悲劇の村

 カンカンカンカン!


 ドンドンドン!


「て、敵襲! 敵襲! 少将どの!」


 けたたましい鐘の音で、ドラグニアは飛び起きた。


「な、なんだ! 何があった!?」


「ほ、報告致します! 突然所属不明の大隊規模の部隊が現れ、村を襲撃しているとの事です!」


「なんだって! 何故だ! 一体どこの誰が」


「み、未確認情報ではありますが、その襲撃した大隊の中に我らエルサドル公国の鎧を纏った者が居た・・・との事です」


 ドラグニアは、最後まで聞く間もなく飛び出すと、村へ向かって全力で走った。

 

 くそっ! なぜこんな事に! 一体どこの部隊が? 侵攻は二日後のはずでは・・・まさか。


「ザミエルかっ!」


 もしも、昨日のザミエルの話の中にウソが織り交ぜられていたとしたら? 本当の襲撃予定は今日だったとしたら?


 頭に浮かんだ可能性を拭いさる為、ドラグニアはどんなに息が上がろうとも構わず走り続けた、暫くすると森を抜け視界が開け、目の前には信じられない光景が広がっていた。


「な、なんだこれは・・・」


 つい先ほどまで、レンガ作りの家々が立ち並び整備された道の先には小さな広場があったはずのこの場所が、地獄さながらの火の海に豹変していた。


「うあー!」


「た、助けてくれー!」


「誰か! 助けて!」


 村中に響き渡る悲鳴に、ドラグニアは言葉を失い立ち尽くした、


 昨日まで貧しいながらも幸せに満ち溢れていたはずのこの場所が、いつの日か一生を共に過ごそうと決めた友たちが、目の前で無残に虐殺されていく様に気が動転してしまっていた。


「おーう! これはこれは・・・ドラグニアちゃんじゃあないのー♪ 遅かったねー、あんまり来るのが遅いから、俺達が先に始めちゃったよ♪」


「きっさま! ザミエルっ!」


 ドラグニアは一瞬で状況を判断し、すぐさまザミエルの声のする方へ剣を振るべく反転しながら腰に手をかざした。


「ドラグニアー! お前っ! なんで!」


「・・・えっ」


 腰に当てた手を止め振り返ると、そこには農業用の鍬をドラグニアに向け怒りとも悲しみとも取れる叫びをあげるベネットの姿があった。

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