面倒くさがりやのマグロ、異世界へ行く
女神が間違って殺しただの、お詫びにスキルだ、異世界だとか言っているのだが、なにそれ?めんどい。というのが私の率直な気持ちである。
いや、異世界送りとか結構ですし、詫びもいらんので放っといてください。と伝えた所で、
いや、それだと貴方の魂は輪廻転生の輪から外れて魂が消滅する云々とか言いやがる。
今世の私がこんなんなんだ。来世の私もこんなんに違いない。むしろ、どうしてトドメをさされなかったの?と言われるだろう。
だから私は女神に言ってやったのだ。
あら、それ素敵じゃないの。むしろ歓迎よ。と。
そしたら女神がまたどうたらこうたら言うから面倒くさい。
結局この女は私をどうしても異世界送りにしないと気がすまないんだなこいつは、と思ったわけだ。
もしかしたらその魂の消滅でなんか面倒くさい事が発生するのかもしれない。多分彼女らにも面倒くさいのだろう。
じゃあ仕方がないね。
私は大人だから譲歩してやる事にした。仕方ないから異世界行ってやるよ。面倒くさいけど。
じゃあスキルどうする?今流行のスローライフ特化にする?それとも今も昔も根強い人気の俺ツエー?魔物や盾も良いわよ。
女神から提示されたのは全部面倒くさくなるやつの臭いがした。
「働かなくても食えるのあります?」
「働か…ない?えと、生産チートかしら」
私は首を横にふって言った。
「違う。人や……他者と接しない、食うのに困らない、引きこもり特化の。快適な家、豊富な娯楽。面倒な事が近寄らない。そんなの」
「あ~、そういう、そういう系ね…そう…えーと……本当にそれでいいの?今なら逆ハー放題よ」
「男より女の方が好き。可愛くないし。逆ハーとか正気かよ」
「あ、はい。そうですか……そうね。スローライフ系から……貴女の要求は1つ2つの付与では無理ね。全部は満たせないわ。だから優先順位を教えてちょうだい」
悩ましいな。これはかなりも悩ましいよ、うん。悩ましいな。
全部が全部必要なのだ。衣食住と鬱陶しい対人。いらないのは衣だけである。
……最悪洞穴に住めばいいか。
「食関連の生産チートと対人関係無効化で」
いきなりど真ん中かよ。
私の最初の異世界は人が行き交う広場のど真ん中であった。
突然に現れた私に驚く人もいたが、何もせず佇んでいれば興味も失うのか、それとも忙しい人なのか。再び歩きだして広場を去っていく。
私もこんな人の多い所にはいたくはないし、衛兵でも連れてこられれば困る。彼らに習って私も、取り敢えずは事が大きくなって面倒くさくなる前にこの広場から出る事にしよう。
とはいえこの街についても私は無知である。
取り敢えず移動しているものの、どこから外に出れるかなんて知らないのだ。
とはいえ大きな通りを歩けばこの城壁に囲まれた街の外に出れる出入り口の1つにたどりつけるだろう。
狙い目は商人である。もしくは戦士っぽい風貌の人。
心情的にはつけまわしたいのは幼女であるが、幼女は街の外には出ない悲しみ。
私はむさい男のケツを眺めながらついていくのだ。
途中、コレと決めた男が狭い道の方へ行くから、こいつは違うな、と。
で、新しい男のケツを探してまたついていく。
狭い路地であったり、商店だったり、民家であるから面倒くさい。
お前らさぁ、私の為にさっさと外へ行けよ。素直な気持ちである。
なんやかんやあったが、私はついにたどり着いたのだ。私は私を褒めてやりたい気持ちでいっぱいである。面倒くさがりやは1日1ターンしか行動出来ないというのに、頑張ったぞ私!
城壁で囲っているなら当然入退出の管理をしている敵がいる。
対しで私の対人力はマイナス値。しかも入った記録も、身分証もない。ないないで、これはいわばまさに桜を見る会の名簿なのであります!
まあ、対人関係スキルでどうしようも出来るんですけどね。
私は透明化して、門へと急ぐ。
わーい、でくちらぁ~。
透明化しないとアレだよ。人の後ろなんてついて歩ける筈ないじゃん、ていうね。
スキル:完全透明化。気配も影も息遣いも心拍数も完全シャットアウト!魔力検知も安心のスルー!まさに貴方は透明人間!衣類を着てても安心、地面と接地してても安心。ご都合ファジーセンサー搭載!
※ただし更衣室、入湯施設、不健全な店、場面、反社会的行為時等全ての場面で動作を保証するものではありません。
さて、早速街の外に出て見ればそこは道である。
この道を行けばどっかの街か国境につくのだろう。
という事はそこに私の理想郷はないのである。
というかどっかで地図とか地理の勉強をしてくれば良かった。
こういう時は冒険者ギルドだよな。何故かあるアレ。で、だいたい森があって奥深くはヤベー熊とか出て危険なんだよな。
取り敢えず私は今出たばかりの街へ戻る事にした。
空はすっかり夕焼け。
戻って冒険者ギルドを探すのに迷子。
地図等を探すのに冒険者ギルドを漁って時間を取られ、
また街の外に出るのに時間が掛かって大変ね。
ちなみに先程外に出た門ではない所に私はいますが、それは私が迷子になってようやくたどり着けたからであり、意思や目的があって違う出入り口を選択したわけではありません。
それと頭に叩き込んだ周辺の情報なんて忘れちまいましたぜ。へへへ。
透明化しようと疲れるのは疲れる。勿論魔物や畜生、盗賊に襲われる心配はないのだから寝心地が著しく悪い地べたで寝起きをしても問題はないが、疲労はとれない。
スキル:食チート。自分で消費する食事をノーコストで召喚出来る。このスキルにより召喚された食料、食材が入った物が他者に提供したと判断された場合、このスキルはスキル持主に死を提供する。このスキルを破棄、もしくは他者に譲渡、複製して贈与は出来ない。
そんなデンジャラスなスキルで出した熱々ビーフシチュー美味しいです。
誰も見てないから皿ペロペロも出来ちゃうんだぜ。
いや、もしさ、この食べ残しというのには微妙なのでもさ、野良犬ペロペロしちゃって、他者に提供したから死ね!なんてなったら怖いじゃん。洗剤とかで食べれなくすればそうではないと思うけど。
というか、一緒に出てきたこの皿どうしたらいいのよ。持っていくのには邪魔だし、置いてくのもアレだし。
あ、消えた。なるほど。食べ終わったと判断されたら食器は消えるのね。便利ね。
歩いて、疲れたら休んで、たまに盗賊や魔物に襲われている人を眺めながら食事やおやつタイム。
両者共にご苦労さまであります。
オデンを食いながら、やんごとなき身分のお嬢様(推測)と愉快な女騎士チーム対女騎士と互角どころか押している不思議に強い盗賊団の戦いを観戦していた。
勝敗も、もう盗賊団チームで決まりかな?そろそろお嬢様と盗賊団による屋外貴方って、最低のクズだわタイムかな、と期待しながら眺めていた。
が、流石は女騎士チーム。奥の手は隠し持っているものだと感心したね。
姫様が遠目から見てもわかるぐらいに震えたかと思うと、突然に姫様が着ていた御召し物が、姫様の膨張されたマッスルに耐えきれず、千切られおったわ。プリンセス(推測)
バルクアップつよい……
盗賊団をちぎってはなげの大活躍でひっくり返しおったわ。ちなみに盗賊団の腕がおでん鍋にゴールしたので、おでんを食べるのは止めて、おでんが送還されるのを待つ事にした。食チートに経験値が1ポイント入っていた。
ヘックシ!
雨は透明化でスルー出来ても、外気温はスルーしてくれない。
旅慣れてないのもあるし、意識してなかったのもあって、装備の準備を怠っていた私の身体は突然の土砂降りに参っていた。
近くに洞窟でもあれば、そこに入って雨風を凌ぎ、温かいものでも飲み食いしてれば良いのだろうが、そんな都合の良い物は見つからないが、森の奥に山が見える。
もう面倒くさくなった私はそこでも良いのでないか、と思い、寒さで身体を震わせながら森の中へと入っていった。
大きな木の下には既に雨宿りしている狼らがいる。
獣だろうと人だろうと近寄りたくはない。私は老若男女、大動物小動物区別する事なくコミュ障なのだ。近寄らないし、近寄ってくれるな。
雨宿り出来そうな木の下には先住民?がいて、他の木は雨宿りは出来そうにないどころか雨垂れでかえってヌレヌレになっちゃうよぉ!みたいな感じである。
ヤバい、頭痛い。風邪ヤバい。風邪じゃないかもしれないけどヤバい。
たまらずかけうどんを召喚するも、雨脚の強さに、かけうどんもうどんの水漬けへと変貌する。
あ、これ……わたしのぼうけんもこれまでだ、だわ……
知らない天井である。君はこの世の殆どの天井を知っていて、その上でそれを言ったのかい?と聞かれたら私は謝るしかない。
そもそも、そういう呟きじゃないのだけれども。
ここはどこだろうと辺りを見まわしてみれば、ここはどうやら知らない室内みたいである。君は室内をどれ程知った上でそう言ったのかい?と聞かれたら云々。
暖炉の前で、犬が私に被さる様に寝ていやがる。犬の口の下には涎の水溜りが……汚え。うっかり口に入ったらどう責任とってくれんだよこの犬畜生が!
と、
「あら、起きたのね。おはよう。体調はどう?」
扉の開閉音がした方に目をやれば、グラマーなお姉さんが入ってきながら私に言った。
「その子、重いでしょ。貴女を温めるって聞かなくて。ほら彼女起きたわよ。どいてあげなさい」
「……わふぅ……わふっ」
今起きたのか、起きていて彼女に促されたからか犬畜生はノソッと立ち上がっては暖炉の前で丸くなり再び眠りについたみたいだ。
ちなみにあの犬畜生が立ち上がった時、後ろ脚は私の腹の上にあり、とても痛かった。
「あ、あ、あの、ありがとうございます」
「お礼はあの子に言ってあげて。急に家の外に飛び出して行ってね、何をしてるんだろ、と思っていたら、泥だらけの貴女を引きずってきてね、2人とも泥だらけじゃないのって」
何が可笑しいのかお姉さんは笑うが、人が雨の中を、泥だらけなんだぞ、何がおかしいんだコラ、と言いたい気持ちはあったが私は大人なのでグッと堪える。
「しかしまぁ、どうして貴女はこんな所に?わけありな感じ?そうだとしたら、お姉さん困っちゃうわ、なんて事はないわね。大丈夫よ」
「あ、いえ、その、ただ、ぶらっと?人がいない所を、はい」
「へー、何それ。あー、人付き合いに難ありな。わかる。わかるわ、面倒くさいものね」
同士!でもお姉さんはコミュ障じゃない感じ!敵!
「だったら一緒に住む?あ、もちろん嫌だったら良いけど。私も人付き合い嫌でここにいるんだけど、最近なんだか寂しくなっちゃってね」
ん、寂しい?寂しいんか?へへへ、本当に寂しいのは下なんやろ。恋しがっちゃってるんやろ、好き物そうな顔してるもんな姉ちゃん。イヤらしい身体しおってほんまに。
「どちらにするにせよ、とりあえず雨がやむまではいなさいな。その間、私の話相手になってちょうだい。ね、いいでしょ」
「あ、はい。わかりました、とりあえず、お、お世話になります。よろしくお願いします」
「本当!やったぁ」
「あ、あの、私、床で寝ますんで」
「何言ってるの。お客様を差し置いて私がベッドで寝れるわけないでしょ。ベッドは1つ。でも2人。じゃあ一緒に寝るしかないじゃない。女同士だし、問題ないわ」
や、やめてくれ。そんな素敵なの、私緊張して寝れなくなっちゃうわ!
「ほら、おいでおいで。はやくはやく」
今は異世界に住んでるお父さんお母さん。元気ですか?私は元気です。貴方達の不出来な娘は今宵異世界で初めてのお泊りをします。ガールズトーク?パジャマパーティー?それ系で。
「あ、お、お邪魔、します」
いそいそとお姉さんの布団に入ると、ムワッと良い香りが漂ってきて、同性だと言うのに私はそれにムラッと来て、どうして違うのだろうと私は悲しく思います。父さん母さん、どうして私は娘なのでしょうか?息子だったら良かったです。
「ふふっ、いらっしゃ~い。あ、灯りは消すわよ」
彼女はベッド脇の燭台に息を吹きかけると部屋は闇に包まれる。耳に聞こえるは静かな呼吸音と私の鼓動の音。
それは興奮からではなく、緊張による。
どれほどの時が経過したのかは時計もない暗闇の中ではわかりよう筈がない。
しかし、仮に5分であろうと1時間であろうとどちらでも良い話なのだ。もう少ししたら眠れるかもしれない。もう少ししたらこの雰囲気に慣れるかもしれない。けどイマハ目は冴えてしまっているし、空気は経験値が足りない私にはしんどい。
口も喉も乾くのは緊張の為。唾液を少し貯めて、音が立たない様にと飲み込む。だってなんだか恥ずかしいから。
「緊張してる?可愛いわね」
え?可愛い?
「あの子もいい拾い物してきてくれたわ」
そう言いながら、彼女の手が私の胸を弄る。
「ふふ、寂しいの。下が。この好き物そうでイヤらしい身体付きで、私、恋しがっちゃってるのよ」
あっ……
「せ~いか~い。よーくわかったわね。お姉さん、貴女に花丸あげちゃう!」
「ど、どうして?」
「私ね、実はサキュバスなの。でも好きなのは女の子で、男って可愛くないじゃない。幼いうちはまだ許容出来ても成体になると本当ね。だから里から追い出されちゃって」
いや、あ、サキュバス?サキュバスなら、当たり前なのか?
「じゃあ他のサキュバスと同じく女の子専門で街に入れば良いじゃない、なんて思うでしょ?でもまぁ、サキュバスとしては異端だから行く街行く街でつくづくサキュバス仲間から排斥されちゃってね、どうしようもなくてここで住んでるんだけど、お姉さん嬉しいわ。お仲間が来てくれて」
「あ、あの、でも私、自分より幼い娘が好き、だから、されるより、攻める方が好きだから、仲間だけど、仲間じゃない的な」
「そうね。確かに私と貴女は仲間ね。だから嬉しいわ。私お姉さん、貴女私の好み。ね」
あっ……
異世界のお父さんお母さん。恥ずかしながら貴方達の不出来な娘は今夜、大人の階段を登らされます。
お父さん、お母さん。お元気でしょうか?私は元気です。
天井の染みは5つまでは数えれました。後は数えれませんでした。
あと天井の染みを数えてる内に終わるというのは嘘だという事も付け加えさせていただきます。
あと女神さま。貴女様を悩ませて頂いだスキルですが、お姉様のおかげで不要になりました。その点は大変申し訳なく思います。
が、貴女様のおかげで素敵なお姉様に飼って貰える事になったので御礼申し上げます。
素敵な異世界をありがとうございました。
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