◆第2章-2◆「裏アカ」発見~共働きスタイリストKISAKIの苦悩と復讐~

「仕事も家事も育児も完ぺきにこなす」。そう信じていたKISAKIの家庭には冷たい隙間風が吹いていた。裏アカウント『キサミ』が誕生した理由が明らかになる。


愛理「ねえ、インスタってさ、パソコンから普通は書けないんだけど…。アプリ駆使して書けるようにしたみたい」

ともりーな「ITリテラシーが高いってことね!?」

愛理「・・・あなた、幸せそうね(笑)」


「ダンダン!!!!」


 愛理とともりーなは、びっくりして音がする方を振り返った。KISAKIがキーボードを叩き始めたのだった。


キサミ「私は私でいてやる。夫なんかいなくても幸せなんだ。仕事も子育ても家事も、全部完ぺきにこなして、あんな若いだけの女のもとに行ったことを後悔させてやる。幸せが最大の復讐よ」


愛理「誰の話?あいつ?若い女?」

ともりーな「ちょっとさかのぼってみる?」

愛理「あなた、時間を巻き戻すこともできるの!?」

ともりーな「妖精だからね♪空間と時間を行き来できちゃうの」

愛理「さらっとすごいこと言わないでよ(笑)。でも、知りたい」

ともりーな「えーとね。3年前の2016年1月からこのキサミアカウントはあるみたい。過去の投稿を見てみよっか(っ `-´ c)」

愛理「それなら、私のスマホからでも確認できるわね」


 こうして二人が見たのは、思いもよらぬ投稿だった。


キサミ「やっぱりあの女の家にいたんだ。『シンガポール出張で年始は帰らない』とか言ってたけど、嘘だったのね。あんな女の何がいいの?大してきれいじゃないし、ああいうタイプは30過ぎたら崩れるのよ。仕事だってちゃんとしてるんだか分かったもんじゃない。私は違う。もっときれいになって、仕事でも成功する。ゆうとだって、私ひとりで立派に育てられるんだから。明日から朝6時に起きてランニング、お弁当づくり、ゆうとを保育園に送る。これくらいできるわ。それから事業計画書つくって、ビジネスも始めるわよ。女は一人でこそ輝くってことを見せてやる。家も大改造して、セミナーができる形にしよう。それには集客のためのブランドが必要だから、まずは出版ね」


愛理「確か、2016年の8月に本がベストセラーになっているのよ。私さ、KISAKIさんのサイン本持ってるよ。それで知ったんだから」

ともりーな「KISAKIさん、有言実行したんだね」

愛理「でもそのきっかけとなったのは、旦那さんの…浮気ってことだよね」


 KISAKIの原動力は夫への復讐だったのだ。


 それから、KISAKIは、ゆうとのご飯を作り、お風呂に入れ、寝かしつけた。すべて一人で。


愛理「なんだかKISAKIさん、寂しそう」

ともりーな「とってもがんばり屋さんだよね」


 二人は、KISAKIの様子をずっと見続けた。愛理にとって憧れのKISAKIは、ランニングから帰ってきてから一度も笑顔になることはなかった。


 その時、ガチャッと玄関でドアが開く音がした。


愛理「・・・。あ、旦那さんかな」


KISAKI夫「(無言で自室に入ろうとする)」


KISAKI「ちょっと! 一緒に写真撮っていい?インスタにアップしたいの」

KISAKI夫「あー、はい」

KISAKI「(カシャ)はい、ありがと」


 夫は、一瞬カメラの前で笑顔になっただけで、さっさと自分の部屋に戻っていった。


KISAKI「『夫の帰宅―!これから一緒にリビングで約束していた映画を見ます♪』っと」


 愛理のスマホにKISAKIの投稿のお知らせが届いた。


愛理「ねえ、旦那さんと映画見ないでしょ、この流れ」

ともりーな「旦那さんどこ行っちゃうのー?KISAKIさんが探してるよ!」


ともりーなは、はばたきながらKISAKIの夫の後ろを飛んでいった。


ともりーな「ありゃ、寝ちゃってる。お風呂も入らないみたい。お仕事お疲れ様ー♪」

愛理「何この状況?KISAKIさんは仕事も家事も育児もしてるのに、旦那さん何してるのよ?」

ともりーな「お仕事遅くまでがんばってるんじゃないのかな?」


 愛理は、キサキ名義のインスタを思い出した。


愛理「いやいや、絶対に女でしょ。共働きって、何・・・でも不思議じゃない?KISAKIさん、モデルみたいにきれいだし、家もめっちゃ掃除してるし、ゆうと君にも毎日お弁当作ってるし。完璧じゃん」


ともりーな「私もファンになっちゃいそう(*´∪`)あ、そろそろ時間!戻らなきゃ!」

愛理「え、タイムリミットとかあるの??」

ともりーな「特にないんだけど、私が疲れ過ぎると魔法が切れて、愛理ちゃんの姿がみんなに見えちゃうよ(*´罒`*)」

愛理「大ピンチじゃん!」

ともりーな「妖精はすぐ疲れちゃうから優しくしてね( ・ ・̥ ) 戻るよ!ともりーな♪」

愛理「『妖精だから』って使いすぎ(笑)!」


※明日はコラムをお届けします!妖精「ともりーな」が楽に家事をしている「ラクニスト」の先輩たちにインタビューしてきた内容です。コラム第2弾は「部屋の掃除編」です。お楽しみに!


おもしろかったらぜひ★をくださいね(*´∪`)レビューは全部読ませていただいて、100%お返事いたします!

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