」
「⋯⋯ゔっ!!」
過去の話しを蒸し返され大悟は分が悪かった。
「⋯⋯分かった。確かにそれは俺が悪かった」
「それじゃあ、やり直しね」
「お、おう⋯⋯」
その後、再び同じ事をして口論になり、お互いボロボロになるまで喧嘩したのはよく憶えている。
『⋯⋯随分と懐かしいものを見た気がするが』
大悟の傍らでは、ポイントで交換した寝袋にフレイが寝ている。
『さて、やっとあと半月といった所か⋯⋯』
王都プローシュまでは徒歩では一ヶ月くらいかかると言われており、王都プローシュまでゆっくり休憩を挟みながら向かっている。
その道中で魔物と戦った時に、【千里眼】というスキルのロックを解除したので早速取得した。
これで遠くの魔物や魔王の配下がしっかり見える訳だが、今のところ魔王の配下に出くわしてはいない。
そして、【千里眼】により魔物の奇襲が減ったのとこちらから奇襲出来るようになっている。
しかし、出来るようになってはいるがやってはいない。
フレイの【ファイアバレル】を使えば遠くから狙い撃てる。
フレイの【ファイアバレル】の射程は軽く一キロメートルはあり、風や重力などの影響がなければ更に距離が伸びる可能性もあるのだ。
それでも、奇襲をしないのは何回か囲まれてしまい苦戦を強いられた時にフレイの手を借りていたらフレイは戦いの中で成長してしまったのである。
フレイのスキルを確認したら【狙撃】というスキルが増えていたのだ。
このスキルはフレイの魔法の射程を伸ばす能力と【千里眼】の力を併せ持つスキルである。
その為、フレイも遠くの魔物などが見えてしまっている。
このスキルに気付いたのは、フレイが遠くの魔物を認識した事に大悟が気付いた事がきっかけである。
【スキル】を取得してから【ファイアバレル】の射程が倍くらい増えているのだ。
それでも、やらないのはフレイが戦う事は大悟としては本意ではないからである。
それでも、どうしても一人で対処するのが難しい状況があるのだ。
大悟はタイマンこそ、デュランを圧倒する程に強いが、多数相手の場合フレイを庇いながら戦うのは厳しいのだ。
むしろ、大多数の場合はフレイの方がいいのだ。
今はステッキから半透明の青と赤のグラデーションカラーの星が装飾された『ブレイズスター』と呼ばれる二つの指輪を右手と左手に一つずつ付けている。
この指輪をもらった時はフレイはたいそう喜んでいた。
ステッキを持っていた片方の手が空いた為、両手で【ファイアバレル】を撃てるようになっており、片手で【ファイアバレル】を撃ちながら、もう片方の手で【ファイアシュート】を撃てる為、多数相手でも臨機応変に対応出来るのだ。
一応、大悟はフレイに護身術を教えているが、まだまだ魔物や魔王の配下に使うには不安が残る腕だ。
大悟がフレイに護身術を教えているのは、フレイが大悟自身が体術のみで戦ってる事を疑問に思っていた。
「ねぇねぇ、大悟ってどうして武器を持たないの?」
「ヒーローと言えば、拳や蹴り技が王道だからだ」
このような質問をして来たので大悟は当然そう答えた。
その言葉を間に受けたのか、フレイは体術を教えて欲しいと言ってきたが、それを当然のように断ると教えてくれるまで寝袋で一人で寝ないと我儘を言うので渋々承諾したが、逆にヒーローを諦めさせるチャンスだと考えている。
「⋯⋯ん?んん!?」
大悟はフレイのスキルを確認してみると【身体活性】というスキルが増えていた。
【身体活性】は魔力で身体強化するスキルであった。
フレイにはヒーローになる事をを諦めさせる為に出来るか出来ないかギリギリの特訓メニューを出している。
最初から出来ない事をさせて、開き直られてこちらの魂胆を読まれたら後々面倒だからであった。
フレイはその過酷な特訓により、スキルを取得していたのだ。
そこでやっと、大悟は【ヒーロー覚醒】のスキルが如何にチートか理解する。
【ヒーロー覚醒】はただ呪いを解除する為のスキルではなかったのである。
『残り二回⋯⋯俺の予想ではこいつが魔王討伐の鍵になる』
大悟は残り二回の【ヒーロー覚醒】のスキルはかなり慎重に選ぶ必要があると考える。
その理由は、そのうちの一回をフレイに使っており、大悟はフレイを戦力と数える気がないからである。
そして、【ヒーロー覚醒】で変身出来るようになるかは本人次第なので、完全に運任せなのだ。
その博打とも呼べるスキルが、大悟の今後を左右する可能性があるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます