#13

好孝の腕に引かれ家に帰ってくると、乱暴にベッドに押し倒された。

「好孝、痛いよ。」

「今は何も言わんで。」

ボソッと言うと、私の服を荒々しく脱がし始める。

「やだ!やめて好孝!」

「何でなん?さっきの奴とはそういう事してきたのに俺とは出来んって言うんか?」

「じゃあ好孝はどこの女と会ってたの!」

「!」

脱がそうとしていた手がぴたっと止まった。

「昨日好孝が誰と会ってたか、私見てたんだから。最近服に付いてる香水の香りも全部、全部!好孝は私以外の子とそういう事してないって胸張って言える?」

「そ、それは・・・・」

「否定もしてくれないんだね。私は好孝にとって都合の良い女でしかなかったんだね。絶対に離れるはずがないって。」

「杏子・・・・」

「私ばっかり好きになって、バカみたい。」

乱れた服を直し、部屋を出ようとすると後ろから抱き留められた。

「本当に俺はどうしようもない男や。前も杏子の事傷付けて。」

「好孝・・・」

「信じてくれとは偉そうに言えへん。でも杏子の事失いたくない。俺の事ひとりにせんで・・・?」


その言葉は昔の自信に満ちた言葉ではなく、他の女の香りが漂う、すがるような哀しい言葉。

「私に自信を持たせてくれて、本当にありがとう。」

好孝の腕から離れ、零れそうになる涙を堪えながら呟いた。

「杏子・・・」

「大好きだったよ、好孝。バイバイ。」


私の長い、長い片思いが、ゆっくりと幕が降りた。







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