第4話――ふむふむ、えへへへ
その夕方、カズヤは帰宅すると、
「もう一発、確認してやろう……」
まず自宅の奥の部屋を、不思議なデジカメで撮った。
そして、すぐに近くのスーパーへ向かった。
「さーて、上手くいけば……えへへへ、だな……」
ニヤニヤしながら入店すると、お客はまずまずの混みようだった。
通常の買い物カゴを持ち、いつも買う商品を複数個、入れてから、
「今日は特別に……」
と特選品のしゃぶしゃぶ肉をカゴに入れた。
「とりあえず、こんなモンでいいだろう……」
かなり満杯になった買い物カゴを持って『関係者以外立入禁止』とあるドアを素早く開けて、中へ入った。
幸い誰の姿もなかった。
その頃、警備室では、防犯カメラでその様子を確認したため、売り場の関係者に指示したところだった。
一方、カズヤは防犯カメラが無いことを確認すると、すぐに不思議なデジカメを出し、買い物カゴをしっかり握りながら、モニターに自宅の画像を出して見詰めた。
売り場から、そのドアに向かった警備員は、
「まったくバカなヤツだな……。このドアから行ったって……」
と、ドアを開けたが誰もいないので、呆然としながら無線で報告した。
報告を受けた主任も呆然として、
「いったい……どういう事だ……?」
その頃、自宅に戻ったカズヤは、買い物カゴを前にして、
「キャッホー! 凄い凄い! このデジカメさえあれば、何でも手に入るじゃーん」
さっそく、特選しゃぶしゃぶ肉による、独り祝いを始めた。
腹を満たしたカズヤが、そろそろ寝るか……とベッドに入ろうとした時、サイレが聞こえてきた。
「ん? なーんか近そうだな……」
とカーテンを開けると、少し離れたマンションの上層階で、火災が起きていた。
窓を開けると、かすかに……
『子供がいるのー! 誰か助けてー!』
という女性の声が聞こえた気がした。
彼は「よし、僕が!」と不思議なデジカメを持って、自宅を飛び出した。
マンションまで駆けつけると、無数のヤジ馬が火元の部屋を見上げていた。
その中に、さつきの声を発した中年の女性もいたが、彼女の話によると、コンビニまで買い物に行って、帰ってみると、出火していたらしい。
彼は素早く裏へ回ると、そこにある駐輪場の光景を撮った。
数台の消防車も消火活動をしようとしているが、道が狭いためにハシゴ車が入れないようだった。
カズヤは、マンションから少し離れると、不思議なデジカメのズームを使って、その室内を撮った。
すぐに画像を出して見詰めた。
ようやくハシゴ車が到着した時、その部屋は全焼状態だった。
消火が完了し、放心状態の母親がカギを開け、隊員と共に入った時、ベビーベッドの上に壁が崩れていた。
母親は半狂乱になって、その壁を取り除いたが、赤ん坊はいなかった。
その時、隊員の無線が鳴り、
『赤ん坊は裏の駐輪場にいるぞ』
自宅に戻ったカズヤはベッドで横になると、笑いながら、
「あー……参った参った……。けど、こういう事もしないと、ゲジカメに嫌われそうだからな……」
そのまま彼は、今やってきた事を振り返った。
不思議なデジカメを使って彼が移った部屋の傍に、ベビーベッドがあり、赤ん坊が寝ていた。
「おー、ラッキー。この子だな……」
部屋は、そうとう燃えていた。
さらに良く見ると、玄関ドアのカギは開いてなかったのだ。
カズヤは、すぐに赤ん坊を毛布で包んで抱くと、不思議なデジカメにさっき撮った駐輪場を出して見詰めた。
すぐに駐輪場に着いたカズヤは、そのまま赤ん坊を陰に置いてから、立ち去っていったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます