#5

これは、夢?

目の前に悲しい顔をした好孝が立っている。

「杏子、ごめんな。」

「好孝、行かないで。私我慢出来るから。

だから、私の傍にいて。」

「幸せにな。」

私に背を向け、去っていく好孝。

「待って・・・・好孝!」


「杏子!」

「んっ・・・・」

目を醒めると、前には心配そうに見つめる豪くんが居た。

「ここは・・・・」

「俺の家だよ。」

「そっか・・・・。」

あの後、豪くんの家に泊めてもらう事になって、お風呂に入ってそのまま寝ちゃったんだっけ。

「ごめんね、昨日は・・・。」

「別に俺は大丈夫。」

私が笑みを浮かべると安心したように豪くんも笑みを浮かべた。

「とりあえず何か作るよ。といっても、簡単な物しか作れないけどな。」

「別に大丈夫だよ、そんな泊まらせてもらっただけでも、」

「俺がしたいだけだから。杏子はゆっくりしてて。」

豪くんは私の頭をポンと撫でると台所に向かった。


ふと携帯に目をやり、電源を入れる。

画面には好孝の着信でいっぱいだった。

無断で帰ってこなかったんだもん。もう後には戻れない。

でも、もしかしたら今でも私の帰りを待ってるかもしれない。


・・・・・もし、帰って好孝が居なかったら?

美加の元に行ってしまっていたら?


「杏子おまたせ・・・。」

気付けば私はまた涙を溢していた。

自分の不甲斐なさに嫌気がさす。

豪くんは何も言わず、目玉焼きとトーストを目の前に置いた。

「ごめん、ごめんね。面倒くさい女で・・・・やっぱり私家に帰る」

立ち上がろうとした私を豪くんが抱き締めた。



「豪くん。」

「・・・・俺じゃダメか。」

「え?」

「俺は、今の杏子の恋人よりも格好良くないかもしれない。

でも、俺は杏子を泣かせた奴に杏子を返したくない。絶対に俺は杏子を泣かせない。」

「豪くん・・・・・・。」

「こんなタイミングで言うはずじゃなかったんだけど、今だから言う。

・・・・・ずっと前から好きだった。俺が杏子を幸せにしたい。」

真っ直ぐな瞳が私を見つめていた。

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