第6話――よーし、見てろよ!
食事を済ませたカズヤは、例によって不思議なデジカメのモニターに『ミステリー研究会』の倉庫を出して見詰めた。
顔を上げると、そこは倉庫の中だった。
出ていくと、ちょうど副会長のナナミと新部員のレナが入ってきた。
「おっ、おッはー」
「おはようございます……」
「おはようございます。会長、えらく早いですね」
「まーねー」
「ところで会長、新宿区の近代博物館で、明日から世界宝石展があるの知ってます?」
「いや、知らないけど……」
「そこで、百億円の価値のあるミステリールビーが、特別に展示されるとか。興味ないんですか?」
「へー……。それは興味あるね……」
「普通のより、かなり大きいとか……」
「それから来週の例会なんですけど……年末でバタバタしてるんで……来年の新年会に回すのってダメですか?」
「おー、そう。別にいいよ。じゃ、講義があるから……」
カズヤは、出ていった。
その夕方、バイトから帰宅したカズヤは、さっそくネットでミステリールビーを検索してみた。
が、秘密の部分が多いせいか、詳細は不明だった。
仕方なく、新宿区の国立近代博物館を調べてみた。
「時間は9時から17時までか……。楽勝かも……」
どうやって盗むかのプランを立て始めた。
翌朝、カズヤは不思議なデジカメを使って、まずJR新宿駅近くのトイレへ移動した。
そして、東京第一銀行とは反対の方向にある国立近代博物館へ向かった。
「最初は入館料を払うしか仕方ないな……」
カズヤは大勢の女性客と共に入館した。彼女たちは一斉にエレベーターへ向かったが、彼は階段を選んだ。
お目当ての展示会場は三階の特別会場で、ミステリールビーは、最も奥に展示してあった。スポットライトに照らされ、二重のカバーで守られ、ガードマンが二人も付いている状態だった。
(しかし……閉館後は、ガードマンもいなくなるだろう……)
と考えたカズヤは、その会場の端の光景を不思議なデジカメで撮影すると、博物館を後にして大学へ向かった。
午後から受けたい講義があったからだ。
夕方になって帰宅したカズヤは、6時頃にコンビニ弁当を食べると、テレビを見ながら時間をつぶした。
テレビのニュース番組では、ミステリールビーの件を取り上げていた。
「あのルビーが、今晩中に無くなるなんて、誰も考えてないだろうな……」
缶コーヒーをグイッと飲んだ。
「実行タイムは、晩いほどいいからな……」
そして10時になると、カズヤは黒い服装になり、不思議なデジカメを手にした。
後ろのモニターに、さっき撮ってきた会場の端の画像を出して、見詰めた。
スーッと周りが暗くなり、彼はその場所にいた。
振り向くと、シーンとした暗い会場の特設コーナーで、ミステリールビーだけが、スポットライトに照らされている。
「おー、ちょうどいい……。真っ暗だと分かりにくい……。やっぱりガードマンはいないな……」
素早く、その方に走り、マジマジとミステリールビーを見ると、
「隙間は無いかな……」
台の下を小型ライトで照らしながら調べ、上のカバーとの間に隙間があるのを見つけた。
早速バッグから工具を出し、自分の手が入る程度に広げ、片手を突っ込んだ。ミステリールビーを掴みながら、不思議なデジカメを出した。
その時、会場のドアの方から、
「おい! 誰だ! 何をしてるんだ。そこを動くなよ!」
警備員らしき男が駆け付けながら、太い柱の向こうを通過した直後「あれ?」と言って足を止めた。
「ど、何処へ……? 確かに、あそこにいたのに……」
特設コーナーにいたカズヤの姿は、ミステリールビーと共に消えていた。
その頃、自宅に現れたカズヤは、手にミステリールビーを持っていた。
「ざまーみろー。やっちゃったもんねー。いただいたもんねー」
ミステリールビーをテーブルに置き、
「こんなのには別に、興味は無いんだけどね……。面白いからさ……」
ベッドに横になった。
その頃、博物館の警備室では、その時の様子をモニターで確認していたが、
さっきの警備員が大きな柱の向こう側を通過した瞬間、モニター全体に酷いノイズが入っていた。
そしてノイズが消えると、特設コーナーの男はルビーと一緒に消えていたのだ。
さっきの警備員は、
「ルビーの方はともかく、いったいどういう事ですかね……?」
「ともかくルビーの方は、レプリカだったから良かったが……。どうやったのか……まったく分からないね……」
主任は苦笑し、溜め息をついた。
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