第228話 全ての力を出し切って

「これが! 私たちの全て! ――究極・アルティメット・セブンカラーズ!」


 ガーネットを全力で振り、そこから七色のビームが繰り出される。

 それは、みんなの力の全て。

 今までの歴史を、過去を超越するほどの――暴力的なまでの鋭い光。


 それがルリに直撃し、地中奥深くまで到達する。

 地球の心臓部――マントルまで光が届き、結衣たちの願いが発動する。


 ――“世界を救いたい”。

 その想いが、願いが形となって現れたのは、そんなに遅くなかった。

 世界の終焉が、世界の再スタートとなった。


 ひび割れた地面は元に戻り、崩れ落ちた建物も修復される。

 何事もなかったかのように、世界は今、新しく生まれ変わったのだ。


「……やりましたね、結衣様」

「うん……これで、未来に進めるんだね……」


 結衣とガーネットは、やり切った達成感で胸がいっぱいだった。

 そして、結衣と魔央は再び分離する。


 世界の終焉を防いだのだ。

 もうこの姿になっていなくてもいいだろう。

 だが――


「……わりぃ、結衣。俺……もう限界みたいだ」

「ま、魔央!? どうして……!」


 魔央の身体は、橙色の淡い光を纏い、今にも消えそうなほど儚い。

 半透明になり、手足が空気に溶け込んでいる。


「……わしの力を封じたじゃろう。その影響かもな。そやつは、本来ならとっくに死んでおるのじゃから」

「そんな……っ!」


 あの時、あの究極魔法を使った時。

 ルリの“魔女としての機能”を全て消し去っていた。

 それを、今までのツケとしようとしたのだ。

 なのに、それが却って裏目に出たらしい。


「いや、嫌だよ……! 魔央……っ!」


 魔央は元々、お母さんのお腹の中で死んでいる。

 それを、ルリの力で一時的に生きられていたにすぎない。

 だが、だからと言って、これはあんまりだろう。


「どうにかならないの!? こんなの嫌だよ……!」

「――結衣様。私にお任せを」


 そう言うと、ガーネットは今にも消えそうな魔央に近づき、そっと抱きしめる。

 すると、魔央の身体は淡い光を発することをやめ、消えかけていた手足も元に戻った。

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