第2話
真っ白になった視界が次に真夜中のように真っ暗になり、続いて真っ赤になった。
同時にもの凄い熱気が体中を
その時、
「ゴーッ」
という凄まじい音が自分の体を飲み込んでいくように聞こえ、我に返った僕は前の車両が燃え上がっているのをようやく認識できた。
瞬間、僕が乗っている車両にも引火し、前の座席に座っていた通勤客がパニックになって狂ったようにドアに向かっている姿が見えた。
「爆発だぁ!」
「キャー、やめてー!」
人々が狂気に満ちた顔で、われ先に出口に向かって殺到する。
僕もその波に
「早くドアを開けろー‼︎」
「死んじゃう!死んじゃう!」
「キャー‼︎あけてぇ!!!」
通学途中の女子高生の叫び声が、周りの音を
僕も自分が大変な事態に陥ったことをようやく感じて、ドアや窓を見渡し開いているところを探したが、すべての出口は塞がれ、車内は
その時、僕のコートの裾が強く引かれるのを感じた。
「おじさん、こっち!」
さっきお金を貸した少年だ。
次にその少年に手を引かれ、人々が群がるほうとは反対の方へ連れて行かれた。
ちょうど車両のつなぎ目のビニールの袋状の部分が破れ、大人が一人通れる位の亀裂が走っていた。
「ここ!」
少年は、僕に指示すると、まず自分がその亀裂に足先から飛び込んで、頭だけを覗かせ
「早く!」
と言って僕をせかし、飛び込むように指示した。
僕も言われるまま、その亀裂に足を突っ込み、下の線路を確かめてそこから脱出した。
幸いなことに車両が止まっていたのは河川敷に近い、ちょうど橋を通過した地点だった。少年のあとを追って、そのまま河川敷まで振り返ることなく必死で逃げた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「おじ……さん、だ、大丈夫?」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
日ごろの運動不足を恨んだ。
何か言葉を出したくても出ない。
ただ、少年の顔を見つめ息を荒げているしかなかった。
少し落ち着いたところで、ふと足元を見るとズボンの裾が焦げて、ナイロン製の靴下が少し溶けていることに気づいた。
くるぶしの辺りに血が滲んではいたが、それほどの
コートの裾は焦げてほつれていて、右袖も肘の辺りが破れていたが、幸いなことに鞄は肩から
自分の周りが安全であることを確かめられた時に、今逃げてきた方向が気になり目を移した。
200メートルほど先に車両の上に車両が覆いかぶさり、折れ曲がった電車が
すっーーー、はぁぁぁ
大きく深呼吸してようやく事態が飲み込めたが、次の瞬間ものすごい恐怖心と共に、体中が震えだした。
意思は冷静なのに体が勝手に震え、まったく悲しくもないのに涙が溢れてきた。
燃え盛る電車が涙で
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