第222話 魔央の提案

『……い。おい、結衣』

『ま、魔央……? 驚いた……この状態でも喋れたんだね』

『まあな。それより、大丈夫か?』


 心の中で会話をする結衣と魔央。

 結衣の身体は限界に達しそうではあったが、魔央と会話をすることは困難ではなかった。

 むしろ心が落ち着く。


『うん……魔央と話している分には大丈夫みたい……』

『そっか。ならよかった。――結衣』


 本当に安心した様子の魔央だったが、結衣の名前を呼んだ時は声が変わった。

 その変化に、結衣は思わず息を飲んだ。


『俺に、考えがあるんだ』


 ☆ ☆ ☆


 結衣が宙でうずくまっている様を見て、みんなに焦りが生まれる。

 このまま結衣を放っておいてもいいのだろうか、と。

 だが、無闇に近づくことも出来ず、八方塞がりの状況だ。


「こうなったら、私たちでルリさんを倒しましょう!」

「でも、それは結衣さんを元に戻すことにはならないんやないどすか?」


 緋依がみんなに向かって言うも、明葉はそれに賛成しなかった。

 それにルリを倒せなかったらなんの意味もない。

 ルリを倒そうと下手に動けば、結衣の標的にもなりかねない。


「……くっ! どうすればいいのよ!」

「怒っていても意味がないデスヨ」

「たしかにそうかもしれないけど……怒らなきゃやってられないよ」


 せーちゃんもカスミも美波も、みんなやるせなさを感じている。

 そんな時、夏音は一人だけ能力を発動した。


「黒い影さんたち……お願いしますにゃ」


 黒い影たちは夏音の言葉に頷き、結衣に向かって突撃する。

 うようよ蠢き、結衣の周囲を囲む。

 だが、結衣はなおも動く気配はなく、ずっとうずくまっている。

 ――と、思いきや。


「――瞬間移動テレポート!」


 不意に顔を上げると、一瞬でその場から離れる。

 みんなは突然のことに目を剥いた。

 結衣はルリに近づくと、ガーネットに向かって手を伸ばす。


「……ガーネット、今行くからね……」


 そう小さく呟くと、結衣は姿を消した。

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