第四十五話 七海、出会った頃 2

 ベースね。

 ギターとどちらが難しいかは、何をどれだけやるかに依るから、一概には言えない。

 ただ、やるからには心機一転、楽器も変わって、そういえば新学期でもある。

 やって見せようという高校二年の私だった。

 良くも悪くも高校生だった私は……新しい楽器を持つ自分が楽しみで仕方がなかった気がする。


 

 もう少しネットで集めていたかった様子の夢呼。

 人手不足だから……日本ってそうね。

 まさか高校生のうちからそういうことやっていくとは思わなかったけれど。



高校ここで四人集まったのはすごいわね」


 制服の夢呼に向かい、振り返る。


「四人で?」


 おしゃべりなボーカルは私の疑問に答えようとして……。

 目を泳がせる。


「えっ四人……うん、四人だな! まあ、たぶん四人でバンドを組む羽目になる……と思うぞ! そんな顔するな、心配すんなや!」


 と、私の肩を叩く彼女。

 すごく曖昧な物言いで返された。

 夢呼の目は泳いでいるを通り越して残像を生み出している。


「えっ、人数に不安があるの、どういうこと……なんです?」


 敬語だった、一応……何しろリアル出会うのは二度目とか、そのころの記憶である。

 だ。

 そして、初対面の女子を警戒していた。

 どんな行動するのか読めない感が、既にあった。

 聞けば、どうやらメンバー募集は終わっていないということで。


「今いくつか募集をかけているから、明日あたり、どわっと返事が来て、九人になる可能性があるけれど、四人のバンドだ! 七海……あんたが、入ってくれればな!」


 距離が近い。

 九人は流石に激しい……。

 えっ、もしかして私じゃなくてもいいのかしら、と一抹いちまつの不安。

 不安はあって、けれど納得はしていた。

 私が特別じゃあないということは、知っていることだ。

 わかっていることだ。

 ただ、少数派ではあった。

 私は中学生のころ転校を経験していて、いまだにこの地域のところどころに、新鮮なものを感じる。

 ……兎にも角にも、今はメンバーだけど。

 地元の人たちと少しの温度差があった。

 

「……あ、もしもの時の欠員とかがあるから、そのためにまだ募集?」


「ああ、とうなルートで仕入れたっていうか、声掛けしているメンバーは九人だ」


 爽やかな笑顔の夢呼。

 ああ、真っ当じゃあないルートもあるということですね……わかりました。

 ずっと笑顔の夢呼ではあるけれど、彼女なりに数を求めているらしい、こなしているらしい……夢呼は、そんな人間には見えないけれど、でも。

 実はかなり必死で模索の最中らしい。


「愛花……あ~知らんかァ。 ホラうちのドラムだけど、あいつもあいつで駆けずり回ってるから、そのうち何とかなるでしょう!」


 夢呼が高笑いした。

 そのドラムスの家に、家出した真弓が駆け込んだのは、三日後のことだった。

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