エルサドル公国②
「蒼星、大丈夫ですか?」
蒼星が考えを巡らせていると、目の前にエルサがひょこっと心配そうな顔を出してきた。
「・・・エルサも、女の子だよね?」
「な、何を失礼な! 私の何処が男性に見えるのですか? 蒼星の目は節穴です!」
エルサは憤慨した様子でスタスタと歩いて行ってしまった。
「い、いやごめん! そういう意味じゃないっていうか、エルサはすんごい女の子っぽいっていうか、その、普通に可愛いし」
「か、可愛い? そうですか? そ、そこまで言うなら許してあげます♪」
エルサは、機嫌を直したのか蒼星の所まで戻ってくると、ニコニコしながら出口を指さした。
「よしっ、行きましょう!」
・・・いやぁ、マジわからんわ女心、もはや一生分からん気しかしないから自動的に蒼星君は一生童貞です・・・グスン。
でも、もしエルサが『例の女の子』だったら? 彼女がドラグニアの行動の真実を知ることで救われるんだとしたら。
「俺は、帰れる?」
エルサの後ろ姿を見ながら、蒼星は今一度こぶしを握り締めた。
「それで? 蒼星はエルサドルの何処に行きたいのですか?」
「えっと・・・」
蒼星は鞄の中から、アイビスに渡されたメモを取り出した。
「えっと、国境から北に向かって少し行ったところにある、ネムという村にドラグニアの家族が住んでるはずなんだ、俺はドラグニアの家族に会って、彼の願いを伝えなきゃいけない」
「叔父様の・・・家族、そっか待ってる家族が居るんですね、じゃあ早く伝えないとですね! 叔父様が生きてるって事を」
エルサはほんの一瞬悲しげな表情を浮かべたが、またすぐにニコっと笑うとしっかりとした足取りで歩き始めた。
「・・・すごいな」
「ん? 何か言いましたか?」
「いや、何でもない」
「・・・そうですか♪」
彼女の足取りはなんだか頼もしくて、蒼星は心に浮かんだ言葉を、ついそのまま口に出していた。
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