高校生になりました
4月、俺・
4月中旬――――――桜の花はいよいよ散り始め、若葉が芽生え始める季節である。朝晩はまだ冷えるけど、日中はすっかり暖かくなった季節でもある。そして俺は高校生になっておよそ1週間が経つ。
俺は朝食を食べ終えると、急いで歯を磨き、これから3年間通う高校のブレザーの制服に身を包み、家を出る。そして――――――
「おはよ、樹くん」
「あ、おはよ。樹」
俺がこれから乗るエレベーターには俺と同様に、自らが通う高校の制服に身を包み、これから登校する幼なじみ2人が乗っていた。
桃香はおさげが可愛い家庭科部員で成績優秀。地元でも最難関の高校に進学した。そして、まなかは背の高いショートカットで、中学時代は女子陸上部のエース。全国大会にも出場して、スポーツ推薦で陸上部の強い高校に進学した。
そんな2人と俺は同じマンションに住む――――――いわゆる幼なじみというヤツだ。物心つく前から付き合いがあるので、何でも話せる。ちなみに俺が4階で、桃香とまなかが7階に家がある。しかも桃香とまなかは部屋が隣同士というおまけ付き。
「そう言えばまなか、朝練ないの?」
「あーそれ、自主参加で勝手に集まってるだけだから。それに私、樹と一緒に通学したいしね」
「あのなぁ・・・」
俺はため息混じりにまなかにこう言っているうちに、エレベーターは1階に到着。しかし、桃香がいかにも機嫌が悪そうな目をしている。俺、桃香に嫌われていないかな・・・
「そう言えばまなか、お前何時頃帰ってこれる?」
「8時完全下校だから・・・そっから1時間かかって、9時くらいに帰れる」
「そうなんだ・・・遅いな」
「なんたって私は女子陸上部のスーパールーキーですから」
自宅マンションを出た俺たち3人はすぐそばのバス停に到着した。そしてバスに乗る。俺たち3人がいつも使っているバスは大通りを走る主要路線のため、通勤通学時間は結構混む。今日もそうだ。バスに15分ほど乗ると、まずはまなかが地下鉄に乗り換えるため下車。
「・・・まなか、行っちまったな」
「そうだね・・・」
「そう言えば桃香、機嫌悪くないか?」
「ううん、全然。いつも通りだよ」
「それはよかった」
「ところで桃香、俺のこと嫌いじゃないよな?」
「ううん全然。私、樹くんと15年間ずっと付き合ってるのに、今更嫌いになる訳ないじゃん」
「ありがとう。俺、桃香に嫌われてないみたいでひと安心したわ」
「どういたしまして」
俺と桃香はバスの隣同士の席でこう話す。・・・しかしこうやって高校の制服に身を包む桃香も可愛いな。フラれちまったけど。そして、
「私、ここが学校の最寄りだからもうお別れだね」
「そうだな・・・」
「じゃぁね、樹くん」
「ああ」
続いて桃香も学校の最寄りであるバス停に到着すると下車し、最後は俺1人になる。そして俺が学校の最寄りのバス停に停まると俺も下車し、学校に向かう・・・という訳だ。俺は、
「幼なじみの女の子2人と一緒にバスに乗って通学する、そんな学校生活がこれから3年間続く・・・我ながらいい気味だ」
とバスから降り、学校に向かう途中でそう考えていたのであった。
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