第7話
密かに大地の乙女ソフィーのもとを訪れたのは、国王ハドソンだった。
ハドソンは華美な服装を控え、付き添う者も護衛の近衛騎士二人と侍従長一人だけに抑え、大地の乙女に悪印象を与えないように配慮していた。
本来なら謁見の間に大地の乙女を呼び出し、自分は上位者として遅れて謁見の間に入る予定だったのが、王太子の失態で出来なくなってしまったのだ。
「大地の乙女様。
国王陛下の侍従長を務めるフリーマンでございます。
国王陛下が内々で相談したいことがあるそうです。
ここを開けて頂けませんか?」
クロエが怒りを宿した瞳でソフィーに視線を送り、何を望んでいるのか確認をしたが、その手は腰の剣にかけられていて、命あれば国王ですら斬り殺す決意であるのが一目瞭然だった。
それはポーカーフェイスで室内を移動するカミラも同じだった。
来客を迎える居間を素早く移動し、ドアを開けてテラス付きのソフィーの寝室に入って、誰も潜んでいないのか確認した。
更にテラスに通じるドアの施錠を確認し、アイコンタクトでクロエに安全だとしらせた。
「聞こえておられますか?
大地の乙女様。
国王陛下が内々で相談したいことがあると、お忍びでこられておられます。
ここを開けて頂けませんか?」
ソフィー達が返事をしないので、侍従長が再び声をかけてきた。
「信用できないな。
王太子が大地の乙女様を侮辱した上に、卑劣にも罠に嵌めて御命を奪おうとした!
大地の乙女様は怒っておられる。
いや、大地の乙女様だけではなく、精霊様も怒っておられる。
激怒しておられるのだ!
目通りは不可能だ」
クロエはアイコンタクトでソフィーの意志を確認し、突き放した返事をした。
相手が侍従長である以上、ソフィーが直接話すわけにはいかない。
会話をするにも格と言うのもがある。
侍従長で男爵位しか得ていない相手にソフィーが直接返事をすると、ソフィーもその程度の格式となってしまう。
王がそのような心算で侍従長に話しかけさせたのではないと言うことは、直ぐに判明した。
王が直接話しかけてきたのだ。
「大地の乙女殿。
ネイサンの失態はいかようにも謝ろう。
だから精霊様に怒りを鎮めるように言ってくれないか?
王家と大地の乙女が敵対していると言う評判が立てば、国内の貴族達が不安を感じてしまう。
いや、それだけではすまない。
隣国も野心に駆られて攻めてくるかもしれないのだ」
王の話を聞いて、クロエは再びソフィーに視線を送った。
王太子や貴族達に怒りは感じていたが、戦争が起これば多くの民が徴兵されたり増税されたりして、塗炭の苦しみを味合うことになる。
大地の乙女様に再確認しないわけにはいかなかったのだ。
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