蒼星の願い

「お疲れ様です、今戻り」

「大丈夫だったか!? け、怪我してないか? 何か変な事されなかったか!?」


「いや、お父さんかお前!」

「あ、うん、すまん取り乱した・・・すまん」


 執行科の部署に戻るなり、かなりの食い気味でリゲルが迫ってきた。


 いや怖い、怖いよこの人、なんか目が血走ってるよ!? どんだけ俺の事大好きなのよこの人、今夜辺り夜這いに来る可能性高いよこれ? 下着の色揃えとかなきゃ♪


「おや、蒼星君どうだった? あいつの様子は」


 蒼星が脳内でエグめのBL展開を繰り広げていると、いつから居たのかアイビスが軽薄な仕草で話しかけてきた。


「・・・はい・・・見えました、あの人の・・・魔人の本当の願いが」

「そうかい、それじゃあ・・・どうする?」


 アイビスは俯くと、少し悲しそうな表情を浮かべ蒼星に質問した。


「はい、俺はドラグニアの故郷に行き」

「ダメだ! お前何を言ってるんだ!」


 蒼星が言おうとしている事を察知したのか、リゲルはすごい剣幕でまくし立てた。


「分かってるのか? 今は同盟国とはいえまだまだ戦争の爪痕は残ってる、そんな場所に一人で行って、お前に一体なにが出来るっていうんだ!


  死刑囚の想いを出来る限り汲み取る・・・それが俺たちの仕事だよ、でも自分を危険に晒してまでやる事じゃない! そ、それに奴は・・・この国の人たちを何千人も」


「そこまでだよリゲル、それは言ってはいけない」


 アイビスはリゲルを制止すると、リゲルの頭に優しく手を添えた。


「言いたい事は分かるよ、でもダメだ、そこから先は蒼星君が決める事だよ?」

「でも・・・はい、わかりました」


 リゲルはまるで拗ねた子供の様な表情を浮かべると、落ち込んだ様子で自席についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る