#7

「一緒に暮らす?」

「そうや。もっとずっと一緒に居りたい。」

好孝はそういうと私の肩を抱いた。

「私、何も出来ないよ?料理も掃除も上手くないし。」

「そんなの、2人で協力すればええやろ?

俺も料理とか嫌いやないし。」

「でも私・・・」

「何が不安なんや?」

不安そうに俯く私を笑うように好孝がポンポンと頭を撫でた。

「俺が幸せにする。約束する。」

「好孝・・・・」

この人なら自信のない私ごと愛してくれる。

そう思ってた。


「・・・・・・・」

家に戻って数十分経つ。

向かい合わせに座って俯いたまま、好孝は私の様子を伺っている。そんな気がした。

「好孝、あのね」

「すまんかった!」

一言私が話し始めようとした時と同時に、好孝が急に立ち、床に土下座した。

「ちょっとやめてよ!好孝!」

急に土下座した好孝に駆け寄り、肩に手を添えると、情けない顔をした好孝が私を見つめた。

「好孝、なんで?」

「本当に言い訳にしかならん。たまたま家庭教師の会社の飲み会に居たんや。前に杏子から紹介してもらってたやろ?それで顔を覚えてて・・・・」

「そう・・・」

「こんな所で合うの奇遇やなってなって、それで・・・」

気まずそうに俯く好孝。

「・・・美加の方が明るいし、可愛いもんね。」

「杏子」

「ごめんね、好孝の重みになって。私荷物まとめるね。」

もうここには居られないと立ち上がろうとした時。


強く後ろから好孝に抱き締められた。

「好孝?」

「行かんといてくれ。俺は大バカ者や。

あの時、杏子とずっと一緒に居りたい言うたのに。こんな事して、杏子傷付けた。」

「・・・・」

「もう1度、俺にチャンスくれへんか?」


ダメ。この優しい声に応じては。

でも、もう一度この人の言葉を信じていいの?

私は、好孝を好きなままでいいの?


「好孝・・・・私も一緒に居たい。」

振り向くと同時に好孝の唇が私の唇と重なった。

「んっ・・・・好孝・・・・」

「愛してる、杏子。大好きやで。」


携帯が鳴ってる。きっと豪くんが心配してかけてきてくれてる。

豪くんからの着信を見ない振りして、私は好孝の腕の中に潜り込んだ。

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