第13話被告ウタマロ エピローグ

「感動したっす、テイル先生。子供に遊ばせていたことが御神体の安全につながっていたなんて。そうですよねえ、遊具は子供が遊ぶためのものなんですからねえ。その遊びにさびを防ぐ効果があったなんて。やっぱりテイル先生は最高です」


 今回の裁判のてん末を何かで知ったポチが、ウタマロを迎えにいった牢屋で俺とガリレオを歓迎してくる。あの鉄の棒のチ○コ様が長年さびなかった理由は、子供達や全裸の大人にベタベタ抱きつかれた結果として人の皮脂がコーティングされたからだ。あのあとチ○コ様に押しつぶされて腰を抜かしていたサイエをよそに俺はそんな説明をしたのだが、それがポチにも伝わっていたらしい。


「それではテイル先生にガリレオさん、こちらです」


 ポチに案内された先では、ウタマロが俺たちにより自由にされることを牢屋で待っている。


「お、テイルのあんちゃんやんけ。いや、ちゃうな。テイル先生、ほんまおおきに。うちが無罪になるだけやなくて、チ○コ様も今まで通り触り放題になったんやから。もう、うちは一生テイル先生には頭が上がらんわ。テイル先生はうちにとっての神様みたいなお方や。おっと、せやかや、テイル先生のチ○コ様にも礼をせえへんとな。ありがたやありがたや」


 そう言って、ウタマロが俺のチ○コ様に手を合わせている。それを見たガリレオがあわてて止めに入ってくる。


「あの、ウタマロさん、おふざけはそのくらいにしてですね」


「そやなあ。服越しのお礼なんてチ○コ様にとっての冒涜もはなはだしいもんな。やっぱり、チ○コ様への拝礼は生でせえへんとな。テイル先生、ちょっと服脱いでくれへんか」


「な、何を言ってるんですか、ウタマロさん。そんな、生だなんて……」


「なんや、ガリレオの姉ちゃん。テイル先生のチ○コ様を独り占めする気か? ごうつくばりやなあ。チ○コ様はみんなでありがたがるもんやで。神さまは信じるものみんなに救いを与えて下さるんや」


「わ、わたしはテイル先生の頭脳に敬意を払っているんです。ウタマロさんのようなものに敬意を払っているのではありません」


「そうやったんか、ガリレオの姉ちゃんはチ○コ様の亀頭派かいな。それならそうとはよ言ってくれたらええのに。うちはどっちかと言うと、チ○コ様の球派やからな。これで丸く収まるな」


 まるで大阪のおばちゃんに前回の下ネタでいじられるテレビ局の新人アナウンサーのようだ。頭のいい女の子がインテリジェンスあふれる下ネタでからかわれる姿というのは、これはこれでいいものだ。


「まあ、おぼこの小娘からかうのはこれくらいにしてやな。テイル先生にはいくら感謝してもしきれへんわ」


「いえいえ、すべてチ○コ様の思し召しですよ。ウタマロさんが代々チ○コ様を神様として敬ってきたからこそ、チ○コ様がさびずに立ち続けた結果になったんですから」


「それなんやなあ。うちがチ○コ様をありがたがって抱きついとったのが、チ○コ様へのなによりの奉仕になっとったなんて。昔の人の知恵ちゅうのはたいしたものなんやな」


 昔の人が理屈として皮脂のさび防止効果を知っていたかはわからないが、ひょっとしたら、大事に撫で回していた鉄製品はほったらかしていたものよりさびにくいということを経験的に知っていたのかもしれない。近代科学の歴史はたかだか数百年だ。それに比べて人類の歴史のなんと遠大なことだろう。


「で、お祝いのことなんやがな、テイル先生。うちの地元ではお祝いと言えば、チ○コ様の周りでの村人全員での裸踊りと決まっとるんや。どや、テイル先生も参加せえへんか、歓迎するで」


「テイル先生はそんなことしません! しませんよね、テイル先生」


 裸踊りに興味がなくもないが、俺のチ○コ様を巨根信仰が根深いウタマロの地元で披露しようものなら、俺のチ○コ様が御神体にされかねない。


「申し訳ないですけどね、ウタマロさん。これから例の映写機も制作に協力してくれた人にあいさつしなくちゃならないからね。あれだけのものを作るにはいろんなコネを総動員したものだから」


「たしかにあのタイムムービーマシンはえらいしろもんやったなあ。あれだけのものを作れるコネクションを持っとるテイル先生はほんまたいしたお人やでえ。ほなら、また。縁があればまた会うこともあるやろうさかい」


 そう言って、ウタマロは牢屋を出ていった。ポチが丁重に案内している。さて……


「テイル先生。あいさつだったらわたしもごいっしょさせていただきます。あれだけの研究設備を用意したんだもの。さぞやすごい権力をお持ちになった方なんでしょうねえ」


「いや、権力は持ってないかな」


「じゃあ、財力ですか?」


「財力もたいしたものじゃないよ」


「だったら、どんな人なんですか、テイル先生」


「こんな人だよ」


 そう言って、俺は自分で自分を指差す。


「えええ、テイル先生があの研究室を用意したんですか?」


「『用意した』というのは正確じゃないな。正しくは『元からあった』だ。以前からおとぎ話の科学的証明のためにこつこつ研究設備をととのえていたが、最近ようやく十分な設備になった。そこに、俺よりも良くその研究設備を活用する人材が加わったんだから、巡り合わせというものはあるものだねえ、ガリレオ君」


「じゃ、じゃあ協力した人へのあいさつって……」


「あのタイムムービーマシンはすばらしいものだった。どうもありがとう、ガリレオ君」


 そう言って、俺はガリレオに頭を下げたのだった。

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