亀の歩み

 きっとそれは魂を揺さぶったのかもしれない。


 私は君の魂を揺さぶる物の存在について、何も知らない。君は何に魂を揺さぶられるのだろうか。もしかしたら君にはその様な存在が無いのかもしれないし、私だけがそれを所持しているのかもしれない。

 君がそれを求めているのかも知らないし、求めていないのかもしれない。もし私がそれを所持していて、与えれる物だったとしたら私に君のその熱意を伝えて欲しい。

 私はそれを分け与えるかもしれないし、そうしないかもしれない。

 君の熱意が目に見えて溢れるばかりに漏れ出しているのだとしたら私は譲るだろう。けれども君の熱意は自身の胸の中で熱く燃え滾らせているのだったら私は難色を示す。

 自身の熱意という数値化できないそれを自身に秘めているのならば、私は評価出来ないから、せめて偽りでもいいから目に見せて欲しい。


 とは言うものの、私もまた熱意、情熱等をパッション、ここではパッションと言うが、私もまたパッションは自身の胸の中に秘めすタイプなのだ。

 で、あるからして目に見えるパッションだけが評価されるのはおかしいと思うが、とはいえ他者のパッションを評価するにはパッションを表面に出して貰わないと評価しようがないわけである。

 私にもお気に入りの嬢はいる。ただ容姿と身体付きが好みであったというだけの。

 私に対して特にサービスも愛想が良いわけでもない仏頂面な癖に、それでも何時も彼女を指名する私を彼女はどう思っているのだろうか。

 おそらくはおかしな客であろう。少し不気味程度で済んでくれてれば嬉しいところだ。

 別に私のパッションは彼女でなければパッションされないというわけではない。言ってしまえば左手でもパッションはパッションされるのだ。

 けど左手パッションではパッションにあまりパッションしないという側面もある。

 このパッションは一人用パッションより2人でパッションし、商売は商売として、でも彼女のパッションもちょっとはパッションし、互いにパッションをパッション出来れば良いパッションを彼女とセッション出来たと嬉しく思い、より深みあるパッションを料金分満喫出来たと思えるのだ。


 私は君が何にパッションを感じるのかは知らない。

 けど私は見つけたのである。


 きっかけは偶然であった、と言いたいが私の中のロマンチストな部分は必然の偶然であったと言いたがっている。

 クサいと他者から揶揄されるかもしれないが、そう表現したい気持ちは強い。けれども私のつまらない理性はそれを押し止めるのだ。

 素直な感情というのを素直に表現する事が幼児と言われるのならば大人と社会というのは窮屈であり、人間というのは面倒くさいものだ。

 野生の生き物の群れも案外と人と似たような窮屈な社会で構成されているのかもしれないのだが、私は人である。だからそうなのかもしれないね、という想像でしかないのは悲しい事だ。


 私はタバコをきらしていた。

 昨今の喫煙者への風当たりも厳しい中、それに負けぬよう喫煙に励んでいたわけであるが、その日は何か嫌な事でもあった気がする。嫌な事はさっさと忘れるに限るのだ。不貞寝して起きたら薄れている。だからさっさと寝よう。

 タバコをきらした原因はその嫌な事が起きた事により、ついついタバコに手が伸びてしまいペース配分を間違えてしまったのだろう。

 無ければ無いで済まして、我慢して寝ればいいのかもしれないが、そこは喫煙者の性である。脳はニコチンにやられている。脳はニコチンを欲している。ニコチンを供給せねばならない私はニコチン奴隷だ。

 ニコチン奴隷である私は寒さが厳しくなってきた夜空の下、寒さに身を狭めながら近所のコンビニへと歩いて向かったのである。

 そして私は遂に、皆さんお待ちかねの、異世界転移をし、ついさっき帰ってきたのである。


 長々と語ったが、結局の所はよくあるなろう小説を私は異世界でしてきたよ、というそれだけの話だ。

 

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