第4話 「男は度胸。それって本当?」

 結論。

 ほとんど何もできません。


「なんの成果も得られませんでした……」


 いや、成果はあったか。

 こんな端金では、というより、端dp? では、あまり意味が無いことを理解できた。


 dpの使い道は大きく分けて2つ。ガチャと機能拡張だった。あとトレードにも使うことになるのだろうが、これは現状相手がいないので放置。

 しかし何をするにしても、足りない。圧倒的に所持dpが不足している。


 一つずつ確認していこう。


 まずはドリームガチャ。

 これもヘルプを熟読しておいた。理解はバッチリだ。

 おそらく、これがこの悪夢の世界で生き残る鍵になる、と思う。ような気がする。多分。

 この世界のガチャから出てくる景品には、8つのレア度というものが存在するらしい。


 弱い順から、バッド<コモン<アンコモン<ブロンズ<シルバー<ゴールド<プラチナ<レジェンドとなっていた。


 単純に考えれば、バッドというレア度の武器が一番弱く、レジェンドのレア度の武器が一番強いということだろう。

 さっさとレジェンドレアの武器でも手に入れたいところだが、レジェンドレアは普通のガチャではどうも出ないらしい。ヘルプにそう書いてあった。

 何か特別な入手方法でもあるのだろうか。


「まぁどうせ入手できるガチャがあったとしても、お高いんだろうしねぇ」


 そう言いながらガチャのアプリを開くと、出てくるガチャには3つのランクがある。

 

 バッド・コモン・アンコモンが出てくる1回100dpの【銅】ガチャ。

 アンコモン・ブロンズ・シルバーが出てくる1回1万dpの【銀】ガチャ。

 シルバー・ゴールド・プラチナが出てくる1回100万dpの【金】ガチャ。


 ちなみに10連ガチャも1つ存在する。

 総額1千万dpかかる【10連ダイヤ】ガチャだ。

 このガチャを選ぶと、1回分オマケがつくらしい。実質11連ガチャだな。

 だが、この10連ダイヤガチャには一つ大きな問題がある。排出される景品がレジェンドレアを除いた全てのレア度から抽選されるらしいのだ。

 要するに、銀ガチャなら最低でもアンコモン以上が出てくるし、金ガチャならシルバーレア以上が保障されている。

 しかしこの10連ダイヤガチャにはそれがない。1千万dpという高額でありながら、最低のバッドレアばかり10個出てくる可能性もあるのだ。なんと恐ろしい。


 ……誰が引くんだこんなもん。1千万dpもあれば普通に金ガチャを10回引くわ。

 1番価値の低い銅ガチャ(1回100dp)ですら、日本円に換算すれば1回1万円だ。物価が高くて嫌になる。

 今の所持dpなら、最低ランクの銅ガチャが2回引けることになるのだが……。


「……試しにやってみるか」


 男は度胸、と言うしな。

 記念すべき初ガチャに、気分も少し上がってくる。

 ガチャアプリの並んだメニューから銅ガチャを選び、画面を押す。


 と。


 100と描かれた銅貨が画面に表れた。

 ≪TOUCH≫と表示されたので、さらに画面を押す。

 すると、銅貨が縦に、ギザギザに割れていき、まばゆい光が放たれる……!


 光が収まって画面に現れたのは、2つの星のマークだった。

 すぐ近くでポンっと音がしたので振り向くと、さっきまではなかった木の棒が床に落ちていた。

 画面に目を戻す。


  rank   コモン(☆☆)

category  武器

  name  ひのきの棒


 と表示されていた。


「……しょ、初期装備っていったらコレだよな」


 うん。

 最初っから凄い武器とか期待してはいけない。

 どんな勇者もここから始まっていくものだ。多分。


「もう1回、もう1回。今度こそ……」


 再び銅ガチャに挑戦する。

 画面の中の銅貨が割れ、出てきたのは……。


 星1つ。


  rank   バッド(☆)

category  武器?

  name  バターナイフ


 ポンっという音と共に、バターナイフがひのきの棒の横に置かれていた。


「わーい、これでパンにバターが塗れるぞー♪ ……ってアホかぁ! どう考えても武器じゃねえよ! 武器?ってなんだよ武器?って! クエスチョンマークつけてんじゃねーよ!」


 思わず慣れないノリツッコミをしてしまうくらいのハズレだ。

 1回目のひのきの棒が当たりにすら思えてくる。


 そもそも銅ガチャなのだから、一番当たりでもアンコモン止まりなのだ。

 強い武器や魔法なんかを手に入れようと思うなら、もっと高額のガチャを引くしかない。

 と言っても、手持ちのdpはもう全て使ってしまったし……。


「何か価値のある物をもう一度トレードでdpに変換するしかないか。しかし、こんな職場の中に価値のある物なんて……」


 こんな書類まみれの机や椅子しかない職場にそんな価値のあるものなんてあるだろうか。


 「うん? 職場……?」


 いや待てよ?

 もしかしたらアレを換金できるかもしれない。


 閃きという程大したものでもないが、脳裏に一つ浮かんだ案がある。


「やってみる……か」


 男は度胸、と言うしな。

 何でも試してみるのさ。




**********




 ?????のナイトメア☆ガゼット


 第4回 『レア度』


 ドリームアプリの一つ、ドリームガチャから排出されるアイテムの強さを表したランク。

 現段階で判明しているレア度は、バッド、コモン、アンコモン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、そしてレジェンドの8種類となっている。


 但し、レジェンドレアは通常のガチャでは排出されないようね。ケチ臭いわ。 

 ちなみに。自慢じゃないけれど、ワタクシは既にレジェンドレアを一つ持っているのよ。フフン。

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