第137話 ガーネットの怯え

「それで、吸血鬼の力が……?」

「そうデス。あの声がなんなのか分からないデスケド……」


 カスミは自分の過去を結衣に打ち明け、少しスッキリした様子だ。

 結衣はカスミの話を聞いて、真菜の過去と少し似ているような気がした。

 そして、ガーネットは――


「ガクブルガクブルガクブ――」

「って、ガーネット!?」


 ものすごい勢いで身体を震わせている。

 それはもう、怯えているというレベルではない。

 この世の終わりだとでも言わんばかりに、身体をバイブ化させている。


「ほんとにどうしたの?」

「え、え、何かあったんデス?」


 白髪と銀髪の少女二人が、魔法のステッキを心配する。


 だが、魔法のステッキには、二人の声は届いていないようだ。

 目に見えない何かに怯えていて、いつものおちゃらけたテンションがどこにもない。


「……が……が……!」

「……?」

「って、誰デス?」


 ガーネットが、涙を流す勢いで叫ぶ。

 だが、“あの方”と言われても、少女二人には分からない。

 そのことに、ガーネットは色々耐えられなくなったのか。


「うわーん!」


 と、泣き叫びながら、風と音を置き去りにどこかへ消えてしまった。

 取り残された二人は、目を点にして立ち尽くしている。


「あんなガーネット、初めて見た……」

「どこに向かって行ったンデスカネ……」


 結衣とカスミはガーネットが心配だったが、とりあえずファミレスに戻ることにした。

 結衣のお母さんとお父さんをいつまでも待たせるわけにはいかないから。


 だが、結衣はその事を、のちのち後悔することとなる。


「……ようやく、あいつと戦えるのか……」


 何かを期待するような。

 だけど、底知れぬ殺意を滲ませて。

 その影は静かに、跳躍した……

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