◆第2章-1◆「裏アカ」発見~共働きスタイリストKISAKIの苦悩と復讐~
愛理はともりーなの力を借りることで、以前から憧れている共働きライフスタイリストのKISAKIの生活を覗きに来た。「見たい人の生活を見る」ことで、努との穏やかな生活を取り戻すヒントが見つかるかもと思ったのだ。
ともりーなによって妖精の格好にされてしまって戸惑う愛理だが、共働き生活で疲れた心は、KISAKIの生活を見れると分かって久しぶりに心踊っていた。その一方で人間に戻れるかの不安は残る。
愛理「ねえ、本当に元の姿に戻れるんでしょうね」
ともりーな「大丈夫! 時間がきたらちゃんと戻れるよ(*´∪`) それより、妖精になった気分はどう♪」
愛理「私も妖精になったら通勤とか楽だろうなー」
ともりーな「私、通勤したことないからよく分かんない(*´∪`)はい、KISAKIさんのお家着いたよー」
その家は、高級住宅街の中でも際立っていた。外壁が大理石でできており、バラがたくさん咲いている。子どもが遊ぶ庭もあり、池には錦鯉も泳いでいる。
愛理「ああ、本当に素敵なお家だわ。KISAKIさんすごくない? 平日は会社に勤めながら子どもを育てて、土日のどっちかは自宅で共働きライフスタイリングのセミナーを開いてるんだよ!」
ともりーなと愛理はドアをすり抜けてリビングの方に向かった。すると「ごきげんよう」という声が口々に聞こえてきた。20名ほどの女性がそれぞれ挨拶をしている。
「はい、みなさん!今日も宜しくお願いいたします」
そう言った女性は、長い黒髪をストレートにまとめ、ホワイトカラーのタイトなワンピースを着こなしている。KISAKIが背筋をピンと伸ばして立っていた。
ともりーな「すごーい!めっちゃきれい。写真よりきれい! モデルさんみたい」
愛理「雑誌の表紙も飾ったこともあったしね。しかも旦那さんも経営者だから、どっちも仕事をがんばってるんだよね。これが理想の共働き夫婦よ。KISAKIさん素敵!」
憧れのKISAKIを目の前にして、愛理は心の声がすべて外に出ていた。KISAKIのセミナーには、これから共働きが始まる、もしくは共働き生活をより自分らしくスタイリッシュにしたい女性が集まっている。
KISAKI「さー、みなさん!自分が思う理想のライフスタイルは描けましたね。あとはその目標に向かってto doリストをつくって、効率よく実行していくだけです。人は他人に宣言をするとやらざるを得なくなりますから、今日のセミナーの様子もSNSにアップすると行動したくなりますね。今日も午後の時間がたっぷりあるので、明日からの一週間の準備ができます。ちなみに私はこの後は息子のお弁当を作る予定です♪」
参加者A「よくインスタにアップしているあのキャラ弁ですか??」
KISAKI「そうです!あれにすると息子が残さず食べてくれて嬉しいんですよ」
参加者B「いいなー!うちの娘はブロッコリー食べないんですよね~」
KISAKI「ブロッコリーはヘアスタイルに使うと楽しいかもですね(笑)」
参加者C「発想の転換がすごい!でも、キャラ弁ってとても時間かかりそうですよね?」
KISAKI「意外とそんなこともないんですよ。手順を定めれば簡単にできちゃいます。今度キャラ弁セミナーもしましょうか?」
参加者D「え、絶対参加します!リクエストしたいキャラもあります!」
KISAKI「何でも作れるわけじゃないのよ(笑)!」
参加者E「えーKISAKIさんなら作れそう!お家もこんなにきれいだし、モデルルームみたい!私ここに住みたいです(笑)」
KISAKI「民泊ビジネスでも立ち上げちゃおうかしら♪」
ともりーな「キャラ弁ってなーに?」
愛理「アンパンマンとかスヌーピーとか、そういうのね。キャラの顔になるように具材を置いたりして、キャラクターのお弁当をつくるのよ。そうすると子どもが喜んで食べるの」
ともりーな「すごーい!私も作ってもらいたい♪」
愛理「セミナーに参加するといいわね(笑)。でもセミナーの後にキャラ弁つくるって、どこまでも努力家よね」
セミナーは2時間ほどで終わった。女性たちは、また「ごきげんよう」と言いながら、帰っていく。KISAKIは、笑顔で一人ひとりにお辞儀をして玄関先まで出て見送った。
KISAKI「はあ、疲れた」
ついさっきまでの笑顔は消え、無言でキッチンに向かった。そこに、一人の男の子が小走りに彼女に近づいてきた。
ゆうと「ママー遊ぼうよー」
KISAKI「ほら、ゆうと。いま明日のお弁当をつくってるからちょっと待ってて」
ゆうと「お弁当つくり終わったら遊んでくれるの?」
KISAKI「だめよ、ママはトレーニングしに走りに行くからね」
そう言いながら、彼女はダイニングテーブルに今できたばかりのキャラ弁を置いた。
ゆうと「嫌だよー!パパだって朝からいないんだよ!」
KISAKI「ちょっと!写真撮ってるんだから揺らさないで!(カシャ)」
ゆうと「いやだ、一緒に遊ぼうよ!」
KISAKI「youtube見てていいから待っててね。ほら、そこのiPad取って」
ゆうと「・・・うん」
KISAKI「うん、いい子ね。じゃー私は走ってくるから、お留守番しててね。男の子だからできるでしょ?1時間くらいで帰ってくるから」
ゆうと「・・・水溜りボンド見てる」
10分後、KISAKIはジャージに着替え、足早に玄関から出ていった。
愛理「え、ゆうと君かわいそう。お父さんも仕事なのかー。てかKISAKIさん、朝じゃなくて午後に走ることもあるのかな。インスタだと毎朝7時くらいにランニング姿でアップしてたから。ほら」
愛理はスマホでKISAKIの投稿をともりーなに見せた。
KISAKIインスタ「今朝も二子玉川の景色は最高!早朝のスタバで一息なう♪」
ともりーな「あ、それね!予約投稿すれば、今撮った写真を明日の朝にアップすることができるんだよ」
愛理「え、そうなんだ!よく知ってるね」
ともりーな「すごいでしょ~!インスタに広告出せちゃうくらいだもん♪それぐらい知ってるよ~(*´罒`*)」
愛理「意外とビジネス感覚あるのね(笑)。なんか、暇になったなぁ…せっかくだからお家の中見ちゃおう」
愛理とともりーなは、KISAKIの家を探検した。5つ口のオール電化のコンロに、フランスパンも焼けそうな業務用オーブン。なんでも砕くことができそうなミキサーもある。主婦なら誰でも憧れそうな調理器具がもれなく置かれている。しかもリビングは30名来ても十分な広さがあり、アロマの香りが漂っている。
愛理「リビングもダイニングも素敵! KISAKIさんのお部屋にも行ってみたいわ」
ともりーな「うんうん、行ってみよう~」
その時、ガチャっと音がした。探検は中止である。
KISAKI「ただいま」
彼女がリビングに向かうと、ゆうと君はソファで寝息を立てていた。KISAKIは、優しくゆうとをおぶって、寝室に連れて行った。そして、パソコンを持って再びリビングに現れた。
ともりーな「わーKISAKIさん、今からお仕事するのかな」
そう言って、二人はKISAKIのパソコンをのぞいた。
ともりーな「あれ、インスタ開いているよ?」
愛理「なにかアップするのかな」
二人はドキドキしながら、インスタを見つめた。ふと、愛理はあることに気がついた。
愛理「いつものアカウントと違うよ、これ。アイコンもドクロだし『キサミ』って誰のこと?フォロワーも0だし」
KISAKIの背中は、ゆうとをおぶっていた時の背中ではない。何か取り憑かれたような、追いつめられたような緊迫した空気に支配されていた。そして、彼女はインスタに何かを書き始めた。
※明日は「◆第2章-2◆「裏アカ」発見~共働きスタイリストKISAKIの苦悩と復讐~
」をアップします!憧れのKISAKIさんの裏アカ『キサミ』誕生秘話が暴かれちゃう(っ `-´ c)暴いてるの私と愛理ちゃんだけどー(*´罒`*)
おもしろかったらぜひ★をくださいね(*´∪`)レビューは全部読ませていただいて、100%お返事いたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます