第4話
朝からずっと考えているけど、もちろん良い誘い文句の1つも浮かんでこない。そうこうしているうちに、噂の時間がやってきた。
「じゃあ、これから班決めをする!男女3人ずつの6人班が行動班になる。生活班は、行動班で一緒になった人とは同じになれないから注意するように!じゃあ適当に決めちゃってね!」
担任の先生がかっこよく仕切る。みんなは、早速一緒になりたい人とくっつき始めた。いずがこっちに来るのがわかる。
「真里!ほらほら、どうするの?男子がこっちに来るよ?」
そんなの分かってる。でも、半分くらいはいずのお客様のはずだ。いずは、調子に乗って私に全部任せる気のようだ。ほんと、いい加減にしてほしい。
「真里ちゃん、オレたちと同じ班にならない?」
「いや、悪いな。清水は俺と組む!」
男子たちが言い合いを始めてしまう。もうやめてほしい。いずは、見守る態勢に入っていていて手伝ってくれなさそうだ。思い切って、言うことにする。
「あの!私、、、」
山神くんと一緒がいいんです!そんな事、言えるはずない。なんて言おうかな。私は直前で言う言葉がわからなくなってなにも言えなくなってしまった。
「俺と組むもんな?清水?」
「いやいや、山里と清水なんて組み合わせ、俺たちとしか釣り合い取れねえよ!な?」
「いやいやいや、もう決まってるんだ!山里はオレと組む、ってな!」
あー、、、もうだめだ。収拾がつかない。大変だぁー。私は、もう泣きかける。その時。
「あ?なんだオマエら。清水は、、、オレと組むんだよ!なんか文句あんの?」
一際目立つ声が聞こえた。この声、、、もしかして山神くん?!顔を上げると、そこには私を優しく見つめる王子様のような山神くんがいた。
「な?清水??組むって言ってたよな?」
最後は心配そうに聞く山神くん。せっかく助けてくれたんだから、ここは是非とも乗っておかないと行けないよね!そんな建前を胸に、真里は笑顔で答えた。
「うん。私、山神くんと約束しちゃってるから、、、ごめんなさい。」
山神くんは少し驚いた顔をしている。そんな顔してたら、嘘だってばれちゃうじゃん。そんな文句は、照れ隠しだ。
「そうか、、、じゃあ仕方ないな。また今度な!」
1人の男子がそう言ったのを境にみんなはぞろぞろと引き上げていく。いずがようやくこっちに来てくれて、
「やったじゃん」
と囁いてくれた。うん。やったよ私。心の中で思う。まぁ、誘われたのをそのまんまオーケーしただけなんだけどね。それでも嬉しい。私が喜びに浸っているうちに生活班と行動班の他のメンバーは決まり、行動班は私といずと林なるみちゃんと山神くん、高崎雷都くんと川崎晴人くんに決まった。雷都くんは犬系男子ですごく愛嬌のある素直な子だ。晴人くんは、山神くんと同じサッカー部でスタメンだったかな?どちらも凄くイケメンでモテると噂されているキラキラ人だ。私とは人種が違う。生活班は、佐々木結衣ちゃんという入学式で話しかけてくれた子と同じになれた。凄く良い班で、なんだか申し訳ない気分になってくるけど、、、良いんだよね??
そのあとの休み時間のこと。私は、いずと私の席で話していた。すると、
「おい、、、ちょっと」
と言われたのだ。その声の主は、山神くん。え??なに??へ??私が混乱していると、いずは目をキラッとさせて
「真里でしょ?どうぞどうぞ」
って言って去って行ってしまった。
残された私と山神くん。え?本当に私であってるの?いずじゃなく?私の思いを他所に、
「清水、、、こっち、来て」
私は廊下に連れ出されてしまった。廊下には人がいっぱいいたけれど、私たちが出てきたのを見るとささっと教室に戻っていった。それを見た山神くんは、
「クッソ、、、アイツら」
と呟いて照れ臭そうにしながら私の方に向いた。笑顔に真里はドキドキしてしまった。
「えっと、、、無理矢理班に誘っちゃってごめんな。大丈夫だったか??」
優しいね。むしろ大歓迎だよ。
「うん!ありがとう。沢山の人がいて困ってたんだ。あそこで山神くんが声をかけてくれてよかった。」
山神くんの顔が、少し赤くなったように思えた。
「全然、、、あのさ。今日、一緒に帰んねえかなと思って。」
私は衝撃発言にびっくりする。ええええ?!私だけで良いの?大丈夫かな?!もちろん帰れるなら帰りたい。けど今日は私は掃除当番なのだ。
「えっと、、、今日は掃除当番だから、、」
待っててほしいなんて言えないよね。図々しい奴って思われちゃう。
「今日は止めようか、、、?」
山神くんは少し悲しそう。
「えっと、えっと、、、別に帰っても良いんだけど。掃除当番で遅くなっちゃうから」
精一杯気持ちを込めて言った。すると山神くんは何を思ったのか軽く頷いて
「それなら大丈夫。引き留めてごめんな。じゃあ」
と言って素早く教室に戻っていってしまった。大丈夫って、やっぱ待ってくれないんだよね。欲深い私は、どうしても待ってて欲しいと思ってしまう。その時、
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ってしまった。私は急いで教室に入り、先生を待った。
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