第220話 その姿こそ相応しい

「……やっと……見れたのう……」


 ルリが小さく呟き、一筋の涙を流す。

 その姿は、ルリが今までずっと待ち望んだもの。

 完全なる魔法少女の姿。


「魔法少女は願いの力で強くなる――さぁ! わしを倒すがいい! そしてハッピーエンドを勝ち取るのじゃ! ――結衣っ!!」


 ルリが吼え、大きすぎるマントを翻す。

 そんな大きすぎるマントでも、結衣の翼には勝てない。

 黒色や紫色、灰色や茶色など……様々な色が集まっている結衣の翼。

 それはまるで生きているように揺れる。


「――空間転移シフト!」


 そう紡ぐと、結衣の身体が消え去った。

 だが、次の瞬間には結衣の身体がルリの背後から現れる。


「全力全開!! ――大砲バング!」


 結衣は魔法陣を展開し、ルリの背後から全力砲を繰り出す。

 突然のことに防御も回避もできなかったルリは、もろに攻撃を受けた。

 ルリは石のように転がり、身体のあちこちに傷がついた。


「がはっ……! ゲホゲホ……ッ!」


 血まで吐きそうな咳をし、ルリは身体を起こす。

 闇を纏っているような漆黒の髪は、結衣の闇を具現化しているのではと思わせるほどに黒い。

 そう、これが結衣の本当の姿。


「この姿こそが……お主に相応しい。あんな純白な髪……お主には似合わんな」

「あなた……何か知っているの?」


 ルリの呟きに、せーちゃんが耳ざとく反応する。

 だが、せーちゃんの問いには答えず、ルリはフラフラと立ち上がった。


「さぁ、来るがいい。わしには無理でも……お主ならきっと出来るはずじゃから」


 だから、そう……自分はこのままここで果てるべきなのだ。

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