第163話 正反対な二人

「……ったく、なんなんだよお前……」

「だ、だって……! 急な出来事にびっくりしちゃって……」


 結衣と少女は階段を降りて一階に着く。

 そして軽く口論をしながら朝ごはんの準備をする。

 と言っても、パンをトースターに入れ、その間に市販のヨーグルトと牛乳を冷蔵庫から出すだけという簡単なものだが。


 それにしても、手馴れたものである。

 休日は朝早く起きて、好きなアニメをリアタイで観るというルーティーンがあるおかげだろう。


「今日の『おばけレストラン』、どんな話があるんだろ……!」


 そうワクワクした声色でテレビをつける。

 『おばけレストラン』とは、子供向けのホラーアニメだ。

 オカルト好きの結衣にとって、見逃せないアニメになっている。


「ほわああ……この待ち遠しい時間も大切だよね……!」


 結衣は誰に言うでもなく零した。

 すると、パンが焼き上がったようで、香ばしい匂いが漂う。


「あ、焼き上がったね。じゃあ食べようか」


 パンをトースターから抜き、お皿に置いて持ってくる。

 いい焼き具合で、こんがりとした優しい茶色だ。


「ふはー……パンはいいねぇ……朝はパンに限るよ……」

「そうか? 俺はどっちかって言うとご飯派だけどな」


 結衣がパンを口に咥え、幸せそうに仏のような笑みを浮かべる。

 すると、それに反抗するように、しぶしぶパンを手に取って少女は言う。

 どこか結衣の考えや趣味嗜好を否定するように言った少女に、結衣はムッとする。


「じ、じゃあ、犬か猫だったらどっちが好き?」

「は? いきなりなんだよ。……まあ、そーだな……猫」


 少し考えるような仕草をしたあと、少女はズバッと断言した。

 それを聞いた結衣は、絶望しきった顔になる。


 どう考えても犬の方が可愛いのに……

 だが、結衣は諦めず、何か一つぐらい共通点がないかを確かめる。


「な、なら! インドアかアウトドアだったら!?」

「うおっ!? 急に大きな声出すなよ」


 結衣がガタッと椅子を蹴って机を叩くと、少女はビクッと肩を震わせた。

 だが、結衣は少女の声に取り合わず、少女の答えを待っている。

 その視線を感じとった少女は、「そうだな……」と顎に手を当てて。


「インドアもいいが……どっちかって言うとアウトドアだな」

「なんで!?」

「なんでって言われてもなぁ!?」

「じゃ……じゃあ――!」


 そんな二人のやり取りは、『おばけレストラン』が終わるまで続いた。

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