2063/05/10 Sat.(2)

 掲示板を改めて見直すと、画面の左下に『アーカイブ』ボタンがあった。ボタンをタップすると、書き込み履歴の一覧が表示されたが、残念なことにそれぞれの項目をタップしてもパスワードを求められ、開くことができなかった。


 無題 2062/05/18-08:05

 無題 2062/05/31-16:10

 無題 2061/05/17-18:55

 無題 2061/05/31-17:55

 無題 2060/05/17-19:05

 無題 2060/05/24-20:40

 無題 2060/05/31-16:30


タイトルは全て『無題』で過去三年分、計7件の書き込みがあった。奇妙なことに全て5月の書き込みだった。何か重要なことが書かれてありそうだったが、如何せん、パスワードがわからないので陸にはどうしようもなかった。


 アーカイブボタンの右側には、プロフィールボタンがあり、押すと自分のプロフィールと自己紹介文が表示された。タブレットの画面を見てそれまで堅かった陸の表情が和らいだ。


『岩嵜陸といいます。好きな食べ物はカレーで、公園で過ごすのが好きです。彼女はいません。よろしくお願いします』


「好きな食べ物がカレーって。全然アピールになってねー」


あまりに子どもっぽい文章に思わず笑みがこぼれた。結局、分かったことは自分の好きな物がカレーと公園ということだけだった。ただ、自分にも過去があるということが分かっただけでも少し前進したような気がした。

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