第5話――ホッホッホー!やったねー
翌朝、カズヤが目覚めてテレビをつけると、昨夜のマンション火災で彼が助けた赤ん坊の母親が、インタビューに答えて、
「どんな方法か分かりません。が、この街に住んでおられる方だと思います、私の宝物の赤ちゃんを助けてくださいまして、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げた。
カズヤはテレビを消し、
「ほんの気紛れさ……」
キッチンに立つと、シナモントーストを作り、コーヒーをいれ、食べながら、
「さー今度は、現ナマを狙うぜー」
そして通学の準備をすると、不思議なデジカメを出し、先日、伊川村から帰った時に撮っておいた、帝華大学の『ミステリー研究会』の倉庫を出して見詰めた。
一瞬にして、その場所に移動したカズヤは、
「こういう通学は多分、僕だけだろうな……」
不思議なデジカメをバッグに入れ、悠々と最初の講義に向かった。
午後の最後の講義の後、バイト先のK出版社へ向かうため、近くのトイレの個室に入ると、不思議なデジカメのモニターに、あらかじめ撮っておいた大学前駅のトイレの画像を出し、見詰めた。
瞬時にしてカズヤは、そのトイレの個室に移動し、JR新宿駅へ向かう電車に乗った。
JR新宿駅に着いた彼は、その駅から見える公園のトイレを不思議なデジカメで撮った。
「こうしておけば、大学から直で新宿まで来れるもんね。これで、不思議ネットワークが出来た訳さ」
すぐにトイレへ行き、不思議なデジカメを使って、その公園のトイレに移動すると、K出版社へ向かった。
その夕方、バイトから帰ったカズヤは、いつものコンビニ弁当を食べてから、
東京都の地図を開いた。
「やっぱり大きい本店がいいだろうな……。となると、やっぱり新宿だろうな……」
新宿区には、日本一との評判の高い、東京第一銀行の本店があったからだ。
「ここの地下金庫なら、現金がタップリ眠ってる。さーて、どうするかな……」
と言いながらも、プランは決まっていた。
幸い明日の講義は、午後からだった。
翌朝、カズヤは、用意した物をバッグに入れると、不思議なデジカメのモニターに、JR新宿駅近くのトイレの画像を出して見詰めた。
直後、彼の体は、そのトイレに立っていた。
「さー始めるか。令和ルパンの登場だ!」
開店前の東京第一銀行本店にやってきたカズヤは、通用口に向かった。
何人かの行員らしい男女が、シークレットキーを解除して入っていくのを見ていた。
やがて到着した、か弱そうな若い女子行員が、キーを解除してドアを開けた瞬間、マスクを着けたカズヤは突進し、彼女を押し退けて中に入ると、地下へ向かった。
悲鳴を上げた彼女は「賊が侵入しましたー」とインターフォンで知らせた。
カズヤが大急ぎで地下まで駆け下りると、ちょうど金庫室があり、大金庫への入金の最中だった。
カズヤは、とりあえず不思議なデジカメで適当な所を撮った。上から、警備員らしい複数の靴音が近付いていた。
彼は、そこの行員たちが分からないように近付いていった。
その時、入金が完了し、大金庫の扉が閉まり出した瞬間、カズヤはその中へ飛び込んだ。
そこへ到着した数人の警備員と、行員の何人かが、慌てて大金庫に駆け寄ろうとした。が、係長は笑いながら、
「待て待て! 慌てなくても大丈夫。明朝になれば悠々と逮捕できるじゃないか」
「なるほど……」
「バカな奴だ、まったく……」
警備員と行員たちは、笑いながら部屋を後にした。
その頃カズヤは、用意してきた大きな四枚の袋を出すと、周りをライトで照らした。そして山脈のように積まれた現金を、それぞれの袋一杯に詰め込んでいった。
「とりあえず、こんなんでいいだろう……」
すぐに不思議なデジカメを出すと、モニターに自宅の画像を出して見詰めた。
空気が一変して雑音が聞こえ、カズヤは自宅に帰った。掴んでいた四つの袋もあった。
「ホッホッホー! やったぞー! 大金持ちだー!」
彼はベッドで大の字になった。
「そうそう、食事して大学へ行かないと……」
キッチンに向かった。
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