第227話 結衣の願い

 空が崩れ落ちてきそうなほどの揺れ。

 コンクリートで固められた地面は、大きく割れ目が入っている。


「……お主なら、それがやれると?」

「はい。私だけじゃなく、ガーネットや魔央の力も必要ですがね」


 ルリが訝しむと、結衣は苦笑いした。

 そして、結衣はみんなの方に向き直る。


「みんな、自分の願いが大事かもしれない。その願いを叶える力を手離したくないかもしれない。だけど、お願い! 力を貸して!」


 世界の終わりを見てもなお、そんな想いの子がいるかもしれない。

 それならそれで、結衣はみんなの意見を尊重しようと思った。

 だってそれは、結衣も同じだから。


「うん、私は……いいよ……!」

「まあ、命より大切なものなんてないしね」

「そうですよ。私も力を貸します」

「夏音も協力しますにゃ」

「結衣ちゃんの頼みとあっちゃ、断れないな」

「ええ、うちの力で良ければ存分に使ってくれやす」

「コレはミーたちの命がかかってマスシネ」


 みんなは口々に、結衣に同意する。

 結衣はみんなの意見を聞いて、嬉しさで泣きそうになった。

 いい仲間を持ったな……そう思った。


「ありがとう……みんな」

「結衣様! もう時間がないです!」


 結衣がみんなに感謝を伝えると、ガーネットが切羽詰まった声をあげる。

 もう、世界の終わりは近い。

 だから、自分が止めなければならない――!

 ガーネットが、そしてルリが、『結衣ならできる』と信じてくれているのだから。


「じゃあ、みんな! 私に力を――!」


 結衣がそう言い、目を閉じる。

 すると、みんなは変身を解き、結衣に向かって一斉に力を与える。


 それは光の粒子となっていて、とても煌びやかな光景だった。

 みんなの綺麗な気持ちが、そのまま表に出ているように見える。


 ルリは覚悟を決めた様子で、目を閉じた。

 結衣はガーネットを天に掲げて、みんなの光を受け止める。

 吸収し、結衣とガーネットの力にしていく。


「……私の願いは、信じ合えるような仲間が欲しい。本音をさらけ出せる友だちが欲しい。この孤独を、分け合えるような人が欲しい。……だった」


 結衣は、本当は、こんなにも強い人間ではない。

 こんなにも強くなれたのは、ガーネットのおかげかもしれない。

 ガーネットは、結衣が願った通りの自分にしてくれたのだから。


「だから、ガーネットには感謝してる。私に、こんなにも素敵なものを与えてくれたことに」


 そう言って、結衣は愛おしそうな目で、ガーネットを見つめる。

 ガーネットの表情はわからなかったが、握ったところがじんわりと暖かくなった。

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