第3話 「オラdpさ手に入れるだ」

 「さて、つまりdpってのを稼げと」


 ガチャを引くにも、機能拡張とやらにも、おそらくだが、この世界の通貨としても使うことになるだろう。

 これがないと何もできないということだ。

 何も。

 魔物がいるような世界では、イコールで死に繋がる。

 可及的速やかになんとかしなければいけない。

 dpを稼ぐための方法は、魔物とやらを討伐すればいいんだったか。


「けど、現時点で魔物退治なんて論外」


 武器もぇ、防具もぇ、魔法も勿論覚えてぇ。

 オラこんな夢、嫌だ。

 なんてね。


 どんな魔物がこの近くに居るかわからないが、都合よく雑魚しかいない、なんて甘い期待はしないほうが良いだろう。

 なんせ命がけなのだから。

 慎重になってなり過ぎるということはない。


「とすると、まず行うべきは……、トレードの確認だな」


 さっきのRead meの説明で気になる所があった。

 ドリームトレードのアプリを開いてみる。

 アプリ内のメニューは3つ。


 ・販売者設定

 ・購入者設定

 ・ヘルプ


 まずはヘルプだ。

 ちなみに僕はゲームとかでもまずきっちり説明書を読むタイプである。


『ドリームトレードのヘルプへようこそ!

 ここではドリームトレードアプリの使い方を説明します!

 皆さんが生き残るのに非常に重要なアプリの1つとなりますので、しっかり把握しておいてくださいね!』


 ……Read meと随分テンションが違う。

 別人が作成したのだろうか?

 もしくは、作ってるうちに楽しくなっちゃったとかだろうか。

 深夜テンションの可能性もある。


『販売者設定では、ドリームストレージ内に入っている武器や防具、雑貨の中から販売を行いたい物を設定してください! 誰に、何を、どれだけ売るかちゃんと決めようね! あ、そんで売値、つまり何dpで売りたいかの設定もここでできるよ。好きな数字を設定できるから、高く吹っかけてボロ儲けしちゃおうぜい!』


『んでんで、購入者設定のほうは買おうとしている人の設定ね! いわゆるお客さんだね! 誰から、何を、どれだけ、幾らで買うかを設定してね! お互いに一致した条件を設定してトレードを実行すれば売買成立だよ! 買った物は買った人のドリームストレージに直接送られるので、ちゃんと確認してね!』


『提示された金額に納得いかなかったり、そもそも所持dpが足りてなかったりすると契約不成立! またのお越しを~♪』


『で、ここまで読んでくれた貴方にお得情報! 販売者設定で相手方を誰も設定してない状態でトレードを実行すると、選択した品物をdpに直接変えることができるよ! ゲームみたいな言い方をすると、NPCのお店に売却する感じだね!』


『ただぁし! この場合、自分で好きに値段を決める事は勿論できないよ! その物の価値とかから自動的に金額が決まっちゃいます! 一応、金額を確認した後で本当にトレードを実行するかどうかの確認が出るから、しっかり判断してね! あ、あと現金をdpに変えると、日本円だと100円で1dp(端数切捨)になります! 厳しい条件でごめんね! これも全部*%!〇;}†☆+って奴が悪いんだ!!!』


 ボーっと違うことを考えていて読み飛ばしそうになったが、だいぶ重要なことが書いてあった。

 ずいぶん便利な機能のようだ。

 そして。


「この文字化けしてる部分は何者かの名前。それも、探索者の邪魔をする意思のある何者かだ」


 この文字列が出てくるのは2度目だ。

 本当にボス的存在がいるのかもしれない。

 しかし、ドルとかならどうなるんだろう。

 試してみたい気もするが生憎と円しか持っていない。


 ヘルプの文章も、もう終わりのようで後は目ぼしいことは書いていなかった。

 戻るボタンがあったのでそれを押し、ショップのメニューに戻ってくる。

 早速、このトレードアプリを試してみるとしよう。


 財布を取り出し、中身を机の上に並べる。

 全所持金、21,534円也。

 昨日財布に入っていた金額そのままだ。

 こんなことなら全財産下ろしとくんだった。


 ……ん?


「カード類がない!」


 クレジットカードも、免許証も、保険証まで消えている。

 正真正銘、現金しか持っていない状態だった。


「不要だから消された? それともこれも何かの妨害か?」


 考えても無いものはどうしようもない。

 さて、早速このお金をdpに換えるとしましょうか。

 まずはこの机の上の現金をストレージに入れないといけないのだな。

 ドリームトレードのヘルプには『ドリームストレージ内に入っている武器や防具、雑貨の中から……』と書かれていた。

 ということは、一度ドリームストレージに現金を収納するかなんかして、その後ドリームトレードで円をdpに換えられるようになる、と。

 

 いきなりやるべき事が多くて嫌になるが、疎かにするわけにはいかない。

 ドリームストレージのアプリを開き、またまたヘルプから読み出す。

 …。

 ……。

 ………。

 なんだ、結構簡単じゃないか。


 ドリームストレージアプリの収納というメニューを開くと、カメラが起動する。それで自分の所有物を写せば、ストレージ内に収納されるらしい。

 ちなみに出す時も、出したい品物を選んでからカメラで出したい場所を写せばいいようだ。


 机の上に広げた現金を、ストレージアプリから起動したカメラで写す。

 すると、僕の所持金達は跡形も無く消え去ってしまった。

 ストレージの中を確認すると、確かに21,534円の現金が収納されていた。 


 次に、ドリームトレードアプリの操作に移る。

 販売者設定でストレージの全額を、相手方には誰も設定せずに……、トレードを実行、と。

 ピコッという音とともに、画面に『取引完了』の文字が出てきた。


「これでdpになったんだよな……?」


 自分が所持しているdpの確認は、ドリームウォレットのアプリでするんだったか。

 このアプリのヘルプは、特に読む必要は無いだろう。

 ドリームウォレットの画面は簡素なものだった。




 【天禊 尊】

 dp 215



 これだけである。

 dp215とあるのが、僕の所持dpだな。

 現金21,534円が215dpに換金されたわけだ。

 レートはヘルプにあったとおり100円で1dpらしい。

 端数は切捨とあったので、34円はどこかへ行ってしまったのだろう。


 さてさて。

 このdpで何ができるのか。


 確認してみるとしましょうか。




**********




 ?????のナイトメア☆ガゼット


 第3回 『ドリームフォン』


 探索者に与えられた、悪夢の世界を生き抜く為の唯一の希望。

 ただし利用するのにdpと呼ばれる特殊な通貨が必要になるアプリもある様子。


 けち臭い話だけど、くれると言うんだから貰っておきましょうか。

 探索者の中には、怪しんで使わない人もいるようだけど。

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