第11話被告ウタマロ 裁判
「やあ、テイル君。前回は皆既日食なんてすばらしい科学的発見をなしとげたね。実にすばらしい。人類の科学的英知がまた一歩前進したよ。ともに祝おうじゃないか」
前回のガリレオの裁判で俺に無様に負けたサイエだが、どうも偉大な科学の発見をともになしとげたことと言うことにやっこさんの頭の中で自己解決したらしい。その証拠に、サイエが今回も自身たっぷりの顔をしている。自分が負けるなんてみじんも思っていない顔だ。その顔が今回も無様にくしゃくしゃになるのだが……
「だがね、テイル君。たしかにテイル君はともにすばらしい発見をした同士だが、裁判では手加減しないよ。せいぜい敗北を覚悟しておいてくれたまえ。なにせ、あんな野蛮な原始宗教を信じている未開の蛮族には思想強制場こそふさわしいのだからね」
「サイエ検事、巨根信仰は野蛮ですか」
「おっと、これは失言だった。信仰の自由は基本的人権として保証されているのだった。今回の裁判の争点は、あの鉄の棒が倒壊するようなことがあっては危険だから撤去するのがふさわしいかどうかだったね。では、ともに健闘しようではないか」
口ではそうは言っているが、サイエが巨根信仰をおぞましく思っていることは明らかだ。どうせ内心では、『キリスト教は綺麗な宗教で、日本の土着した宗教は汚い宗教』と思っているに違いない。『神は唯一神のゴッドのみ。多神教なんて野蛮』なんて信仰を押し付けてきそうだ。
「それでは、ただいまより裁判を開始する」
前回と同じロリな裁判長が開廷を宣言する。このロリ裁判長が、あの巨根信仰のシンボルにどう反応するかも楽しみの一つだ。
「裁判長、さびない鉄などありえません。被疑者の地方では、『何千年もさびないでたち続けている』と言い伝えられているそうですが、そんなものはデタラメに決まっています。さび防止剤が塗られていたに違いないのです。しかし、これまで倒れなかったからと言って、これからも倒壊しないとは限りません。検察側は一刻も早い撤去を主張します」
「国があの御神体への立ち入り禁止を命じたそうですね。そのことについて検察側はどうお考えなのでしょうか」
俺がそうサイエに質問した。すると、サイエは『何バカなことを言っているんだ』と言った表情でこう答えた。
「弁護側の質問の意味がわかりかねますね。いつ倒れるかもわからないのですよ。そんな危険なものへの立ち入りを禁止するのは当然でしょう」
「弁護側は、国の立ち入り禁止命令こそ不当であると主張します、裁判長」
俺の発言に、サイエがうろたえる。
「正気かね、テイル君。てっきり、弁護人である君は、被告が反省の意思が十分であり深く反省しているため、情状酌量の上で厳重注意プラス保護観察という戦略で来ると思っていたんだがね」
「と、サイエ検察はおっしゃっていますが……ウタマロさん、あなたは反省していますか」
「反省? そんなもんするかいな。うちはいますぐにでもチ○コ様に抱きつきたいっちゅうのに」
ウタマロがそう言うと、サイエは赤面して注意した。
「な、なんということを……被告はおんなのこであろう。少しはつつしみや恥じらいと言うものをだね。裁判長。被告のただいまの発言は法廷を侮辱していると検察は主張します」
「検察の発言を認めます。被告は法廷に敬意を払い、品位を持った発言をするように」
裁判長がその幼い顔を落ち着かせながらウタマロに命令した。内心ではきっとドギマギしているに違いない。
「なんや、子供のくせに偉そうなやっちゃなあ、子供っちゅうのは、チ○コやウ○コが大好きなものと相場が決まっとるのに。どうや、お嬢ちゃん。チ○コ好きなんやろ。恥ずかしがらんと言ってみい」
「被告人! それ以上法廷を侮辱するような発言を続けるならば、退廷を命じますよ」
幼女が羞恥心で顔を真っ赤にしながらも、権威を保とうと丁寧な言葉使いをするところは見ていて楽しい。
「それで、裁判長。弁護側は国の周辺人民への御神体からの接近禁止命令こそ、御神体への敬意を欠いた行動、ひいては御神体の倒壊を招くものと主張します」
「おかしなことを言うじゃないか、テイル君。あんな古臭い鉄の棒に人がよじ登っていては、いつ事故が起こるか分かったものじゃないと言うのに……接近禁止命令が敬意を欠いている? 僕としては、接近禁止命令は御神体の倒壊を防ぐための敬意あふれる行動と思うがね」
口ではそんなことを言っているサイエだが、サイエがウタマロが持っている信仰心をバカにしているのは見ればわかる。そんなサイエが、今からの実験で自分の主張が間違っていると知った時どんな気分になるだろうか。今からワクワクしてくる。
「裁判長、弁護側は現地での実験を申し立てます」
「検察側も同意します。裁判長、ここは実験で手っ取り早く白黒つけることが最善ではないのでしょうか」
「弁護側、検察側がともにそう主張するのならば、それでいいだろう。それでは……テレポート!」
ひゅいーん
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます