ヒーロー変身
大悟の元に弱りきりボロボロの幼女がやって来たと同時に集落の獣人達による幼女捜索が始まった。
「おいおい、なんかこっちに来てないか?」
雑木林に隠れている為、向こうからはこっちの姿は見えて無いはずである。
しかし、確実にこちらに向かって来ており、大悟はふと気付く。
姿を追ってるのではなく、臭いを追っているのだということだ。
この場合、奴らが狙っているのは目の前で気を失っている幼女しか有り得ないのである。
「畜生、あの数を相手にどこまでやれる」
大悟は考えるより先に身体が動いていた。
幼女の姿はまだ見えていないなら自分が何とかすれば良いと思ったからである。
「ニンゲン!?」
「コロセ!!コロセ!!」
パッと見で二十匹近くおり、先程の人狼や猪のような顔つきの奴までいる。
獣人達は大悟を認識すると同時に襲い掛かると大悟はもう一つのシュールストレミングを開けて獣人達に投げつける。
「ウゴッ!?」
「フグゥッ!?」
獣人達はその臭いに耐え切れず前方にいた数体は臭いにより失神したが、背後の獣人は失神は免れたが嗅覚が完全に潰されたようだった。
しかし、それでも残りで十体以上いるのである。
「ナンダ⋯⋯コレハ⋯⋯ハナガ⋯⋯」
「やはり、そう旨くはいかないか」
しかし、これで幼女の臭いを追えなくなったのである。
残った獣人達は大悟に襲い掛かるが大悟はなんとかその猛攻を掻い潜る。
投げ技を駆使して相手との距離を取ったり相手の攻撃を妨害したりしているのだ。
「ナンダ⋯⋯コノニンゲン⋯⋯」
獣人達は大悟に気圧されていた。
しかし、大悟からしてみれば決め手に欠けていた。
拳や蹴りの攻撃では効いてはいるが仕留められる気がしないのである。
確実に仕留める為には絞め技で首の骨をへし折るのが一番効果的であるが、数が多過ぎる為、絞め技に入られないのだ。
そして、時間をかけ過ぎた事もあり、失神していた獣人が起き始めたのである。
その為、状況的にはかなり悪い状況であった。
そして、更に悪いことが起きるのである。
「⋯⋯ん?」
気を失っていた幼女が立ち上がってしまった為に獣人に見つかってしまったのである。
「ミツケタ」
獣人は幼女を見つけると幼女を連れ去ろうとする。
「!!い、いや、来ないで⋯⋯」
しかし、大悟との距離が離れている事もあり大悟は幼女の状況が分からなかった。
「リーダーノモトニツレテイク」
「い、いや、いやーーーー!!」
獣人は幼女の腕を持ち上げると幼女は悲鳴を上げた時に大悟は、幼女に差し迫った危機に気付く。
「クソッ、邪魔だ!!」
幼女を助けようとするが、獣人達が大悟の行手を阻む。
焦る気持ちにより動きが雑になり獣人達の反撃を受けそうになる。
助けようにも近付けない状況である。
連れ去られようとしている幼女の唇が「た・す・け・て」と動くと大悟は勢いよく突っ込むが、棍棒によって吹き飛ばされる。
「畜生、何が世界最強のヒーローだ!!この世界の子供一人救えないで何が最強だ!!俺が目指したヒーローはそんなつまんねえもんじゃねえ。助けてという声に応える救いのヒーロー、それが俺の『セイヴァー』だ!!」
大悟が立ち上がると目の前『TRANSFORM』というアイコンが表示される。
「これが俺の正義だ!!」
大悟はアイコンに触れると大悟は光に包まれると『セイヴァー』に変身する。
「ナ、ナニガ!?」
獣人達は何が起きたか分からなかった。
「その子を離せ⋯⋯」
「!!」
獣人達はその圧倒的な圧力に怯んだ。
「オクスルナ!!コノカズニカテルニンゲンハイナイ!!」
獣人達は再び大悟こと『セイヴァー』に襲い掛かるが、首が吹き飛んだり、腹に風穴が空いたり、二十近くいた獣人達は一瞬で幼女を連れ去ろうとしている獣人以外既に息絶えていた。
「!?」
一瞬のことで獣人は何が起きたのか理解出来なかった。
大悟はこの『セイヴァー』の状態が如何に強いか理解した。
攻撃力やスピードもそうだが、大悟にしてみれば敵の動きがまるでスロー再生してるかのように見えているのである。
変身前とは桁外れに強くなっているのだ。
「その子を離せ⋯⋯」
再び大悟は幼女の事を離すように獣人に要求する。
「ヒッ⋯⋯」
その幼女を連れ去ろうとしていた獣人は失禁をしながら幼女を離しそのまま逃げ去った。
「大丈夫か?」
大悟は変身を解除して幼女に歩みよると幼女は安心したのか再び眠りについていた。
その後、集落では報告を受けた獣人のリーダーが激怒していた。
「それでおめおめと帰って来たのか!!」
獣人のリーダーは逃げ帰った獣人の頭を手の平で掴み持ち上げている。
「ア、アイツ、ツヨイ⋯⋯オウニホウコクヒツヨウ⋯⋯」
「まさか、人間如きにここまで追い込まれるとは⋯⋯これをボルトの所に、奴へ救援を要請する」
獣人のリーダーは獣人から手を離すと仲間に救援を要請を伝えるように命令する。
大悟がスクリーンをいじり『変身時身体強化』と『変身時物理半減』、『変身時アーマー強化』を取得していると幼女が目指める。
「やっと起きたか」
「⋯⋯あの怖い人達は?」
「追っ払ったからしばらくは大丈夫だろうが⋯⋯いつまでもここにいる訳にはいかんだろうな」
「そう⋯⋯あの、ありがとう」
幼女がそう言うと幼女の腹の虫が鳴る。
「これでも食え、味は保証しないがな」
大悟は幼女にランダムレーションで手に入れた缶詰を開けて渡す。
中身はコンビーフのようなものだった。
それを受け取ると幼女は勢いよくコンビーフを搔っ食らう。
「ほら、まだ食うか?」
幼女は首を縦に振り肯定する。
次の缶詰はうずらの卵入りのおでん缶であった。
ランダムレーションの中では当たりの部類であるが大悟としては温めて食べたかったのである。
「ふぅ、ご馳走さま」
なんだかんだでこの幼女は缶を5個開けた。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は大悟・W・ヴァインだ」
「私は、フレイ・オルケストだよ」
幼いながらもよく出来た娘である。
さぞ、両親からは愛情を持って育てられたのだろうと大悟は考えていた。
「なぁ、フレイ⋯⋯あの集落は今どういう状況なんだ?」
集落から逃げて来たフレイならあの集落の状況を知っており、もし生き残りがいるならば助け出さないとならなかった。
「⋯⋯村で一番大きな屋敷⋯⋯あそこに⋯⋯」
フレイの肩が震えている。
「⋯⋯悪かった。話したくないなら話さなくていい」
余程怖い目にあった為、思い出したくないのを理解し、大悟はこれ以上は追求しない事にした。
その前に目の前の幼女の着る服を探さないといけなかった。
スクリーンを開き何か交換できないか確認するが服などはなかった。
ポイントで交換できるのはランダムレーションと栄養ドリンクだけであった。
「仕方ない⋯⋯」
大悟は上着を脱ぎフレイに渡す。
「えっ?」
「そんなボロい布切れよりはマシだ。デカイが我慢してくれ」
フレイは大悟の上着を被るとやはり大きいようで腕の部分は手が出ておらず、足に至っては布の部分が地面についてしまっており歩きにくそうである。
「俺はあの集落に向かうが、お前はどうする?」
大悟としては集落の中は完全に敵地の中である為極力連れて行きたくはないが、ここにいても危険な事に変わりはないのでどうするかはフレイの意思に任せる事にした。
「⋯⋯一緒に行く!!」
大悟は集落に入ると案の定、獣人達が襲い掛かって来る。
しかし、『セイヴァー』に変身した彼の敵ではなかった。
次々と獣人を倒し集落の先へ進んで行くと大悟はとあるものを見つけてしまった。
「うっ⋯⋯」
大悟達の目の前には吊るされて焼かれた人間の死体や串刺しになって死んでいる死体があったからである。
大悟は必死に吐き気を堪えているのだった。
これが負けた者の末路だという現実をまざまざと突き付けられたようであった。
それでも大悟は先に進むと目の前に他の獣人とはひと回り大きな獣人がやって来る。
「外が煩いから出てみれば、てめえが話にあった人間か?⋯⋯ふざけた格好しやがって!!」
外の様子を見にこの集落の獣人を纏めるリーダーがやって来た。
「んん!?よく見ると逃げ出したガキもいるじゃねえか。大人しく捕まりに来たのか?そうだよな。てめえのようなガキを助ける奴なんてこの世にはもういないんだからよ」
獣人のリーダーはフレイを舐め回すように見詰める。
「⋯⋯いるもん」
フレイは怯えながらも答える。
「あ?」
「ここにいるもん!!」
フレイは震えながらも叫ぶ。
「まさか、そのふざけた格好をした人間がか⋯⋯うぐぅ!!」
獣人のリーダーの腹に『セイヴァー』の拳がめり込む。
「⋯⋯ふざけてるのはどっちだ?」
獣人のリーダーは腹を抱えながら口から食べたものを吐き出している。
「おええええ」
そして吐くものが真っ赤に染まっている。
「⋯⋯て、めえ!!」
獣人のリーダーは拳を振り下ろすが腕を掴まれ、顎を蹴り上げられる。
獣人の口の中は血塗れであり、牙が砕け抜け落ち、もはや何を喋っているのかすら分からない状態である。
獣人のリーダーは旗色が悪いのを理解したのか、部下を壁にして逃げ出すのだった。
当然、『セイヴァー』は一撃で沈めていくのである。
「⋯⋯逃したか」
追う事もできたが大悟の目的は集落の住民の安否を調べる事であった。
大悟は念の為に変身は解除せずに周囲を確認してから変身を解除して捕われてる住人達がいる屋敷を解放する。
その三日後の事である。
集落から逃げ出した獣人のリーダーことコボルは救援に向かっている仲間の獣人と合流した。
「ボルトサマ、コボルサマガイラシマシタ」
「⋯⋯連れて来い」
ボルトと呼ばれた獣人は、この状況でコボルがやって来た理由をなんとなく察していた。
コボルがボルトの前にやって来るとコボルが何かを言っているが、ボルトは何を話してるかすら分かっていなかった。
「⋯⋯つまり無様にやられて逃げて来たという事でいいんだな」
ボルトが拳を強く握り締める。
「【クレイガーデン】」
「!!」
ボルトが拳を高く掲げるとボルトを中心として地面が液状化していきコボルが沈んでいく。
コボルは必死にもがき出ようとするが底無しの泥沼はコボルを徐々に引きずり込んでいくのだった。
そして、コボルの全身が沈むと泥沼だった地面が元に戻り、コボルは跡形もなく地面の中に消え去ったのである。
「⋯⋯他の連中に伝えろ。敵前逃亡は命がないと思えとな」
ボルトは近くの獣人に伝えると部隊の先頭に向かって行った。
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