第21話被告カポネ 解説

「それでは、オープニング実験に続いて、最後のお楽しみ、スタジオ解説です。解説担当は酔いつぶれてしまったガリレオさんに代わりましてあたしことカポネとテイル先生です。よろしくおねがいします」


「解説のテイルです。よろしくおねがいします」


「それでな、テイル先生。ひとつ言っておきたいことがあるんだけどな」


「なんですか、カポネさん」


「オープニング実験でやったワインの蒸留なんだけどな、あれが公開されたらテイル先生は酒税法違反で逮捕されるから、そこんところ気をつけてな」


「えええ、なんでですか。酒税法違反になるのはあれでしょう。本編で紹介されたみたいに、ぶどうジュースにイースト菌パラパラしちゃった場合でしょう。そうするとジュースの糖分が発酵でアルコールになってしまうから、お上の許可なく勝手に酒を作ったことで酒税法違反ってことでしょう」


「イースト菌パラパラでも逮捕されるんやけどな、市販のワインを個人が蒸留してアルコール度数きつくしても酒税法違反になるんだな、これが。というわけで、気を付けた方がいいよ、テイル先生」


「いまさらどう気を付けたらいいんですか、カポネさん」


「しかし、酒税法ってのはややこしいな。『アルコールこれだけなら税金がいくら』っちゅうならまだわかりやすいんやけど、『この酒の場合はこうで、あの酒の場合はああでうんぬんかんぬん』言われてもややこしくてわけがわからんわ。国が税金がっぽりピンハネするためにわざとややこしくしてるんやな、きっと」


「俺もそう思いますよ、カポネさん。まったく、これだからお役所ってのは……」


「ちなみに、個人でのイースト菌パラパラが自家醸造として認められている国もある」


「そうなんですか、カポネさん」


「ヨーロッパの国は大体そうやな。と言うより、個人での酒造りが違法な日本が世界的に見て珍しいくらいなんやな。なにせ、『日本人は安全と水はただと思ってる』なんて言葉があるくらい日本では飲料水には不自由せん。せやけど、世界には飲む水ですら事欠く国がたくさんあるからな。そんな国では、飲料水よりもビールやワインのほうが、経済的にも衛生的にもお手軽ってことになるんだな」


「ドイツの一部の州だと、未成年の飲酒もプライベートな場所だと保護者が監視していればオッケーだったりしますからねえ。さすがにおおやけの場所だと禁止されているみたいですけど」


「よく知っとるな、テイル先生。そんな国でも、勝手にビールやワインを蒸留してアルコール度数きつくしたら密造ってことで逮捕される場合があるんだな。ビールやワインみたいな蒸留していない醸造酒は生活必需品で、そこからつくったアルコール度数の高い蒸留酒は娯楽のための嗜好品って考えらしいな。嗜好品だと税率が高くなるシステムの国はけっこうあるからな。日本でも最近は消費税が八パーセントやら十パーセントやらでそうなったんだなあ」


「予測しないケガの消毒のために、急ぎアルコール度数が高い酒が必要になって、たまたまそこにあったワインを蒸留して高アルコール度数の酒を造ったことで緊急避難が適用されませんかね、カポネさん」


「どう考えても、わざわざ蒸留するよりも薬局に消毒薬買いにいった方が早いんとちゃうかな、テイル先生」


「そ、それじゃあ、突然の停電のために灯りとして火をつけることが必要になって、引火させられる高アルコール度数の酒が必要になって……」


「しつこいな、テイル先生も。個人が家でこっそりやるくらいならばれんやろうから、それで我慢しとき」


「スーパーマーケットで、ブドウやリンゴの果汁百パーセントのジュースと、砂糖とドライイーストを大量に買い込んでも警察にマークされたりしませんかねえ、カポネさん」


「そんな買い物は、酒造り以外にはしないやろうけども、まあ、警察もそこまで暇やないやろうしな。まあ、テイル先生がどうしてもって言うのなら、実際に酒を密造して、警察に『こんなの作っちゃいました』って持っていけば、話くらいは聞いてくれるんちゃうかな。なんなら、留置場に一晩お泊りさせてくれるかもしれへん」


「わざわざ、そこまではしませんよ」


「せやな。あんまり繰り返すとそれこそ公務執行妨害で逮捕されてしまうからな。ばかな動画配信者でもない限り、そんなことするやつはおらんと思うけどな」


「それでは、今回はこのあたりで。解説は俺ことテイルと」


「禁酒法時代のマフィアのドンことカポネでした。ご覧のみなさまありがとうございました」


注意! 本作品はフィクションです。犯罪行為を助長する目的ではありません。未成年の飲酒及び成人であろうとも酒の密造は法律で固く禁止されています。けしてまねしないでください。日本国内ならなおさらです。飲酒は二十歳になってから。周りに迷惑をかけないように

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