第10話被告ウタマロ 面会
「なんや、お前は。こんなところに女連れで来てからに。おやあ、そのねえちゃんなんや見覚えあるで。たしか……ガリレオやったな。太陽が姿を隠すなんてデマを吹聴したとかでここに投獄されとった。無罪になったそうやないか、おめでとさん。で、何の用や。里帰りか。それとも、自分が苦しみ抜いた牢屋で今では他の人間が苦しんどるから面白く見物でもしようってのか」
随分と被害妄想が激しい被疑者だ。まあ、昔から信じてきた宗教が国に異端とされ牢屋に閉じ込められたとなれば、そうなるのも当然か。
「で、ガリレオ姉ちゃん。なんでうちがこないなところにおるんかは知っとるんやろ。せやったら、うちがありがたがっとる神さまがどんなもんかも知っとるんやろ? どや、うちの神さま。感想聞かせてくれへんか」
ウタマロがそう言うと、ガリレオはふたたび顔を真っ赤にする。それを見たウタマロがゲラゲラ笑いだした。
「おうおう、
外見は可愛い少女の女だが、その口から出る言葉は下品な中年オヤジそのものだ。あんなものを信仰しているんだから当然か。
「その、ウタマロさん。俺はあなたの弁護を引き受けさせていただくことになったテイルと申しますが……ウタマロさんが信仰しているあれはなんですか?」
「なんやテイルとか言うにいちゃん。あんた男やろわからへんのか。自分の股間にぶら下がっとるものやんけ。それとも、にいちゃんのとは形が違うからわからへんか。これは失礼。大の大人にもなっとんのに、そんな皮を被った粗末なもんぶらぶらさせとるとは思わへんかったからな。堪忍してや。うちの神様はチ○コや。それもそんじょそこらにあるようなサイズのものやないで。それはもう天を衝くほどに巨大なチ○コ様や」
俺とガリレオがポチに見せられた写真には、根元に鉄球が二つ付いている鉄の棒だった。隣に大人の男が満面の笑みで立っていたが、それより頭一つ高いくらいのものだった。その先端は、立派なマツタケのようにしっかりとしていた。こんなものを見せられては、ガリレオが顔を赤らめるのも無理ないだろう。
「その、ウタマロさん。確認なんですが……ウタマロさんの地域の人間はその神様をチ○コと呼んでいるのでしょうか。『いやいや、これはチ○コじゃありませんよ。昔の大砲ですよ。何下品な想像してるんですか、いやらしい』みたいなことを言ったりしないんですか」
「アホなこと言うなや、にいちゃん。チ○コはチ○コや。なんでそんな建前使わへんといかんのや。ほら、ガリレオ姉ちゃん。何恥ずかしがっとんのや。姉ちゃんもチ○コがないと、この世に産まれてけえへんかったんやで。そう思うと、チ○コは実にありがたい神様やないか。姉ちゃんもうちといっしょにチ○コ大好き女の子になろうや」
「へ、変なこと言わないでください」
ガリレオは顔を真っ赤にしてウタマロに抗議した。が、ウタマロはちっとも気にする様子がない。むしろ面白がっているようだ。この手の人間はシモネタで人が嫌がる顔を見るのが何より好きだろうし。
「それで、ウタマロさん。法律には宗教的儀式なら特例が認められる場合があるんです。それで、裁判のためにウタマロさんの地域ではどんなチ○コ信仰が行われているかおうかがいしたいんですが……」
「ほらみい、ガリレオ姉ちゃん。このにいちゃんはうちのチ○コの興味深々みたいやで。やっぱり男の子やな。チ○コが大好きなんやな。ええこっちゃ。でも、しんこうなんてそんなたいしたもんやあらへんで。子供の頃から、あのチ○コ様が公園の遊具みたいなもんやったんや。登り棒みたいに抱きついて登ったり降りたりして遊んだり、頂上に登山して記念に顔こすり付けとったりしとったんや」
ウタマロのセキララな告白に、ガリレオはすっかり顔を伏せている。
「ちなみに、それは服を着てですか、ウタマロさん」
「な、何を言ってるんですか。テイル先生。あんなものに裸で抱きつくなんて。そんなハレンチなことあるわけが……」
ガリレオが必死になって俺に抗議してきたが、ウタマロがあっけらかんとしてこう答えた。
「なんや、わかっとるやん。チ○コ様に服着て抱きつくなんて、しょせん子供のお遊びや。一糸まとわぬすっぽんぽんで抱きつかんとうちのふるさとでは大人と認められへんのや。裸でチ○コ様に抱きついてこそ、恋愛成就、夫婦円満、子孫繁栄、無病息災、商売繁盛、大漁大漁のご利益を受けられるってものや。ああ、言っとくけど、これは神聖な儀式やさかい、決まった日の夜にしか行われへんからな。真っ昼間に全裸でチ○コ様に抱きついたら、うちの地方でも頭がおかしい人扱いされるから気いつけや」
「ウタマロさん、裁判、俺に任せてくれませんか」
「ええやろ、チ○コ様に裸で抱きつくありがたさをわかっとるにいちゃんなら信用できる。よろしゅう頼むで」
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