第221話 強大な力に飲み込まれる

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 結衣が突然咆哮し出す。

 その大声に、全員が耳を手で抑えながら声があがった方を見る。

 結衣は宙に浮いているが、苦しそうに悶えていた。


「結衣さん……」

「このままだと結衣ちゃんが危険じゃないですか!?」


 明葉が心配そうにそれを眺め、緋依はいてもたってもいられない様子で叫ぶ。

 みんな少なからず結衣を助けたいと思っている。

 だがルリだけは、傷だらけの顔で不敵に笑う。


「そうじゃな。何せ二人分の願い――力が、一つの身体に入っているのじゃからな。それにあの二人は願いが強いしのう」

「悠長にそんなこと言ってる場合じゃないだろ! 結衣ちゃんが……結衣ちゃんが……っ!」


 ルリの説明を聞いて、美波が大きな声で叫ぶ。

 結衣のこの状態は、誰の目から見ても危険に違いない。


「結衣おねーさんっ! 今行くですにゃ!」

「あ……! だめ、だよ……っ! 今……行ったら……」


 夏音がこちらに向かってきている動きを、結衣は飢えた肉食獣のような目で注視する。

 ギロリと睨むように見て、魔法陣を展開した。


 さすがにやばいと感じたせーちゃんが、結衣に向かって魔法の効かない武器を投げつける。

 その隙にせーちゃんは夏音を迎えに行く。


「夏音……! 何やってるの! 死にたいの!?」

「せーちゃんさん……でもっ! あのままじゃ結衣おねーさんが……!」

「――わかってるわ。……ええ、わかってるから」


 夏音の叫びを遮るように言ったせーちゃんの声は、妙に重い響きだった。

 それを感じた夏音は、しぶしぶ結衣のそばを離れる。


「結衣おねーさん……絶対、助けますにゃ……」


 せーちゃんの武器をひらりと躱す結衣を見て、夏音はそう決意した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る