第165話 少女の言葉の真意とは……

「え……ちょっと、ねぇ! どういうこと!?」

「どうもこうもねぇよ。あの女は人殺し、それだけだ」

「意味わかんないよ!」


 結衣が少々ヒステリックにわめくも、少女はそれに取り合わない。

 そして相も変わらず、結衣のお母さんを睨むように見ている。

 お母さんは何も言えないようで、ただただ結衣と少女を交互に見ている。


「俺はあの時産まれてくるはずだった。なのに――」


 何かに耐えられなくなったのか、少女が言葉を発するたびに涙がこぼれ落ちる。

 少女は涙を流しながらも、必死で言葉を紡ぐ。


「俺は、俺は――ッ!!」


 そうやって力強く叫ぶと、少女は魔王姿に変身した。

 いつもより禍々しいオーラを放ち、いつもより数倍長い槍を手にし。

 そして、勢いよく――お母さん目掛けて攻撃を繰り出す。


「――幻想展開、黒・ブラック・光刃ライトスペアー!」


 今にも殺さんと、お母さんへ迫る赤毛の少女。

 それを止めるべく、結衣がガーネットを掴む。


「――防壁バリア!」


 そう紡ぐと、魔法でできたドーム状の結界が張られる。

 何かと破れやすい防壁だが、今回は違う。

 何重にも層を重ね、より強固な防壁が出来上がる。

 突き破ろうとする槍を、なんとか食い止めることができた。


「……ふん、そっちに従くか。まあ、そりゃそーだよなぁ。自分を生かしてくれたんだもんなぁ!」

「……な、何言って――」

「だがな、一歩間違えてたら――お前は生きてなかったってこと、忘れんなよッ!」


 より一層力を入れて、防壁に槍を突き立てたあと。

 くるりと向きを変え、ものすごいスピードで家を出ていく。


 残された結衣とお母さんは、少女が泣きそうに歪んだ顔で去っていった方向を、ただ見つめるしかできなかった……

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