第6話

次の日。

班決めが昨日終わったため、今日はバスの席決めからだ。りょうたと話せるかも、、、そんな事を考え、先生の説明の最中なのににやけてしまう。自分でも気持ち悪い。

「じゃあ、話し合いを始めてくださいね。」

担任の先生の優しい声で、私達は動き出す。

「真里!こっち!」

うちの班がどこに集まれば良いのかわかんなくて、オロオロしていたらりょうたが声を掛けてくれた。

「ありがとう!」

お礼の気持ちを込めて満面の笑みを送っておく。

「あぁ、、、」

りょうたが真っ赤になっているけど、何かあったのかな?休み時間に告白されたとか?さっと血の気が引いた。

「顔赤いけどなんかあった??」

「え?あ、いや!これはなんというか別に、、、大丈夫だから!!」

おかしい。告白かな、、、付き合うのかな。私は気持ちが暗くなっていくのを感じた。

「あーら、真里?山神と、名前呼びし合ってるの?昨日は苗字だったのに、随分と熱々じゃない。もしかしてなんかあったの?」

いずの笑みが怖い。そういえば報告してなかった。相当怒ってるみたいだ。どう言い訳しようかと考えていると、りょうたが口を開いた。

「いや、これはちょっと違って、、、」

うん。わかってるよ。別に私になにか特別な感情があってやったんじゃないんだよね?わざわざ言わなくても良いのに、、、心に針が刺さったような痛みが走る。

「わかってるわよ。大丈夫!真里をよろしくね。真里鈍感だから多分大変だよー」

いずがなんかそんなようなことをりょうたに言っていた気がするけど、きっと聞き間違いだよね。鈍感ってなんのことかわかんないもん。

「なーに面白そうな事してるの??」

雷都くんが話に入ってきた。りょうたが答える。

「なんでもねぇよ、、、」

「そっか?じゃあ本題だけど、バス席どうする?」

雷都くんが言った時には、なるみちゃんも晴人くんも集まってきていた。

「んー誰かいい案ある?」

いずが、そう言いながら私に向かってニヤニヤし始める。今、りょうたを誘えってことなんだろう。でも班メンバーが見てるしそんな恥知らずなこと出来ない。私はそんな思いを込めて俯く。

「私、男子と組んでもいいよ?」

なるみちゃんがそんな事を言い出した。すると、いずが

「いいの?ありがとう!!」

と言い始めた。え?どういうこと?私のこと応援してくれるって言ってた、よね?裏切りに6年生の時のことを思い出し、辛くなる。続いて雷都くんや晴人くんも口々に

「いいんじゃない?」

「女子はそれでいいと思う」

と言う。このままだとやばいってことくらいは私にも分かった。勇気を出そうと思うけどいざ口を開こうとすると無理になってしまう。

「じゃあ男子は?」

あーぁ。もう男子の話になってしまった。焦るけど、やっぱり無理だ。すると雷都くんがニコッとして

「諒太で、いいんじゃないかな?」

晴人くんも

「うん、それで決まりだよね」

このままだと、なるみちゃんとりょうたが隣の席になってしまう。最悪のパターン。嫉妬は醜いってわかってるけど、いやだと思ってしまう。

「、、、真里、これで決まりでいいの?」

いずがこそっと囁いてくる。言いわけ、ない。思い切って口を開く。

「私、、、あの、、、えっと、、、」

肝心の「りょうたと隣になりたい」が出てこない。途中でこんなのはわがままじゃないかと思ってしまってからはますます何にも言えなくなった。すると

「オレ、意義があるんだけどいい?」

りょうたが言い出した。どうしたんだろ。何かあったのかな??

「うん、良いわよ?」

いずがりょうたに向かって不敵に笑うのが見える。とっても可愛い。はぁ、これでりょうたにいずと座りたいとか言いだされたら失恋確定だ。失恋を覚悟して、りょうたを見つめる。

「オレ隣に座りたい人がいるんだけど」

うわ。予想的中?思わず顔をしかめる。あーもうダメだな。この恋。失恋しましたー私。そう思っていると。

「真里ちゃんだよね??」

ニヤッとした晴人くんが、衝撃発言。りょうたを見ると、顔真っ赤だ。手で顔を覆い隠しているけど、バレバレだ。顔赤いのは、なんでかわかんないけど、慌ててるみたいだ。

「そ、そうだよ、、、ッ」

りょうた、これ以上ないくらい真っ赤になってしまった。大丈夫かな、、、?え、っていうかええ?!私?!ほんと?!えええ??!

「ええ?!ほんと?!」

ちょっとどころじゃなく声が大きくなってしまった。りょうたを見つめる。

「ほんと。オレ、真里と隣がいいなって思ってて。昨日一緒に帰った時に言うつもりだったんだけど言えなかった、、、」

嬉しいよ。嬉しい。私のことちょっとは良いって思ってくれてるって事だもんね。

「真里、山神がこう言ってるけど、どう?」

いずが聞いてくる。やっぱり私にも言わせるつもりみたい。苦笑いしてしまう。

「うん、私もりょうたと隣になりたい!嬉しいよ、ありがとう!」

嬉しすぎて本音を全て言ってしまった。ほんとにこのままだと好きな人バレる。

りょうたが私を驚いた顔で見下ろしてくるので、私は笑顔でりょうたを見上げる。

「いいの?オレで?」

「うん!逆に私でいいの?って感じだよ」

りょうたがふっと崩れるように笑った。きゅんってして、わたしはこの人が好きなんだ、って思っちゃう。破壊力抜群だ。やめてほしい。

結局私たちが笑いあってるうちに他のメンバーの席は決まったみたいだ。

雷都くんと晴人くんが隣で、その後ろに私たち、さらにその後ろにいずとなるみちゃん、という感じになった。


その時間の後。私は、いずに呼び出されていた。

「あのさ、真里。わかってる?」

「うん。ごめん今まで言わなくて。私りょうたのことすごく好きなの。」

「そっちじゃない。ってか、それは知ってる。」

「ごめん。私、昨日りょうたに誘われて一緒に帰った。」

「あとは?」

いずは、怒ると逆に静かになる。それが凄く怖い。

「うん。ごめんなさい。私、りょうたに言われて名前呼びすることにした。」

「そっか。今素直に謝ってくれたから許してあげる。でも、ほんとにそれ以外してない?」

「う、うん。それ以外なんて、してないよ?正直に言ったもん」

「ほんと?キスとかされてない??」

キス、という単語に顔が赤くなるのが分かってしまう。

「されてないよ!多分これからもされないから大丈夫、、、」

言ってて悲しくなる。

「なに言ってんの。絶対これから1ヶ月後までにはされてるから。私の見立てによると早くて1週間後だね。だからなんか進展あったり他のやつになんかされたりしたらちゃんとあたしに言ってね?」

いずに初めて凄まれた。めっちゃ怖い。冷酷でほんとに悪魔みたい!!いず悪魔を想像すると笑えてくる。

「うん。大丈夫!絶対言うから!」

何気なくしたこの約束が真里にとって悪い意味で沢山活躍する事になるとは、真里は全く思っていなかった。

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